1. 統合失調症の発症をiPSC技術とCRISPRゲノム編集技術でシミュレーションする
[出典]Synergistic effects of common schizophrenia risk variants. Schrode N, Ho SM [..] Brennand KJ. Nature Gentics 2019-09-23. NEWS & VIEWS Modeling the cooperativity of schizophrenia risk genes. Christensen JH, Børglum  AD. Nature Genetics 2019-09-23.
  • 統合失調症 (schizophrenia: SZ)のリスクが一連のありふれた (common)遺伝変異によって高まることが知られているが、その分子機序は殆ど分かっていない。
  • Icahn School of Medicine at Mount SinaiのKristen J. Brennand が率いる研究グループは今回、同質遺伝子系のhiPSCsに由来する神経細胞において、SZに見られるeQTL遺伝子発現の異常をCRISPR遺伝子編集技術でシミュレーションすることで、わずかに4種類のSZ eQTL遺伝子 (FURIN, SNAP91, TSNARE1および CLCN3)が協働して、下流の1,261種類の遺伝子の発現を調節(665種類活性化;596種類抑制)し、神経細胞に障害をもたらすことを同定した。
2. [技術特集] CRISPRを超えて:ゲノム編集の今と先
[TECHNOLOGY FEATURE] Beyond CRISPR: What’s current and upcoming in genome editing. Tachibana C. Science 2019-09-27 2:00 PM
  • 細胞内在のDSBからの修復機構に基づくCRISPRと非CRISPR (ZFNs, TALENsおよびメガヌクレアーゼ)によるゲノム編集、および、DSBを介さない塩基編集 (base editing)、エピゲノム編集ならびに部位特異的組み換え (SSB)の特徴と、エフェクターの活性調節、多重化やデリバリーの課題を、アカデミアと企業のインタビューをもとに概観した。
3. Thermus thermophilusタイプIII-A CRISPRシステムは、cOA生合成を介して、DNAスーパーコイルも分解する
[出典] Structure and mechanism of a Type III CRISPR defence DNA nuclease activated by cyclic oligoadenylate. McMahon SA, Zhu W [..] White MF, Gloster TM. bioRxiv. 2019-09-26 > Nat Commun. 2020-01-24
  • タイプIII CRISPRシステムは侵入RNAを認識すると、セカンドメッセンジャーとして機能するサイクリックオリゴアデニル酸(cOA)の生合成を介してCsm6/Csx1リボヌクレアーゼを活性化することで細胞内のRNAを非選択的に分解 (コラテラル分解)することが知られている。
  • U. St Andrewsと英国Diamond Light Sourceの研究グループは今回、Thermus thermophilusのタイプIII-A CRISPRシステムにおいて、cOAで活性化される新たなエフェクタータンパク質、DNAエンドヌクレアーゼCan1 (“CRISPR ancillary nuclease 1”)を発見し、その構造と機能を解析した (Can1の構造: Figure 1引用左下図参照)。
Fig. 1 Fig. 7
  • Can1は、2つのCARFドメインと、2つのDNAヌクレアーゼ様ドメインを帯びた単量体タンパク質である。今回、cA4分子を捕捉した活性状態の分解能1.83ÅのX線結晶構造解析からの構造情報に基づいて、cA4結合に伴うCan1のコンフォメーション変化を経て、スーパーコイル状態のDNAをニッキングするDNAヌクレアーゼ活性が発揮される分子機序モデルを提案した (タイプIII-A CRISPRのコラテラルRNA分解とDNAスーパーコイル分解のモデル: Figure 7引用右上図参照)。
  • Can1のDNAニッキングが、ウイルスDNAの複製フォークを損傷し、ウイルスの複製を抑制するとした。
4. ABEによる作物ゲノム編集:イネの2種類の遺伝子 (Zebra3Wsl5)への次世代に継承される点変異導入を、ABEで実現
[出典] Simultaneous and precise generation of Zebra3 and Wsl5 mutations in rice using CRISPR/Cas9-mediated adenine base editors. Molla KA, Shih J, Yang Y. bioRxiv. 2019-09-26

5. [プロトコル]  CRISPR/Cas9によるコムギ半数体小胞子の遺伝子編集と小胞子培養による倍加半数体コムギ生産
[出典] [PROTOCOL] CRISPR/Cas9-Mediated Targeted Mutagenesis in Wheat Doubled Haploids. Ferrie AMR [..] Kagale S. In: Vaschetto L. (eds) Cereal Genomics. MIMB 2019-09-21.