DiscovEHRは、Regeneron Genetics Center (RGC)Geisinger Health System (GHS)の共同プロジェクトであり、精密医療の基盤構築を目指して、GHSのMyCode® Community Health Initiativeの参加者から合意を得たコホートを対象とするハイスループット・エクソーム・シーケンシングと生涯医療記録(longitudinal electronic health records: EHRs)の総合的解析を進めてきた。12月23日に、その総合的な報告(以下、1.[論文])と、家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia: FH)に焦点をあてた報告(以下、2.[論文])がScience から刊行された。
  1. [論文] 大規模な遺伝変異スクリーニングとEHRを突き合わせることで、遺伝型と表現型の相関を広くかつ深く理解することが可能になり、精密医療の基盤充実に至る
    • Corresponding authors: Frederick E. Dewey (RGC); David J. Carey (GHS)
    • DiscovEHRコホートの背景
      • 50,726の成人(主として欧州系);EHR期間中央値 14年;診療回数中央値 87回;臨床試験件数/人 687件;治療行為/人 7回;エクソームシーケンシングを実施した対象の48%に同一コホート内に一親等またはニ親等の親族あり
    • DiscovEHRスタディーの成果概要
      • 〜420万件の一塩基変異(SNVs)とINDELsを同定し、そのうち〜176,000件が遺伝子の機能喪失(Loss of gene function: LoF)をもたらすと推定された。これらの変異の圧倒的多数が稀な変異(アレル頻度1%以下)であり、半分以上がシングルトンであった。一人あたりの稀な機能喪失変異数の中央値は21であった。
      • シーケンシングされた全遺伝子(既知の薬剤標的または高い浸透性を帯びた遺伝疾患の危険因子を含む)の〜92%に稀なヘテロ接合LoF変異が見られ、また、少なくとも一人について、〜7%の遺伝子に稀なホモ接合LoF変異が見られた。
      • 遺伝変異のデータと臨床所見データを付き合わせることで、サイトカイン受容体共通βサブユニット遺伝子(CSF2RB)のLoFと好塩基球数ならびに好酸球との相関など、これまで知られていなかった変異と臨床所見の相関が見えてきた。 また、EHRから得られる各種脂質レベルと稀な変異の間のエクソーム・ワイド関連解析を実施し、G6PC など新規な遺伝子座との相関を見出した。
      • American College of Medical Genetics and Genomicsがその変異同定と報告を推奨している56遺伝子を含む76遺伝子に注目して、コホートに見られる病原性変異を分析し、コホートの3.5%(49名)が76遺伝子に病原性変異を帯びていることを見出した。そのうち32名のEHRには遺伝子変異に相関する疾患に相当する臨床所見が記録されていた。
  2. [論文] FHの遺伝子診断
    • Corresponding author: Michael F. Murray (GHS)
    • FHについては、コレステロール値のモニタが普及しているにもかかわらず、過少診断が続いている。DiscovEHRスタディーの分析から、遺伝型に基づいたFH診断の必要性が明らかになった。
      • FHの多くが3種類の遺伝子(LDLR; APOB; PCSK9)の病原性変異に由来すると見られる。研究チームは今回、FH遺伝子変異が低密度リポタンパク質コレステロール(LDLコレステロール)のレベルと冠動脈疾患(coronary artery disease: CAD)リスクに与える影響を分析した。
      • 229名のエクソーム・シーケンスにおいて、3遺伝子において病原性変異として知られているあるいは推定されている35変異を同定。FH病原性変異のキャリア(以下、キャリア)をEHRデータだけに基づいて判定すると、FHの疑いまたはFHと診断結果が出たのは、その僅かに24%に止まった。
      • キャリアの58%が実際にスタチンを服用していたがそのおよそ半数のLDLコレステロールレベルが十分下がっていない状態であり、処置が不十分であることが示唆された。