2023-07-13 crisp_bio記事へのリンクを追加:2023-07-13 肉食を控えて少しでも地球温暖化を遅らせる法 - 7つの代替オプション
2019-09-02 初稿
[出典] "Large greenhouse gas savings due to changes in the post-Soviet food systems" Schierhorn F [..] Müller D. Environ Res Lett. 2019-2019-06-21; NEWS "Soviet Union’s collapse led to massive drop in carbon emissions - Economic downturn changed people’s meat-heavy diets." Schiermeier Q. Nature. 2019-07-01.

 地球温暖化の原因とされる温室効果ガス (greenhouse gases: GHGs)の抑制が国際的課題となっている。その中で、畜産に伴うGHGs排出についても議論が続いている [1]。ストックホルム環境研究所 (SEI)は2009年11月に欧州各国に向けて、GHGsを2050年に1990年比90%削減の目標を達成するシナリオを提案し、農業セクターの章において、"By switching to a less meat-intensive diet, Europeans could be healthier and contribute to reduced GHG emissions" と述べた [2]。欧州では現在、食事習慣を変えることで畜産を抑制しようとする動きと、畜産業界の間で軋轢が生まれている。

 Nature誌は2019年7月1日に、ドイツ、オーストリア、ベルギー、ロシア、デンマーク、および米国の国際共同研究グループが2019年6月21日Environmental Research Letters誌 (以下、ERL)に発表した"Large greenhouse gas savings due to changes in the post-Soviet food systems"[3]に基づいて、"ソ連の崩壊が炭素排出量を激減させた"と題するニュース記事を配信した (論文[3]におけるデータ解析ワークフローについて原論文Figure 1引用下図参照)。Work flow
ニュース記事は「1991年のソ連崩壊は、GHGsの大幅減をもたらした。経済危機のため多くの旧ソ連市民が肉食をやめたからである」で始まっている。

ERL論文
  • 旧ソ連の主食は畜産物であった。1990年時点で、牛肉を一人当たり年に平均32 kgを消費し、この量は西欧の27%増で、世界平均の4倍に相当した。しかし、ソ連崩壊に伴う日々の生活に必要な商品の高騰と、ルーブルの購買力低下によってこれが激減し、また、耕作地の3分の1が放棄されたといわれている。
  • ソ連崩壊が引き起こしたこの食糧生産システムと消費動向の変化に伴って、1992年から2011年にかけて、ロシアのGHGs排出量が76億トン減少し、この減少量はラテンアメリにおける1991年から2011に消失した熱帯雨林に由来するGSGs増加量の4分の1に相当した。
  • ロシアのGHGs減少は主として1990年代の牛肉の消費量の減少と、2000年以後の国外からの牛肉輸入 (主として南米から)、および、放棄された耕作地の土壌内に二酸化炭素が隔離されたことによる [原論文Figure 2/3引用左右下図参照]。
GHG emission 2 GHG emission
  • 今回の解析結果は、各国のGHGs放出のポートフォリオを論ずる際には、作物や畜産にかかわる生産、土地利用、輸出入、および、消費についても評価することが重要なことを示し、また、1国における畜産抑制に誘導されたGHGs排出抑減が輸出国におけるGHGs排出増につながる関係性を示した。