[出典] Enterovirus pathogenesis requires the host methyltransferase SETD3. Diep J, Ooi YS, Wilkinson AW [..] Andino R, Krogan NJ, Gozani  O, Carette JE. Nat Microbiol. 2019-09-16.

背景
  • エンテロウイルス (EV)は一本鎖プラス鎖RNAウイルスの大きな属を形成し、ポリオウイルス、ポリオ様麻痺を含む急性弛緩性麻痺を引き起こすエンテロウイルス-D68 (EV-D68)、近年の手足口病のアウトブレイクで注目を集めているエンテロウイルス-A71 (EV-A71)、多くの風邪の原因ウイルスでありまた小児喘息をもたらすライノウイルスなど、遺伝的に多様なウイルスを含んでいる。
  • エンテロウイルス全体はもとより、ライノウイルスに限っても、100を超える亜型が知られており、また、高頻度で変異し薬剤耐性を獲得することから、効果的な抗ウイルス剤の開発は難航している。
  • 近年、抗ウイルス療法の新たな戦略として、ウイルスの遺伝子やタンパク質ではなく、ウイルス感染に関与する宿主因子を標的とする宿主標的療法 (host directed therapy; HDT)が注目されている。Stanford UとUCSFを中心とする米国研究グループは今回、ライノウイルス (RV)を含むエンテロウイルス (EV) [*]を対象とする宿主標的治療を目指して、ゲノムワイド・ノックアウト・ライブラリ (GeCKO v2)に基づくCRISPR KOスクリーンによる宿主因子同定を試みた。
成果
  • 研究グループは、遺伝的に遠縁な2種類のウイルス、RV-C15とEV-D68、のチャレンジに対して、ウイルスの感染・増殖による細胞死に至らなかったクローンに存在していたsgRNAsから、その欠損によって宿主細胞がウイルスから保護されるに至った遺伝子群 (ウイルスの感染・増殖に必須な遺伝子群)を同定し、その中で、RV-C15とEV-D68に共通な必須宿主遺伝子としてアクチンヒスチジンメチルトランスフェラーゼをコードするSETD3を選択し、検証を続けた。
  • 細胞質SETD3は、そのメチル化活性には依存しない機構により、ウイルス増殖過程におけるRNA複製に必須の因子となっていた。
  • 定量的アフィニティー精製質量分析法 (AP-MS)により、SETD3が先の2種類のウイルスに限らず各種エンテロウイルスのウイルス2Aプロテアーゼと特異的に相互作用することを同定し、さらに、この相互作用を担う残基も同定した。
  • また、2A野生型に対して、プロテアーゼ活性を維持するがSETD3との相互作用が成立しない2Aの変異体が、ウイルスRNA複製を障害することも見出した。
  • In vitro実験に続いて、マウスへの CV-A10、 EV-A71およびEV-D68によるチャレンジにより、in vivoでもSETD3がウイルスの複製と病原性の必須宿主因子であることを確認した。
展望
  • 多彩なウイルスが共に必須とする宿主因子を標的とする抗ウイルス療法に対しても、耐性を帯びたウイルスが出現する可能性を否定できないが、ウイルス内在因子を標的とするよりも安定して長期間奏功することを期待して、宿主因子を抑制することの副作用も含め、宿主標的治療法の開発と評価を進めるべきである。