1. リキッドバイオプシーが投資家の関心を集めている
[出典] NEWS "Investors keep the faith in cancer liquid biopsies" Sheridan C. Nat Biotechnol. 2019-08-06.
  • 非侵襲的なリキッドバイオプシーによる癌の検知、癌療法の選択、療法に対する耐性発生や癌再発のモニターの可能性がアカデミアから発信されてきたが、臨床への展開はそれほど広がっていない。また、集団検診への展開も、極めて高いS/N比が要求されることから、簡単では無い。
  • 血中を循環する癌細胞由来のDNA (circulating tumor DNA: ctDNA)を検出するリキッドバイオプシーは、次世代シーケンシング (NGS)技術とともに現実になったが、臨床応用に十分な感度 (陽性と正しく判定する割合)と特異度 (陰性と正しく判定する割合)の実現は未だ課題である。
  • 一方で、企業におけるリキッドバイオプシー法の開発は激化しつつある。NEWSでは、参入企業が次々に数百億円の資金を調達しているエピソードから始まり、Table 1 SELECTER LIQUID BIOPSY TESTS FOR CANCER" に13社の製品、技術および進捗 (FDA承認など)をまとめ、本文中で、メチル化シグナチャー、CancerSEEK (crisp_bio 2018-01-19*)をはじめとするマルチオミックス、癌細胞由来DNAに加えて免疫細胞由来DNAの解析、AI、糞便DNAの利用などのアプローチが紹介している。また、学会発表から特異度99%/感度59-86%の性能も紹介している。
  • (*)2018-01-19 DNAとタンパク質の双方を標的とする"CancerSEEK"は、汎がんリキッドバイオプシーになり得るか
2. 欧州認可リキッドバイオプシー2種、KRASの低頻度変異検出結果に不整合
[出典] "Comparison of the Clinical Sensitivity of the Idylla Platform and the OncoBEAM RAS CRC Assay for KRAS Mutation Detection in Liquid Biopsy Samples" Vivancos A [..] Diaz-Rubio E. Sci Rep. 2019-06-20.
大腸癌の分子標的治療薬の一種である抗EGFR抗体薬は、効果があるKRASが野生型であることを判定した上で (KRASが変異していないことを確認した上で)、投与される。このため、KRAS変異アッセイを目的とするリキッドバイオプシー法が開発されている。
  • Vall d’Hebron Institute of Oncology (バルセロナ)のA. Vocancosらは、欧州でCEマークを獲得しているデジタルPCRに基づくSysmex Inostics社のOncoBEAMとリアルタイムPCRに基づくBiocartis社のIdyllaによるKRAS変異検出性能を、559人の転移性大腸癌患者由来のサンプルにより、比較評価した。
  • その結果、高頻度な変異について両者は一致するが、低頻度は変異では、OncoBEAMが高感度であるとした。MAF<5%とそのサブセットのMAF<1%の変異についてOncoBEAMが116サンプルと79サンプルを陽性と判定したのに対して、Idyllaはそのうち81サンプルと48サンプルについて陽性と判定するにとどまった。
  • # この報告に対して、抗EGFR抗体薬はMAF<1%のKRAS変異を帯びた大腸癌に対しては、野生型KRASを帯びた大腸癌と同等に奏功する例を挙げ、ラボでの感度判定と臨床での判定 (閾値)は必ずも一致しないというコメントが寄せられている (genomeweb 2019-08-02)。
3. 個別化血中循環腫瘍DNA解析により、癌ネオアジュバント療法後の遺残癌検出可能に
[出典] "Personalized circulating tumor DNA analysis to detect residual disease after neoadjuvant therapy in breast cancer" McDonald BR [..]  Pockaj BA, Murtaza M. Sci Transl Med. 2019-08-07. (bioRixv 2018-09-26).
  • 患者の血中に放出される腫瘍DNA (ctDNA)の解析は、腫瘍の存在の検出と治療標的となり得る変異を解析する非侵襲的手法として、期待される。しかし、極めて少量の腫瘍DNAを血中から検出することは簡単ではない。特に、化学療法を受けた患者の場合は特に難しい。
  • この課題に対して、Translational Genomics Research Institute, Mayo Clinicなどの研究グループは今回、患者ごとに最適化が可能であり、患者の経過を追跡して癌再発の早期発見を可能とする"targeted digital sequencing (TARDIS)"にて答えた。
  • ctDNA解析の標準試料において8種類から16種類の既知の変異を同時に解析することで変異アレルの割合 (allele fraction: AF)3/104と3/105それぞれについて、特異度96%で感度91%と53%を達成した。
  • 続いて、ステージIからIIIまでの乳癌の女性患者33名からの血漿サンプル80件について、患者あたり115種類までの変異をTARDISで解析し、AF中央値0.11%の患者全員についてctDNAを検出し、病理学的完全奏効 (pathCR)を見せた患者と遺残癌を伴う患者を比較すると、前者でネオアジュバント療法処置中にctDNAが顕著に減少し、ネオアジュバント処置終了後もctDNA濃度が有意に低いことを見出した。