[出典] CRISPR-Cas9-based mutagenesis frequently provokes on-target mRNA misregulation. Tuladhar R [..] Hyun Hwang T, Lum L. Nat Common. 2019-09-06

[crisp_bio注] この論文は2019年5月6日にNat Communに投稿され、8月14日に受理された。これと基本的には同じ内容が別グループによって2019年7月26日にbioRixvに投稿され、crisp_bioでは2019年7月28日に「CRISPR-Cas9ノックアウト実験は必ずしもタンパク質のノックアウトまでは意味しない」にて取り上げた。

CRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウト (復習)
  • CRISPR-Cas9ゲノム編集技術は、Cas9-sgRNAによる標的遺伝子の切断 (DSB)を細胞内在NHEJ機構が修復する際に、修復部位にINDELSが誘発され、ひいては、フレームシフトが誘導される現象に基づいている。
  • このフレームシフトが未成熟終止コドン(premature termination codon: PTC)を標的領域に生成し、その転写物である変異型mRNAが、ナンセンス変異依存mRNA分解 (nonsense-mediated decay: NMD)機構によって分解されるに至る。
概要
 University of Texas Southwestern Medical Center、Cleveland Clinic Lerner Research InstituteならびにUniversity of Rochester Medical Centerの研究グループは今回、フレームシフトを誘導するINDELSを帯びたほぼ1倍体のヒト細胞株HAP1細胞株 (Horizon Discoveryから購入)のパネルにおいて、Cas9-sgRNAで標的した遺伝子に由来する転写物mRNAとタンパク質を解析し、パネルの50%近くで、標的遺伝子から何からの変異を帯びたmRNAまたはタンパク質が生成されることを見出した (原論文Fig. 2引用下図参照)。
TOP1gee
 さらに、HeLa細胞株、MIA PaCa-2細胞株およびRMS13細胞株における検証も経て、変異型mRNA/タンパク質が生成される分子機構を論じた(原論文Fig. 6引用下図参照):
on-target mRNA misregulation
  • PTCが誘発されたDNAから転写されたmRNAが選択的スプライシングの過程におけるPTC消失を経て、新奇タンパク質へと翻訳されるに至る (Pseudo-mRNA conversion)。
  • 配列内リボソーム進入部位 (internal ribosome entry site: IRES)が生成され、N末端領域が欠損した短縮型タンパク質が生成される (alternative translation initiation: ATI)
  • エクソン内スプライシング促進配列 (Exonic splicing enhancer)の破壊 (ESE dusruption)を介したエキソンスキッピングから、標的遺伝子のノックアウト以外に、遺伝子内部を欠損した短縮型タンパク質が生成される。
  • ESEによる標的遺伝子ノックアウト阻害に対しては、ESEsを破壊しかつオフターゲットを伴わないsgRNA同定プログラムCRISPinatoR (原論文Fig. 5引用下図参照)を開発した。CRISPinatoRは一方で、変異を帯びたエクソンのスキップを可能とするsgRNAの同定も可能とする。CRISPinatoR