[出典] "Essentiality of CREBBP in EP300 truncated B-cell lymphoma revealed by genome-wide CRISPR-Cas9 screen" Nie M, Du L, Zhang B [..] Zhang F, Pan-Hammarström Q. bioRxiv. 2019-08-28

背景
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL)は、遺伝子発現パターンをもとに2000年にAlizadehらによって(Nature 2000) 胚中心B細胞型 (Germinal center B-cell (GCB) type)と活性型B細胞型 (Activated B-cell-like (ABC) type)に大別された。
  • ABC型の予後が平均してGCB型に比べて不良とされたが、療法への応答性からABC型とGCB型がさらにサブタイプに分類されることも示唆された。その後、2018年に至り米国NCIを始めとする研究グループから遺伝子サブタイプが発表された (NHEJ 2018)。 
  • 遺伝子サブタイプは、NIH NEWS RELEASE (2018-04-11) の図にあるように、必ずしも遺伝子発現で大別されたサブルグープがそれぞれ細分化するというよりは、両者は多対多の関係になった。
  • こうした極めて多様なDLBCLの治療には、遺伝子発現プロファイルと遺伝子変異プロファイルに基づいて患者を層別化し、それぞれに最適化する必要がある。
  • B細胞性リンパ腫に見られる遺伝子変異の中で、CREBBPなどのヒストンアセチル化酵素 (HAT)とそのパラログのEP300の機能喪失変異が最も高頻度である。これらの遺伝子の中で、siRNAスクリーン実験から、CREBBP不全肺癌細胞に対してEP300阻害が合成致死をもたらすことが示唆された (国立がん研究センタープレスリリース 2015-12-09)。
成果
 Karolinska Institutet, Broad Institute, BGI-Shenzhenなどの研究グループは今回、ゲノムならびにトランスクリプトームの偏りの無い時系列解析に基づいて、特定のDLBCL細胞株や患者亜集団に特有な治療標的 (DLBCLが依存する遺伝子)を同定可能なことを示した。
  • GCB型DLBCL患者由来細胞株RC-K8を対象とする全ゲノムシーケンシング (WGS)とRNA-seq、加えて、偏りの無いゲノムワイドCRISPR-Cas9機能喪失スクリーン (28日におよぶ時間変化測定)を行なった。また、これまでに公表された癌細胞一般およびDLBCL細胞株のCRISPR-Cas9スクリーンの結果も再評価した。
  • WGSからは、均衡転座の発生により、EP300のC末端が欠失し、RNA-seqからアセチル化を担うブロモドメインとHATドメインを欠損した短縮型タンパク質が生成されることが示唆された。
  • CRISPRスクリーンからは早期 (7日目)に、RC-K8細胞株におけるCREBBPMDM2への依存性を含む遺伝子の必須性が見え、徐々に、酸化的リン酸化関連遺伝子への依存性が増すことが見えた。コピー数が多い遺伝子はCRISPRスクリーンでは「遅れて」必須性が見えてくると考えられる。
  • 各種解析を総合して、EP300欠損細胞のCREBBPへの特異的依存性を含むRC-K8細胞に特有な遺伝的必須性パターンを見出した。また、CREBBPに変異、転座またはコピー数減少がみられるDLBCL細胞株全般EP300が必須であることも見出した。
  • CREBBPそしてまたはEP300を欠失している細胞に残っているHAT機能の依存性が新たな治療標的であると見られたが、ブロモドメイン阻害剤CBP30は奏功せず、HATドメイン阻害剤のA-485が奏功し、HATドメインがCREBBP欠損またはEP300欠損細胞株に必須であることが示唆された。
B細胞リンパ腫を標的とするCRISPR-Cas9スクリーン (crisp_bio記事)