2020-07-15 Cell Host Microbe掲載2論文のPreviewとその解説図へのリンクを追加し, ブログタイトルを「リステリアファージが抗CRISPRタンパク質 (Acrs)を2〜3種類備えている理由」から変更
[Preview] Not Your Typical Anti-CRISPR. Johnson WE. Cell Host Microbe 2020-07-08. https://doi.org/10.1016/j.chom.2020.06.016; 解説図 Figure 1. Dual Functions and Exaptation of AcrIIA1-like Acrs

2020-04-24 Cell Host & Microbe誌から2論文として刊行された :
2019-10-02 初稿

[出典] Listeria phages induce Cas9 degradation to protect lysogenic genomes. Osuna BA [..] Bondy-Denomy J. bioRxiv. 2019-09-30
 Listeria monocytogenesのプロファージはいずれも2〜3種類の抗CRISPRタンパク質 (Acr)遺伝子を帯びており、その中でacrIIA1は共通に存在する。UCSF, MGH, HMS, U TorontoおよびETH Zurichの研究グループは今回、AcrIIA1の独特の機能を明らかにした。

 AcrIIA1は、C末端ドメインによるCas9分解とN末端ドメインのよる自己抑制を備え、自身の発現を調節する"Cas9センサー"としても機能する。

 
C末端ドメイン (AcrIIA1CTD)
  • 溶原時のプロファージ状態ではAcrIIA1ListeriaにおいてそのCas9のHNHドメインに高い親和性で結合することで、ファージDNAをリステリアのCRISPR/Cas9による分解から保護し、さらに、Cas9を分解する。
  • この活性はAcrIIA1CTDに担われ、N末端ドメイン (AcrIIA1NTD)は関与しない。
 N末端ドメイン (AcrIIA1NTD)
  • Listeriaに溶菌感染時のファージDNA保護には、AcrIIA1CTDに依存したCas9不活性化と分解の過程は遅すぎ、AcrIIA1の上流にコードされているAcrs (AcrIIA2, AcrIIA4またはAcrIIA12)が、Cas9のファージDNAへの結合を迅速に阻害することでファージDNAを保護する。
  • 感染時には急速にAcrIIA1転写のバーストが発生し、AcrIIA1NTDacr遺伝子座の強力なプロモーターを抑制するネガティブ・フィードバック因子として機能する (in vitro実験でも裏付け)。
  • AcrIIA1NTDを欠損したファージの実験からAcrIIA1の過剰発現がファージの増殖が阻害されることを見出し、自己抑制機能がファージのフィットネス向上に寄与することが明らかになった。
  • 著者らはさらに、AcrIIA1が細胞内のCas9レベルを動的に調節することで、結果的に、溶原菌が外部からのファージおよびプロファージから保護されることを、示唆した。
Anti-anti-CRISPR
  • Firmicutesの他の種に存在するAcrIIA1NTDのホモログが、宿主細胞内在の機構と共同して、ファージの抗-CRISPR性を抑制する“anti-anti-CRISPRs"として機能する。
[筆頭著者のツイートを以下に引用]