[出典] "CRISPR Interference-Based Platform for Multimodal Genetic Screens in Human iPSC-Derived Neurons"  Tian R, Gachechiladze MA, Ludwig CH[..] Ward ME, Kampmann M. Neuron 2019-08-15.

概要 (原論文グラフィカルアブストラクト参照)
 ヒトiPSCから高品質なニューロンを大量に生成する技術i3Neurons (Stem Cell Reports 2017)を開発した研究グループと、ゲノムワイドでの遺伝子ノックダウン技術CRISPRi (Nat Protoc 2013) [*]を開発した研究グループが共同で、iPSCsとiPSCsに由来するニューロンを対象として、CRISPRiによるマルチモーダルなノックダウンスクリーニングを実現し、iPSCsとニューロンにおける比較機能ゲノミクスを実現した。
[参考] YouTubeプロモーションビデオ(0m40s) "Using CRISPR to Alter Genes in Human Neurons Generated from Stem Cells";[*] CRISPRiによってRNAiよりは精密な遺伝子ノックダウンが可能になり、また、Cas9などヌクレアーゼ活性を帯びたCasタンパク質によるノックアウトスクリーニングでは不可能な必須遺伝子の機能解析が可能になる

細胞生存を指標とするプール型スクリーニング (pooled survival-based screen)
  • キナーゼとドラッガブルなタンパク質をコードする2,325遺伝子を標的とする1遺伝子あたり少なくとも5種類のsgRNAsを含むsgRNAsのH1ライブラリ (eLife 2016)と、コントロール用sgRNAs 500種類からなる13,025 sgRNAsのライブラリを利用し、コントロールsgRNAsの結果を最大限解析に活かすMAGeCK-iNC (MAGeCK including Negative Controls)で解析した。
  • iPSCsとニューロンのスクリーニング結果を癌細胞株の遺伝的スクリーンで選定された必須遺伝子の標準セット ("gold standard")と比較し、iPCSsとニューロンそれぞれに特異的な必須遺伝子セットと、共通な必須遺伝子セットを同定した。
  • そのノックダウンによってニューロンの生存性が向上する一連の遺伝子も同定した : ニューロンに細胞死をもたらすパスウエイに属しているDLK, JNK1およびPERKをそれぞれコードする遺伝子やp57をコードする遺伝子を含む。
  • ニューロンの必須遺伝子の発現レベルが、非必須遺伝子の発現レベルよりも有意に高いことを同定した。また、ニューロン必須遺伝子の殆どについて転写物を検出した。
scRNA-seqをリードアウトとするプール型スクリーン (pooled scRNA-seq screen)
  • H1ライブラリーによるスクリーンから同定したiPSCsとニューロンの生存に影響を与える遺伝子のうち27遺伝子を選択し、1遺伝子あたり2sgRNAsでノックダウンし、ディープシーケンシングとCROP-seqに準じたscRNA-seq解析を加えた。
  • iPSCsとニューロンの間で、そのノックダウンによるトランスクリプトームの変化が共通している遺伝子は限られていた。すなわち、ほとんどの遺伝子のノックダウンが、両者のトランスクリプトームに異なる作用を及ぼした。iPSCsとニューロンに共に必須である遺伝子の中にもそうした例(UBA1ユビキチン活性化酵素E)が存在し、ハウスキーピング遺伝子が細胞型を問わずに遍在するとしても、細胞型によって異なる機能を担っていることが示唆された。
アレイ型ハイコンテントスクリーン (arrayed high-content screen)
  • CROP-seq解析を加えた遺伝子の中から23遺伝子を選択し、そのノックダウンによるニューロンの生存性と形態の継時変化を観察し、必須遺伝子のノックダウンがニューロンの形態に対して異なる影響を与えることを同定した。
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