[出典] Deep learning enables rapid identification of potent DDR1 kinase inhibitors. Zhavoronkov A [..] Aspuru-Guzik A. Nat Biotechnol 2019-09-02;NEWS RELEASE Novel molecules designed by artificial intelligence in 21 days are validated in mice - Experimental validation confirms the ability of artificial intelligence to accelerate drug discovery. EurekAlert! 2019-09-02.

 創薬は多大な研究開発資源を要し、10~20年の歳月と5~26億ドルを要する。Alán Aspuru-Guzik (U. Toronto)が率いるInsilico MedicineWuXi AppTecの研究グループは今回、低分子のデノボ設計を可能とする深層学習モデルGENerative Tensorial Reinforcement Learning (GENTRL) [1] を開発し、GENTRLによる設計に基づいて、H2L (ヒット化合物からリード化合物の導出)に要する期間を、従来の2~3年から2ヶ月まで短縮し、コストも大幅に削減することが可能なことを示した (EurekAlert! 挿入図参照)。

 線維症に関わるジスコイジンドメイン受容体1 (DDR1) [2]を標的とする実証実験では、23日間で30,000種類の候補構造の生成からリピンスキーの法則を満たす新奇阻害剤候補6種類までの絞り込みを実現し、35日目に合成を完了し、in vitroでの阻害活性アッセイを経て、活性を示した4種類の中でより強い活性を示した2種類について、U2OS細胞におけるDDR1阻害活性の評価と代謝安定性試験を加え、うち1種類について、47日目からマウスにおける薬物動態プロファイリングと量子化学計算による阻害機構の推定を進め、DDR1選択的阻害剤として有望であると結論するに至った。

[注]
  1. GENTRLは強化学習 (reinforcement learning)、変分近似 (variational inference)、および、テンソル分解 (tensor decomposition)を融合し、自己組織化マップ (SOM)に基づく評価を組み込んだ機械学習アルゴリズムであり、化合物の合成可能性、与えられた標的に対する効果、および、文献や特許に記載されている分子に対する新規性を優先する。
  2. DDR1は、コラーゲンで活性化される受容体型チロシンキナーゼであり、上皮細胞で発現し線維症に関与することが知られている。DDR1が繊維化をもたらす分子機構は判然としていないが、これまでに、DDR1選択的阻害する低分子がいくつか同定されてきている。