1. これまで語られなかった賀建奎にとっての'信頼の輪'
[出典] "The untold story of the ‘circle of trust’ behind the world’s first gene-edited babies" Cohen J. Science 2019-08-01
  • Science誌スタッフライターのJon Cohenの記事のタイトルにある'circle of trust'は、Heの広報を担当していたRyan Ferrellの言葉の"He's circle of trust"に由来し、「胚ゲノム編集の行為自体には関与していなかったが、事が公になる前から、賀建奎の行為を知っていたまたは怪しんでいた科学者 (ノーベル賞受賞者を含む)、経営者、起業家、NASEM報告関係者、IVF専門医ならびに政治家」の'輪'を意味している。'輪'の何人かはHeの計画を厳しく批判したが、他は、歓迎あるいは沈黙した。
  • Heを知る人々の何人かはScienceに対して、「Heの秘密を打ち明けられる人 (confidantes)の輪がどのように形成され、科学コミュニティーと一般社会との間のより大きな輪がどのように壊れたか」を明らかにすべきとした。
  • Heの計画を止めさせようとしたスタンフォード大学の生命倫理学者William Hurlbutは、「Heは彼が信頼していた人々から裏切られた (was "thrown under the bus")」「(関係者は)出口に殺到しているが("ran for the exit")、何を知っていたか、何をしたか/何をしなかったか」を公にした上で、「どうしてよいかはっきりしたことはわからない、誰も来たことのない道なのだから」とすべきである、とコメントした。
  • Cohenは、Henの故郷での生活から始まり、合肥市の中国科学技術大学、米国Rice大学 (Deem研)、Stanford大学 (Stephen Quake研)、深圳市南方科技大学、 深圳市のPeacock planから600万US$の資金を得てDirect Gemomics設立の経緯を辿り、Direct Genomicsからの輪の拡がりを明らかにた。
  • また、2017年6月10日深圳市南方科技大学にて、賀建奎が不妊の問題を抱えていた夫婦を胚ゲノム編集へ誘導する50分間の会合 (Science誌はそのビデオの一部を確認済み)を経て、その17ヶ月後の2018年11月の上海第2回ヒトゲノム編集国際サミットに至るまで、'輪'の内外の関係者とのやろとりを詳らかにした。
2. LuLuとNanaが引き受けさせられたこと
[出典] Did CRISPR help—or harm—the first-ever gene-edited babies? Cohen J. Science 2019-08-01.
  • Heの胚ゲノム編集は、HIV患者の父から子へのHIV感染防止とHIVに対する耐性をもたらすことを目的としたとされている。しかし、父から子へのHIV感染防止は、ゲノム編集を行うまでもなく精子洗浄によって可能である。
  • HIV耐性の遺伝型として北欧集団の中からCCR5遺伝子のホモ型32-bp欠損CCR5Δ32が知られているが、CCR5にはHIV以外のウイルスに耐性をもたらす、CCR5Δ32は短命になる傾向がある、などCCR5およびCCR5Δ32の生物学的意味が定まっていない。
  • Heらは32-bpの欠損ではなく、その一部の15-bpの削除を目指したが、CCR5Δ15がもたらす可能性があるタンパク質の機能は不明である。
  • Heらの胚ゲノム編集結果はヘテロ型CCR5変異であり (CCR5全長アレルが1コピー存在)、また、モザイク (両アレルともCCR5全長)が発生したと推定される。
  • LuLuとNaNaのその後の健康状態は不明なままである。
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