[出典] NEWS First CRISPR editing trial results assuage safety concerns. Reardon S. Nat Med. 2019-09-11; CRISPR-Edited Stem Cells in a Patient with HIV and Acute Lymphocytic Leukemia. Xu L, Wang J, Liu Y, et al. NEJM 2019-09-11

背景
  • HIVのCD4(+)細胞への感染はCCR5またはCSCR4を必要とし (Wikipedia引用下図参照)、CCR5阻害剤がCCR5だけを帯びたCD4(+)T細胞に有効であることが知られている。また、CCR5 Δ32/Δ32変異を帯びておりHIV感染に対する耐性を帯びた個人が存在することも知られていた。CCR5
  • その中で、CCR5 Δ32/Δ32変異を帯びたボランティアからの骨髄細胞移植がHIV陽性の患者に奏功することが、2011年 [1]に続いて2019年[2]にも報告された。2011年のBlood誌掲載論文の場合は、"ベルリン患者"と呼ばれるAIDSと急性骨髄性白血病 (AML)の患者Timothy Ray BrownがCCR5Δ32/Δ32帯びたドナーの造血幹細胞 (HSCT)移植を受け、移植後AIDSもAMLも治癒し、その後ARTを停止したままとされている。2019年のNature誌掲載論文では、HIV-1とホジキンリンパ腫の患者へのCCR5 Δ32/Δ32造血幹細胞移植によってHIVが寛解したとされている (骨髄移植から18ヶ月間HIV非検出)。
  • 北京大学のHongkui Dengらは今回、CRISPR/Cas9を介したCCR5ノックアウト造血幹細胞の移植によるHIVの治癒を目指した。
成果
  • 野生型のCCR5遺伝子を帯びたドナー骨髄から採取した造血幹細胞に、Cas9タンパク質とCCR5を標的とするsgRNAをエレクトロポレーションし、CCR5ノックアウトを実現した。しかし、そのノックアウト効率が~18%と低かったため、当初予定していた5名のうち1名を対象とする臨床試験を進めた。
  • 対象者は2016年5月にHIV/AIDSと診断され、その後、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断され、AIDSに対する抗レトロウイルス療法 (ART)とALLに対する化学療法を受けていた。
  • 対象者に移植したCCR5ノックアウト細胞は患者の骨髄に定着したが、観察期間を通して、CCR5ノックアウト細胞の比率はわずかに5~8%にとどまった。
  • ALLについては移植後19ヶ月の段階で寛解状態にあり、またその間、CRISPR/Cas編集細胞の骨髄移植に伴う副作用の兆候が見られず、定期的に行った骨髄細胞由来DNAのWGSからはCCR5遺伝子以外のオフターゲット編集も見られなかった (すなわち、CRISPRbabiesに見られたオフターゲット遺伝子の編集は見られなかった)。
  • しかし、HIVの治癒 (cure)には至らなかった。骨髄移植から7ヶ月後に、対象者の同意を得て、ART療法を中止したところ、その直後からHIVがリバウンドしCD4(+)細胞を殺傷し始め、ART療法を再開することになった。一方で、ART療法を中止している期間に、血中を循環するCD4(+)細胞に占めるCCR5ノックアウト細胞の割合が2.9%から4.4%に上昇し、CCR5ノックアウトCD4(+)細胞のHIVに対する耐性が示唆された。
  • Dengらは、骨髄移植を受けた患者を長期間モニターすることを予定するとともに、第三者のドナーに依存することのない患者由来の幹細胞のCCR5をCRISPR/Cas9編集し自家移植する実験を予定している。
参考論文・論説
  1. Evidence for the cure of HIV infection by CCR5Δ32/Δ32 stem cell transplantation. Blood. 2011 Mar 10;117(10):2791-9. Online 2010-12-8.
  2. HIV-1 remission following CCR5Δ32/Δ32 haematopoietic stem-cell transplantation. Nature. 2019 Apr;568(7751):244-248. Online 2019-03-05.
  3. [EDITORIAL] Emerging Use of CRISPR Technology — Chasing the Elusive HIV Cure. June CH. NEJM. 2019-09-11
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