[出典] Genome-scale CRISPR knockout screen identifies TIGAR as a modifier of PARP inhibitor sensitivity. Fang P, De Souza C, Minn K, Chien J. Commun Biol. 2019-09-09.

 PARP阻害剤は、相同組み換え (HR)機構を欠損 (“BRCAness”)している癌細胞に奏功する。J. Chien (UC Davis)の研究チームは、ヒト卵巣癌由来A2780細胞を対象として、PARP阻害剤オラパリブに対する感受性を指標とするGeCKOライブラリに基づくゲノムスケールCRISPR-Cas9機能喪失スクリーンの結果 (原論文FIG. 1引用下図参照)、TP-53で誘導される解糖系とアポトーシスの調節因子(TP-53-induced Glycolysis and Apoptosis Regulator: TIGAR)をコードするC12orf5の欠損が、A2780細胞のオラパリブに対する感受性を高めることを見出した。スクリーンショット 2019-09-11 14.45.59
 研究チームはまた、siRNAによるTIGARノックダウン (KD)実験から、TIGAR KDが癌細胞のオラパリブに対する感受性を高める分子機序と癌細胞の増殖を阻害する分子機序を明らかにした:TIGAR KDは、「ペントースリン酸経路の阻害 -> 細胞内ROS増加 -> オラパリブによるDNA損傷亢進」の機序とBRCA1とファンコニ貧血経路の下方制御を介して、“BRCAness”を機能的に誘導し、癌細胞のオパラリブに対する感受性を高める;代謝経路の改変を介して細胞老化を誘導することで、癌細胞の増殖を阻害する。

 CRISPR KO実験とsiRNA KD実験と共に、TCGAデータセットからも、卵巣癌を含む数種類の癌細胞でTIGARが増幅しており、またTIGARの高発現と悪性卵巣癌患者の全生存期間の短さが相関することも見出し、TIGARを標的とする癌療法の裏付けを得た。

 以上、研究チームは、Warburg効果の調節に関わるTIGARを標的とする療法を併用することで、相同組み換えが障害されていない癌細胞に対してもPARP阻害剤オラパリブが奏功する可能性を示した。