2017年06月

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/14

  1. [論文] CRISPR/Cas9に依る受精卵における染色体工学:Allan Bradley (Wellcome Trust Sanger Inst.)
    • ヒトの疾患モデルとしてのマウス作出の観点から、大領域(1 M-bpの長さのゲノム領域)の削除と逆位および効率は低いが同程度の複製を、CRISPR/Cas9の要素を直接受精卵に注入することによって実現.実験対象は、C57BL6/Nとチロナーゼ遺伝子座.
  2. [論文] CRISPR/Cas9を介した相同組換えによって筋原性因子5(MYF5)のレポーターをノックインしたヒトiPSCの樹立と解析:Radbod Darabi (UT Health Science Center at Houston)
    • 相同組換えとターゲッティング効率の向上を目指して、Cas9(D10A)ニッカーゼ変異体(Cas9n)一組を利用するダブルニッキング法を利用した.
    • MYF5遺伝子のストップコドンの直前に2A-GFPレポーターを導入し、また、Cas9-VP160 (dCas9アクチベーター)を利用して内在性MYF5の発現を誘導し、MYF5-GFPの共発現を実現した.
    • レポーターを組み込んだヒトiPSCをembryoid body法によって分化させ、MYF5-GFP+筋原性細胞を選別濃縮・解析した.
  3. [ニュース] DuPont、CRISPRを積極展開:Daniel Grushkin
    • DuPontはCRISPR/Cas9技術について、2015年6月の6月のVirginijus Siksnys (Vilnius University) とのライセンス契約に続いて、10月にCaribou Biosciencesとアライアンスを組み、分担してCRISPR/Cas9による作物改変に取り組み始めた.
    • BroadとUniversity of Californiaとの特許係争や、CRISPR/Cas9による遺伝子改変作物に対する規制といった不確定要素があるが、DuPontは、CRISPR/Cas9によって大豆ならびにトウモロコシに除草剤クロルスルフロン耐性を付与した論文を発表し、CRISPR/Cas9技術による作物改変に積極的姿勢を示している.
    • ニュースは、DuPont Pioneerの研究開発担当副社長Neal Guttersonのコメント「交配による開発した新品種を市場に出すまでには7〜10年、従来のGMOでは12〜15年、を要するが、ゲノム編集技術を利用すれば、それを5年程度に短縮可能」で締められている.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/13

  • Corresponding author: 山田健一(九州大学) 
  • 難燃剤として利用されているTBBPAはハロゲンを含むため、焼却処理するとハロゲン化ダイオキシンが発生する恐れがある
  • TBBA/HAの光分解を、EPR法とLC-MS法で解析した.400nmと300nmより長い波長の光照射によってそれぞれ一重項酸素とOHラジカルが、活性酸素種として発生した.
  • 波長400nmの光照射の場合、一重項酸素から形成される2,6-ジブロモ-N-p-ベンゾキノンモノイミン陰イオンラジカルの発生量が照射時間に比例して増加し、また、反応速度がpHと光度の増加と共に上昇した.
  • 波長300nmの光照射の場合、OHラジカルとTBBPAの反応を介してtribromohydroxybisphenol Aが形成された.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/13
  •  Corresponding author: 千田俊哉 (KEK); 佐々木敦朗 (U. Cincinnati/KEK) 
  • 細胞内のATPセンサー、酸素センサーあるいはアミノ酸センサーとして、AMPKとmTOR、Hypoxia inducible factor (HIF) prolyl hydroxylase (PHD)あるいはSLC38A9が知られているが、これまでGTPセンサーとして機能する分子は不明であった.
  • 今回、PI(5)Pのレベルを調節するホスホイノシチド・キナーゼであるPhosphatidylinositol 5-phosphate 4-kinase β(PI5P4Kβ)がGTPの濃度を検知し、脂質二次情報伝達を起動することを見出した.
  • プロテオミクス、イムノブロッティングおよびNMR解析の結果は、PI5P4KβがGTPに直接結合することを示した.また、NMRによってリアルタイムでGTP加水分解をアッセイし、PI5P4KβがATP分解の5倍の速さでGTPを加水分解することを見出した.
  • 生化学的解析によって、PI5P4KβはATPよりもGTPを利用してPI(5)Pをリン酸化し、その活性が生理的濃度の範囲内でGTP濃度に直接比例することが明らかになった.
  • PI5P4Kβと、GTPあるいはATPとの複合体/加水分解されないGTPあるいはATPアナログ(GMPPNPあるいはAMPPNP)との複合体のX線結晶構造解析によって、PI5P4KβとATPとGTPの結合機構を解明した.また、この構造情報に基づいて作出したPI5P4Kβ変異体の中に、GTPの加水分解とGTP濃度依存のキナーゼ活性を低減する変異体を見出した.
  • さらに、PI5P4KβのGTP検知機能が代謝適応に寄与するとともに、腫瘍形成にも決定的な役割を果たしていることを示した.すなわち、PI5P4KβのGTP検知能を標的としたがん療法の可能性を示した.
論文→壽美田一貴(Sumita, J./U. Cincinnati)et al. "The Lipid Kinase PI5P4Kβ Is an Intracellular GTP Sensor for Metabolism and Tumorigenesis." Mol. Cell. 2016 Jan 21;61(2):187-98. Published online 2016 Jan7.
構造→3X01: Crystal structure of PIP4KIIβ complex with AMP (2.15 Å)
構造→3X02: Crystal structure of PIP4KIIβ complex with GMP (2.45 Å)
構造→3X03: Crystal structure of PIP4KIIβ complex with AMPPNP (2.7 Å)
構造→3X04: Crystal structure of PIP4KIIβ complex with GMPPNP (2.6 Å)
構造→3X05: Crystal structure of PIP4KIIβ T201M complex with AMP (2.5 Å)
構造→3X06: Crystal structure of PIP4KIIβ T201M complex with GMP (2.65 Å)
構造→3X07: Crystal structure of PIP4KIIβ N203A complex with AMP (2.6 Å)
構造→3X08: Crystal structure of PIP4KIIβ N203A complex with GMP (2.75 Å)
構造→3X09: Crystal structure of PIP4KIIβ F205L complex with AMP (2.7 Å)
構造→3X0A: Crystal structure of PIP4KIIβ F205L complex with GMP (2.6 Å)
構造→3X0B: Crystal structure of PIP4KIIβ I368A complex with AMP (2.6 Å)
構造→3X0C: Crystal structure of PIP4KIIβ I368A complex with GMP (2.55 Å)

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/13

  • Corresponding author: 多胡めぐみ (慶應大学)
  • 肥満と肥満関連代謝病に対応すべく脂肪生成を抑制する新奇化合物が求められている.今回、PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ)を過剰発現しているマウス胎児線維芽細胞株3T3-L1において、水溶性フラーレン誘導体(ビス-マロン酸誘導体と3種類のプロリン型フラーレン誘導体)が脂肪生成に与える影響を解析した.
  • その中で、カルボキシ基を3つ有するプロリン型フラーレン誘導体P3が、脂質の蓄積を抑制し、また、PPARγのアゴニストである2型糖尿病治療薬ロシグリタゾンによって誘導されるaP2遺伝子のような脂肪細胞に特異的な遺伝子の発現を抑制した.
  • 一方で、ビス-マロン酸誘導体Mとカルボキシル基を2つ有するプロリン型フラーレン誘導体P1とP2は、PPARγを介した脂質蓄積またはaP2の発現には影響を与えなかった.
  • P3は、3T3-L1前駆脂肪細胞において、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキスメタゾンならびにインスリンの複合刺激によって誘導される脂質蓄積を阻害した.P3はまた、3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化過程において、C/EBPδ、C/EBPβまたはPPARγの発現に影響を与えないが、aP2 mRNAの発現を明確に阻害した.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/13

  • Corresponding author: 廣明秀一 (名古屋大)
  • アミロイド繊維形成と重合化の機構研究のためには、物理的に一様なペプチドを用意する必要があるが、今回、バクテリアで発現させたAβ(1–42)ペプチドから、凝集抵抗性(precipitation resistant: PR)のペプチドと、凝集する傾向の(precipitation prone: PP)ペプチドをHPLCに依って分離することに成功した.
  • しかし 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP) 処理後、PRペプチドもPPペプチドのいずれもが、アミロイド繊維を形成した.すなわち、HFIP処理中に、凝集の核となる “seed”を完全に単量体化できないことが明らかになった.
  • 2次元1H-15N NMRによって、HFIP中のAβ(1–42)が、予想外にも、単量体と二量体の平衡状態にあることを見出し、二量体の解離定数と二量体界面の残基を決定した.
  • さらに、リアルタイムThioflavin T蛍光アッセイによって、HFIP処理の間のAβの濃度が、Aβ繊維形成の動態に影響することを見出した.Aβの濃度を0.1mMまでに止めることを推奨.
  • 再現性を高めるためには、HFIP処理とそれに続く実験条件を論文に明記すべきであり、今後、HFIPに替わりAβ(1–42)を完全に単量体化する溶媒開発が必要.
 論文→重光佳基(Shigemitsu, Y.)et al. "Nuclear magnetic resonance evidence for the dimer formation of β amyloid peptide 1–42 in 1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol." Analytical Biochemistry. 2016 Apr 1;498:59-67. Published online 2016 Jan 7.

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