2017年06月

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/16

  • Johan MalmströmらLund UniversityとUniversity of Zurichの研究チームは今回、マウスの血漿プロテオームを構成するタンパク質の由来組織を推定可能とする質量分析法を開発し、敗血症の診断に利用可能なことを示した.
  • はじめに、LS-MS/MSショットガン法を利用して、健康なマウス血漿のプロテオームを解析し、肝臓、腎臓、脾臓、肺、心臓および大動脈の器官、ならびに、血小板、血漿白血球および赤血球を対象として、タンパク質分布のアトラスを作成した.UniProtとPANTHERに依って同定したタンパク質はそれぞれ8,240種類と6,652種類であり、95%が共通であった.ユニークなペプチド数と対応するスペトル数はそれぞれ66,857件と258,027件になった.
  • アトラスのスペクトル・ライブラリーを参照して、SWATH (sequential window acquisition of all theoretical spectra) 法に類似のデータ非依存解析(data-independent analysis)-MS(DIA-MS)法で得たデータから、敗血症モデルマウスの血漿中のタンパク質786種類を同定・定量した.モデルマウスは、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes )を4種類の濃度でそれぞれ皮下注射・感染させて作出した.
  • その結果、敗血症に依存して、血漿プロテオーム中の器官特異的タンパク質プロファイルに、明確な変動が起こることを見出した.
  • また、従来のヒトの敗血症バイオマーカーをマウスのオーソログとアトラスにマッピングし、各バイオマーカーの症状の悪化への応答が一様でないことを見出した:急性期タンパク質、凝固タンパク質およびサイトカイン/ケモカイン由来のバイオマーカー増加;血管内皮損傷に関するバイオマーカーもやや増加;臓器不全に関するバイオマーカーは、最も高濃度感染させたモデルマウスにおいて僅かに増加;その他.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/15

  • Corresponding author:  植田弘師(長崎大学)
  • [背景] プロサイモシンα(ProTα)は、脳と網膜の虚血ストレスまたは血清飢餓ストレスに対する神経保護機能を有する.この機能の活性コアがProTα配列の30アミノ酸ペプチド/P30(a.a.49-78)であることが明らかになっている.また、P30の一部 P9(a.a.52–60)も、P30よりも低いが神経保護活性を示し、P9よりさらに短いペプチドも神経保護活性を有する可能性がある.
  • 今回、6アミノ酸のペプチド/P6(NEVDEE, a.a.51–56)が虚血誘発性の網膜の機能障害に対して、P30と同等の保護活性を有することをマウスモデルにおいて見出した(網膜電図検査 (ERG)とヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)による評価).
  • さらに、改変した6アミノ酸ペプチド/P6Q(NEVDQE)の硝子体内注射または静脈注射が、虚血誘発性の網膜の機能障害と組織障害を防止することを、ERFとHEに依って見出した.
  • 虚血ストレスを与えてから24時間後にP6Qを注射することで、網膜の神経節細胞、双極細胞、アマクリン細胞および視細胞の虚血誘発性損失が防止されることを、免疫組織化学的解析によって見出した.
  • 加えて、P6Qが、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(ionized calcium binding adaptor molecule 1: Iba-1)とグリア線維酸性タンパク質(glial fibrillary acidic protein: GFAP)の増加をそれぞれ指標とする網膜虚血誘発性のミクログリアとアストロサイトの活性化が強く抑制され、また、ミクログリアとアストロサイトの形態変化、細胞増殖ならびに細胞遊走も抑制されることを見出した.
  • P6Qは虚血性損傷に対して治療効果を有する.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/15

  • Irving L. WeissmanAaron M. Ringらスタンフォード大学の研究チームは、免疫チェックポイント阻害療法の進化を目指して、より小さく非抗体である分子の可能性を探った.PD-1/PD-L1をモノクローナル抗体(Mab)で阻害する免疫チェックポイント阻害療法は著効を示す.しかし、抗体は、組織/腫瘍浸潤性が低い、また、Fcのエフェクター機能による免疫細胞の枯渇、といった弱点を秘めている.
  • 酵母表層ディスプレイ(yeast-surface display)系を用いた定向進化によって、ヒトPD-1のエクトドメイン(Mab〜150 kDaに対して14 kDaと小型)からPD-L1に対する高親和性 (110 pM) 競合的拮抗剤(以下、高親和性PD-1)を得た.抗PD-L1 Mabと比べると、この高親和性PD-1は、末梢エフェクターT細胞を枯渇することなく、より優れた腫瘍浸潤性を示した.
  • また、同系のCT26腫瘍モデルにおいて、小さな腫瘍 (50 mm3) と大きな腫瘍(150 mm3)に対して、抗PD-L1抗体は大きな腫瘍に対しては全く効果を示さなかったが、高親和性PD-1は双方に対して効果を示した.
  • さらに、高親和性PD-1は放射標識してPETイメージイングのトレーサーとして利用可能であり、マウス生体においてPD-L1陽性の細胞と陰性の細胞を識別可能であった.すなわち、バイプシーや組織学的解析に替わる非侵襲的検査が可能になった.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/14

  • ある種のウイルスタンパク質は、N末端グリシンへの14炭素鎖飽和脂肪酸(ミリスチン酸)の共有結合N -ミリストイル化)という脂質修飾を経て、機能する.
  • このN -ミリストイル化は、N -ミリストイル化された短いリポペプチドを特異的に認識する宿主の細胞傷害性T細胞 (CTLs) の標的となる.
  • 今回、杉田昌彦ら、京都大学、長崎大学ならびに東海大学の研究チームは、MHCクラスI分子とリポペプチド複合体の高精度なX線結晶構造解析から、MHCクラスI分子が、9アミノ酸ペプチドよりも、MHCクラスN -ミリストイル化された5アミノ酸ペプチドに結合する構造基盤を明らかにした:アカゲザルのMHCクラスI分子が、サル免疫不全ウイルスのアクセサリータンパク質Nef由来のN -ミリストイル化された5アミノ酸ペプチドに結合し、CTLに対して提示する
N-myristoylated lipopeptide
  • 今回の結果は、MHCクラスI分子は長いペプチドをCTLsに提示するというこれまでの概念に修正を迫るものとなった.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/14
  • 半数のヒトがんで腫瘍抑制因子p53にミスセンス変異が起こり、p53の腫瘍抑制機能が失われている.変異p53集団は、その割合は不明であるが、アミロイド様状態へと自己凝集している.今回、Sanaz MemarzadehDavid S. EisenbergらUCLAの研究チームは、変異p53の凝集を阻害することで腫瘍を抑制可能なことを示した.
  • 変異によって不安定になったp53が粘着性が高いセグメントを露出して自己凝集するという仮説のもとに、凝集を誘起するセグメントを特定した上で凝集を阻害するペプチドを設計した.続いて、そのN末端にポリアルギニンを融合し、細胞透過性を付与して核内移行可能にしたペプチドをReACp53と命名した.
  • ReACp53は、全般にp53変異が起きている高悪性度漿液性卵巣癌(high-grade serous ovarian carcinomas: HGSOC)由来の細胞株、ならびに、オルガノイド中のp53が変異している細胞において、期待通りp53の凝集を抑制し、p53の腫瘍抑制機能を回復し、細胞増殖を抑制し、細胞周期を停止し、細胞死を亢進した.
  • ReACp53は、マウスに移植した卵巣癌に対しても増殖を抑制さらに縮小効果を示した.
  • ReACp53は、p53の変異の中でミスセンス変異R175とR248からの腫瘍抑制機能回復をもたらす.ReACp53は他の変異に対しても有効と考えられるが、この2種類の変異は米国のがん患者〜80,000人に起きている.

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