1. ヒト細胞においてHDRを介した精密な多重遺伝子同時編集を実現する法
[出典] "Simultaneous precise editing of multiple genes in human cells" Riesenberg S [..] Maricic T, Pääbo S. Nucleic Acids Res. 2019-08-08
  • MPI Evolutionary Anthropologyの研究グループは、ドキシサイクリン誘導性のCRISPR-Cas9nを組み込んだヒトiPSC (iCRISPR-Cas9n細胞, Nat Commun. 2017)、および、HEK293細胞とK562細胞には種々のエフェクター (Cas9n、Cas9またはCas12a (Cpf1))とともに、gRNAとHDR用ssODNsを導入し、HDRを介した遺伝子編集効率を測定した。
  • この結果、ヒトPRKDC遺伝子にK3753R変異を導入することでDNA依存性プロテインキナーゼの触媒サブユニット(DNA-PKcs)を不活性化すると、NHEJが顕著にMMEJ過程もある程度抑制され、細胞型やCRISPRエフェクター の如何に関わらず、14種類の遺伝子のHDR効率を4~40% (平均 18%)から15~81% (平均 51%)へと向上し、また、4遺伝子の同時編集の精度も向上することを、同定した (原論文Figure 1の一部引用左下図参照)。
Fig.1 Fig. 4
  • また、K562細胞とヒトiPSC (iCRISPR-Cas9n)において、肺癌と直腸癌の治験が進められているDNA-PKcs阻害剤M3814が、不活性化PRKDCと同様なNHEJとMMEJの抑制とHDRの亢進をもたらすことを同定した (原論文Figure 4引用右上図参照)。
2. 光制御リポソームシステムによるCRISPR-Cas9遺伝子編集の時空間制御
[出典] "Spatial and temporal control of CRISPR/Cas9-mediated gene editing delivered via a light-triggered liposome system" Aksoy YA, Chen W, Goldys EM, Deng W. bioRxiv 2019-08-05.
  • Macquarie UniversityとUniversity of New South Walesなどオーストラリアの研究グループは、光線力学療法に利用されている光増感剤であるベルテポルフィン (VP)を脂質二重膜内に包含したリポソームにてCRISPRを送達することで、690 nmの光によるCas9-sgRNA RNP放出の制御を可能とし、HEK293細胞とゼブラフィッシュin vivoにて実証した。
  • ノックアウト効率はin vitroin vivoそれぞれ52.8%と77%に達した。
3. Cas12aに基づくアフリカ豚コレラウイルス (ASFV)のオンサイト迅速検出
[出典] "Cas12a-based on-site and rapid nucleic acid detection of African swine fever" Bai J, Lin H [..] Huang L. bioRxiv 2019-08-08.
  • 中国では2018年8月以来アフリカ豚コレラが25の省級行政区に広がり、養豚産業に多大な損害を与えているが、治療薬やワクチンが存在していない現状では、現場で簡便に利用可能な高感度なASFV検知法が求められている。華南理工大学と華南農業大学の研究グループは今回、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅法による等温核酸増幅とCas12aとラテラルフローアッセイを組み合わせて、室温 (37°C)にて1時間でASFVのp72遺伝子をフェムトモル濃度の感度で同定可能とし、CORDS (Cas12a-based On-site and Rapid Detection System)と命名した。
  • CORDSは凍結乾燥で保存し、また、郵送可能であり、必要な装置はインキュベータのみである。
4. CRISPR/Cas12a/13aシステムを介して、遺伝子を肉眼で検出する
"Universal and naked-eye gene detection platform based on CRISPR/Cas12a/13a system" Yuan CQ, Tian T [..]  Zhang GH, Zhou XM. bioRxiv. 2019-05-07.
  • 華南師範大学、華南農業大学およぶ江蘇師範大学の研究グループは、金ナノ粒子 (AuNP)比色分析により、外来イネ遺伝子、アフリア豚ウイルス、およびmiRNAを1時間未満で同定可能になることを示した。
  • Cas12a/crRNAの標的DNAへの結合とCas13a/crRNAの標的RNA認識はそれぞれ、無差別なtrans-ssDNAまたはRNAの切断を誘導する。そこで、AuNP-DNAプローブとハイブリダイゼーションするテンプレートとなるssDNAまたはssRNAを用意しておくと、断片化されたssDNAまたはssRNAがAuNP-DNAプローブに凝集し、AuNPを介した比色分析から、標的DNAまたはRNAを検出することが可能になる。
  [関連crisp_bio記事]
5. [レビュー] 作物の塩基編集:最新動向、限界および可能性
[出典] Review "Base Editing in Crops: Current Advances, Limitations, and Future Implications" Mishra R, Joshi RK, Zhao K. Plant Biotechnol J. 2019-07-31.
  • 中国農業科学院作物科学研究所とインドRama Devi Women’s Universityのチームによるレビュー:DNA塩基編集法とRNA塩基編集法;作物品種改良への応用;限界 (PAMによる制約, 編集可能ウインドウのサイズ, オフターゲット);将来展望