1. 中国が、CRISPR技術を携え、ゲノム編集における世界のリーダとなる
[出典] "With its CRISPR revolution, China becomes a world leader in genome editing" Cohen J, Desai N. Science 2019-08-02.
 米国に追いつき追いこそうとしている中国を、CRISPR関連特許件数、論文数、論文被引用数および作物品種改良論文数の嚇各国比較で裏付け (特許件数は、Nat Biotechnol 2019-06-04 /crisp_bio 2019-06-06と若干の差異あり)
2. [レビュー] RNA調節を系統的に研究するためのCRISPRツール
[出典] REVIEW "CRISPR Tools for Systematic Studies of RNA Regulation" Engreitz J, Abudayyeh O, Gootenberg J, Zhang F. Cold Spring Harb Perspect Biol. 2019-08-01.
 CRISPR-Casシステムとそれを利用した機能ゲノミクス・ツールの基礎、CRISPR-CasツールによるDNA調節エレメントとlncRNAsの機能解析、RNAを標的とするCRISPRツールによるRNA生物学の状況をレビュー

3. [レビュー] 拡張するクラス2 CRISPR ツールボックス:多様性、適応性および弱点
[出典] REVIEW "The Expanding Class 2 CRISPR Toolbox: Diversity, Applicability, and Targeting Drawback" Hajizadeh Dastjerdi A, Newman A. & Burgio G. BioDrugs 2019-08-05.
 クラス2  (タイプII/V/VI) CRISPRエフェクタの構造と機能の多様性、核酸ターゲッティングへの適応性、および遺伝子編集ツールとしての弱点をレビュー

4. [特許公開] カノニカルなPAM配列を伴わない標的配列の編集効率を高めるCas9およびCas9変異体の作出法、およびCas9変異体と核酸編集ドメイン (例 デアミナーゼ・ドメイン)との融合によるゲノム編集
[出典] UA20190225955A1"Evolved Cas9 Proteins for Gene Editing" 
 公開日 2019-07-25. 発明者 Liu DR, Hu JH. 権利者 Harvard College.

5. 網膜における標的遺伝子編集に対する自己破壊型CRISPR-Casコンストラクトに基づく''kamikaze” CRISPR/Cas systemを開発
[出典] "Utility of self-destructing CRISPR/Cas constructs for targeted gene editing in the retina" LiF [..] Liu GS. Hum Gene Ther.  2019-08-02.
 オーストラリアと中国の研究グループは今回、SpCas9と、SpCas9を標的とするsgRNAと関心のある遺伝子を標的とするsgRNAを、AAV2ベクターを介して硝子体内に注入することで、SpCas9の恒常的活性を回避し、より安全性の高い網膜遺伝子編集を実現した。

6.  蛍光色素によるsgRNA標識を介して、生細胞内クロマチンの多重化高解像度リアルタイム観察を実現
[出典] "Multiplexed Superresolution CRISPR Imaging of Chromatin in Living Cells" Wang S, Hao Y, Zhang L, Wang F, Li J, Wang L, Fan C. CCS Chemistry. 2019-08-01.
 上海应用物理研究所と上海交通大学の研究グループの成果:in vitro転写したsgRNAをUlysis™核酸標識キットにより蛍光色素 (例 Alexa Fluor)で標識しdCas9と組み合わせる手法を採用、テロメアを標的とするsgRNA (Telo-sgRNA)とメージャーサテライト (major sattelite)を標的とするMsS-sgRNAを設計し、それぞれ、dCas9-EGFP-NLSを発現させたマウス胎児線維芽細胞NIH3T3にリポソームで送達し、誘導放出抑制顕微鏡法 (STED)を介して、クロマチンの細胞内リアルタイム観察を実現した。S/N比がこれまでの5倍へと向上。

7. CRISPR-Cas9スクリーンにより、エストロゲン受容体α (ERα)による乳癌細胞の増殖に必須なCTCFアンカー部位を同定
[出典] "A CRISPR-Cas9 screen identifies essential CTCF anchor sites for estrogen receptor-driven breast cancer cell proliferation" Korkmaz G [..] Elkon R, Agami R. Nucleic Acids Res. 2019-08-02.
 ERα結合部位 (EBS)に近接するCTCF結合エレメント (CBEs)を標的とするCRISPR-Cas9ライブラリを構築し、ドロップアウトスクリーニングからERα駆動細胞増殖の必須CBEsを同定し、その中の4種類について詳細に解析し、PREX1プロモータ近位のCBEが乳癌細胞増殖の主要なドライバーであることを見出した。
8. CRISPR/dCas9による遺伝子座のラベリングにより、二倍体ヒト正常細胞内でのクロマチンの空間構成を解明
[出典] "CRISPR-based genomic loci labeling revealed ordered spatial organization of chromatin in living diploid human cells" Guo DG, Wang DB, Liu C, Lu S, Hou Y, Zhang XE.
Biochim Biophys Acta Mol Cell Res. 2019-07-31.
 中国科学院武漢病毒研究所、生物物理研究所、中国科学院大学の研究グループは、細胞内の染色体の構造の規則性の有無を同定することを目的として、北京大学のShatoら (Shato et al., 2016 / crisp_bio 2017-05-10 )が開発した遺伝子座の二色可視化法に基づき、広視野高解像度イメージングを介して、細胞周期の間期における非相同な染色体上の遺伝子座3組の内外の空間配置を観察し、アレル間の距離、アレルの中心点と核周縁部との距離、アレルの中心点とImarisソフトウエアで測定した核重心との距離および遺伝子座の中心点間の距離を測定した。
 その結果それぞれの距離が比較的安定していたことから、ヒト正常細胞内のクロマチンは間期において比較的規則的な構造を維持しているとした。

関連crisp_bio記事と論文
9. NMR法によりSpCas9のアロステリックネットワークの完全解明に挑む
[出典] "1H, 13C, 15N backbone and side chain resonance assignment of the HNH nuclease from Streptococcus pyogenes CRISPR-Cas9" Belato HB, East KW, Lisi GP. Biomol NMR Assign. 2019-08-03
  • PAM認識のシグナルをエンドヌクレーアゼまで伝えるアロステリックネットワークについては、MDシミュレーションによってPAMと相互作用するドメイン (PIドメイン)とRECローブならびにHNHドメインとを結びつけるアロステリックネットワークの存在が示唆されたが、dsDNA切断を協働して実現する2種類のヌクレアーゼHNHとRuvCの間のシグナル伝達をもたらすコンフォメーション変化は明らかになっていない。
  • Brown大学の研究チームは今回、NMR法により、全長Cas9 (160 kDa)に替えてHNHヌクレアーゼ (15.4 kDa)を合成しHNH内のアミド骨格 (1H, 13C, 15N)と脂肪族側鎖のNMRスペクトルを同定した。
10. [レビュー] CRISPR技術によるジャガイモのゲノム編集
[出典] REVIEW "Genome editing of potato using CRISPR technologies: current development and future prospective" Das Dangol S, Barakate A, Stephens J. et al. Plant Cell Tiss Organ Cult. 2019-08-02.
 遺伝子ノックアウト研究例;sgRNA設計;CRISPR/Cas9ベクターの選択;CRISPRシステムの送達法;変異体のスクリーニング法;オフターゲット変異の回避法;トランスジーン・フリーなジャガイモ作出;ノックアウト以外のゲノム編集など (転写調節とエピゲノム編集、Cas12a、Cas13、一塩基編集 (BE))

11. Cas9-sgRNA RNPのエレクトロポレーションを介して、TLR7ホモ型ノックアウトiPS細胞hiPSC-TLR7KO-A59を樹立
[出典] "Generation of a TLR7 homozygous knockout human induced pluripotent stem cell line using CRISPR/Cas9" Han HJ, Seo HH, Han HW, Kim JH. Stem Cell Research 2019-07-31.

12. [第7章] 生物医学研究に用いる動物モデルを作出するCRISPR-Cas技術
[出典] "CRISPR-Cas Technology as a Tool to Create Animal Models for Biomedical Research" Sundhari AK, Reddy SK, Waltz K, Gurumurthy CB, Quadris RM. Walz K & Young JI  (eds) Cellular and Animal Models in Human Genomics Research in Translational and Applied Genomics Series. Academic Press 2019-08-09. eBook ISBN: 9780128165744