スペインEEZ-CSIC研究チームから2報

1. タイプVI-A Casシステムにおける逆転写酵素(RT)-Cas1融合蛋白質の由来
[出典] Recruitment of Reverse Transcriptase-Cas1 Fusion Proteins by Type VI-A CRISPR-Cas Systems. Toro N, Mestre MR, Martínez-Abarca F, González-Delgado A. Front Microbien. 2019-09-13.
  • タイプVI CRISPR-Casシステムは標的ssRNAとともに非選択的にssRNAを分解 (コラテラル分解)するエフェクタ・ヌクレアーゼ (Cas13)を帯び、高感度核酸検出法SHERLOCKに利用されている。スペインEEZ-CSICの研究チームは今回、これまで判然としていなかったタイプVI CRISPR-Casシステムにおけるスペーサ獲得機構の解明に取り組んだ。
  • タイプVIシステムは、RNAバクテリオファージからスペーサを獲得するモジュール (アダプテーションモジュール)を備えているとされてきた。
  • 研究チームは今回、RTsを伴うCas13エフェクタをデータベース検索し、タイプ VI-A CRISPRシステムに、RT-cas1cas2-RT-cas1の2種類の組み合わせを発見した (以下、タイプVI-A/RT1とタイプVI-A/RT2;原論文Figure 1引用下図参照)。
Figure 1 Figure 4
  • 研究チームは、進化系統解析から、これらのアダプテーションモジュールはそれぞれ、AlphaproteobacteriaClostridiaのタイプIII-D CRISPRシステムのRTからクルートされたことを示唆した (原論文Figure 4引用右上図参照)。
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2. CRISPR-Casシステムと協働する逆転写酵素の由来
[出典] Multiple origins of reverse transcriptases linked to CRISPR-Cas systems. Toro N, Martínez-Abarca F, Mestre MR, González-Delgado A. RNA Biol. 2019 Oct;16(10):1486-1493. Online 2019 Jul 11.
  • 自己スプライシング反応を帯びているグループⅡイントロンにコードされているRTsはタイプIII CRISPR-Casと相関し、Cas1のC末端に隣接または融合し、RNA分子からのスペーサ獲得に関与するとが示唆されているが、これらのRTsの進化過程は不明であった。
  • 研究チームは、データべースからRTsとアノテーションされている配列198,760件を取得した上で非冗長な配列9,141件を対象として、進化系統解析と、RTsならびにCRISPRシステムのスペーサ獲得に関与するアダプテーション・モジュールおよびエフェクター・モジュール近位に位置するRTsのドメインの同定を進めた。その結果、RTsはグループIIイントロンから進化した大グループとその他の2種類の小グループに分類されることを見出し、また、CRISPR-cas遺伝子座と相関するグループを同定するに至った。