[出典] "Titrating gene expression with series of systematically compromised CRISPR guide RNAs" Jost M, Santos DA [..] Weissman JS. bioRxiv 2019-07-28 > Nat Biotechnol. 2020-01-13.

背景
 細胞機能の解明には、遺伝子発現のオン・オフを可能にするバイナリー制御法だけでなく、遺伝子発現レベルの調節を可能にするアナログ制御技術が必要である。バクテリアと酵母の場合は、一連のプロモータや低発現(hylomorphic)変異体を利用することで、発現レベルと表現型の関係を体系的に解析することが可能になっている。哺乳類の場合は最近になって、マイクロRNA応答エレメント (MREs)のライブラリmiSFITs (miRNA silencing-mediated fine-tuners) [*1]による遺伝子発現のアナログ制御が実現され (Nat Commun 2019)、また、dCas9に転写を調節するエフェクタを融合するCRISPRi/a技術により一連の遺伝子の転写を抑制あるいは活性化することが可能になった。

成果
 UCSFの研究グループは今回、CRISPRiシステムにおいて、標的配列とのミスマッチを導入したsgRNAバリアントを利用することで、dCas9の標的サイトへの結合を調節する手法を開発し、ヒト細胞において遺伝子発現のアナログ制御を可能とする汎用的ツールを実現した。
  • 2,499遺伝子を標的とする4,898種類のsgRNAsのバリアント ~120,000種類(*)からなるプール型sgRNAsライブリーによるK562細胞とJurkat細胞の増殖抑制効果を測定し、標的配列と完全一致するsgRNAとネガティブコントロールsgRNAと比較し、中間的な活性を示すsgRNAバリアント19,596種類を同定した [(*) sgRNAあたり、1ヶ所または2ヶ所のミスマッチを帯びた22-23種類のバリアント]。
  • このデータを基にして、convolutional neural network (CNN)のアルゴリズムにより、sgRNAバリアントの活性予測モデル (以下、CNNモデル)を構築した。同時に、elastic net linear regression modelも構築し、sgRNAバリアントの活性に影響を与える因子について考察を加えた。
  • 必須遺伝子として2,405遺伝子を選択し、K562細胞での実験結果とCNNモデルから、1遺伝子あたり8種類のsgRNAsバリアントを含むコンパクトなsgRNAライブラリを設計し、K562細胞とHeLa細胞で検証した。
  • sgRNAsバリアントによるプール型スクリーンの結果をPerturb-seq[*2]により解析することで、遺伝子発現レベルを表現型へマッピングすることが可能であり、また、細胞運命の遺伝子発現レベル依存性の同定も可能なことを示した。
参考記事
 [2020-01-14追記] Nature Biotechnologyツイートのリツイート追加