2017年12月

1.SunTag法をポリシストロニックへと拡張することで、テロメアの超解像顕微鏡による分析を実現
  • [出典]"(Po)STAC (Polycistronic SunTAg modified CRISPR) enables live-cell and fixed-cell super-resolution imaging of multiple genes" Neguembor MV,  Sebastian-Perez R,  Aulicino F, Gomez-Garcia PA, Cosma MP, Lakadamyali M. Nucleic Acids Res. 2017 Dec 23.
  • 蛍光タンパク質(FP)をdCas9に融合するCRISPR技術によって、生細胞内で反復配列および非反復配列の多重可視化(多色化)が進展した。しかし、FPによる標識効率が低く、超解像顕微鏡法への展開は進まなかった。Barcelona Institute of Science and Technologyの研究チームは今回、SunTagとポリシストロニクス・ベクターの既存の2つの技術を組み合わせることで、超解像顕微鏡によるテロメア動態の観察を実現した。
  • SunTag法によって標的を24コピーまでの蛍光タンパク質sfGFPで標識し(下図左のA;ただし、Protein Cell論文からの引用)、ポロシストロニクス・ベクター(下図Supplementary Figure 1(B))によって、内在リボヌクレアーゼの標的となるtRNAとsgRNAのペアを反復させた合成遺伝子からsgRNAsを精密かつ多重に発現することで、標識効率と標識からのシグナル強度を改善し、PoSTAC (Polycistronic SunTAg-modified CRISPR) と称し、ポリシストロニック・ベクターを使用しない手法をSTAC (SunTAg modified CRISPR)と称した。
(Po)STAC 1 (Po)STAC 2 
  • (Po)STACによる、標識効率と蛍光シグナルのS-N比(標的に結合したdCas9-FPからの蛍光と、核質内に滞留す非結合dCas9-FPからの蛍光の比)の改善:HeLa細胞において、配列の反復度が高いテロメアと、配列の反復度が中程度あるいは低いMucin1 と4(MUC1とMUC4)を標的とする(Po)STACの効果を共焦点顕微鏡で確認(上図右 Figure 1 -A-E)
  • テロメアの長さが短い(6 kb)のHeLaと長い(23 kb)のHeLa1.3の固定細胞において、STACと超解像顕微鏡STORM(STochastic Optical Reconstruction Microscopy) でテロメア・コンパクションを可視化比較(上図右;Figure 2-Dは、ボロノイテッセレーションによるテロメア領域の同定と比較)
(Po)STAC 2 (Po)STAC 3
  • STAC-STORMにより、HeLaとHeLa1.3の生細胞内でのテロメア動態観察(上図右)
2.[プロトコル(ビデオとPDF)]標的DNAの酵素消化により、任意のDNA源から大規模gRNAライブラリーを、効率的かつ低コスト構築可能とするシンプルなプロトコル
  • [出典]"A Universal Protocol for Large-scale gRNA Library Production from any DNA Source" Köferle A, Stricker SH. J Vis Exp. 2017 Dec 6;(130). ビデオPDF
  • オリゴヌクレオチド合成に替わる大規模で複雑なgRANライブラリーを構築する手法"CORALINA (comprehensive gRNA library generation through controlled nuclease activity)"のプロトコル
3.[研究資源]CRISPR/Cas9によりヒトES細胞からFHL2ホモ型ノックアウト細胞株を樹立
4.イネにおいて、野生型SpCas9は、NGG PAMと共にNAG PAMも認識し、安定したゲノム編集を実現する
[出典]"Robust genome editing of CRISPR-Cas9 at NAG PAMs in rice" Meng X, Hu X, Liu Q, Song X, Gao C, Li J, Wang K. Sci China Life Sci. 2017 Dec 25.

  • TMEM16膜タンパク質ファミリーには、リン脂質スクランブラーゼ、カルシウム依存性塩素イオンチャネル(CaCC)およびカチオンチャネルが共存している。Raimund Dutzler (チューリッヒ大)らは、Nectria haematococca由来のスクランブラーゼのX線解析による3.4 Å分解能構造(2014年Nature出典1)と、マウス由来CaCC(mTMEM16A)のクライオ電顕による6.6Å分解能構造を比較し(2017年5月eLife出典2)、膜貫通部位を形成する10本のαヘリックスの配置のわずかな差によって、リン脂質を輸送するスクランブラーゼと塩素イオンを輸送するCaCCの機能の違いが生じていることを報告した(下図左 参照)。そのモデルは、eLifeのINSIGHTの図(下図右 参照;出典3)に端的に示されていた。
Comparison of a scramblase and a TMEM16 chloride channel
  • Raimund Dutzlerらは今回、クライオ電顕によってmTMEM16Aのアポ構造とカルシウムイオンが結合した構造をより高分解4.06 Åと3.75Åの高分解能で再構成し(下図参照);、膜貫通ヘリックスα6がG644をヒンジとして屈曲した部分においてα7およびα4との位置関係が変化する(ビデオ"Calcium-activated chloride channel TMEM16A" YouTube の終盤1m16sから)イオンチャネル活性化の分子機構をモデルを、Nature 2017年12月21日号(出典4)に報告した。
Activation mechanism
  • Nature 2017年12月21日号にはYifan ChengとLily Yeh JanらUCSFの研究チームも、クライオ電顕単粒子再構成法によるmTMEM16A構造解析の成果も掲載された(出典5)。ナノディスク内で2個のカルシウムイオンが結合した分解能3.8Åの構造(下図左 参照)と、LMNG(ラウリルマルトースネオペンチルグリオール)内で1個のカルシウムイオンが結合した同じく3.8Å分解能の構造(下図右 参照)に基づく変異誘発と電気生理学実験から、塩素イオンが通過するポアを構成する残基とその機能を詳細に解析し、ポア全体に分布し 陰イオン選択性を担う10残基と、クラスターを形成してゲート機構を担う7残基を同定し、ポア形成残基の再配置がチャネル開口に関与することを示唆した。
Cryo-EM structures of the TMEM16A
[出典1]"X-ray structure of a calcium-activated TMEM16 lipid scramblase" Brunner JD, Lim NK, Schenck S, Duerst A, Dutzler R. Nature. 2014 Dec 11;516(7530):207-12. Published online 2014 Nov 12.
PDB-4WIS: Crystal structure of the lipid scramblase nhTMEM16 in crystal form 1 (3.3 Å)
PDB-4WIT: TMEM16 lipid scramblase in crystal form 2 (3.4 Å)
[出典2]"Structural basis for anion conduction in the calcium-activated chloride channel TMEM16A" Paulino C, Neldner Y, Lam AK1, Kalienkova V, Brunner JD, Schenck S, Dutzler R. eLife. 2017 May 31;6
EMD-3658/PDB-5NL2: cryo-EM structure of the mTMEM16A ion channel at 6.6 Å resolution
[出典3]"Ion Channels: Poring over furrows" Fisher SI, Hartzell HC. eLife. 2017 May 31;6.
[出典4]"Activation mechanism of the calcium-activated chloride channel TMEM16A revealed by cryo-EM" Paulino C, Kalienkova V, Lam AKM, Neldner Y, Dutzler R. Nature. 2017 Dec 13.
EMD-3861/PDB-5OYG: Structure of calcium-free mTMEM16A chloride channel (4.06Å) 
EMD-3860/PDB-5OYB: Structure of calcium-bound mTMEM16A chloride channel (3.75Å)
[出典5]"Cryo-EM structures of the TMEM16A calcium-activated chloride channel" Dang S, 〜 Cheng Y, Yeh Jan. Nature. 2017 Dec 13.
EMD-7095/PDB-6BGI: Cryo-EM structure of the TMEM16A calcium-activated chloride channel in nanodisc (3.8Å)
EMD-7096/PDB-6BGJ: Cryo-EM structure of the TMEM16A calcium-activated chloride channel in LMNG (3.8Å)


1.CRISPR/Cas9遺伝子編集と遺伝子ドライブによる逆遺伝学 - ショウジョウバエでの実証
  • [出典]"CRISPR/Cas9 and Active Genetics-based trans-species replacement of the endogenous Drosophila kni-L2 CRM reveals unexpected complexity" Xu XS, Gantz VM, Siomava N, Bier E. eLife. 2017 Dec 23;6.
  • ショウジョウバエの翅を支え感覚器官へ栄養を供給する翅脈の数とは、遺伝子発現と形態形成の相関を研究する格好のモデルである。2015年にCRISPR/Cas9によるショウジョウバエにおける遺伝子ドライブ(Mutagenic Chain Reaction, MCR)をScience誌に発表したValentino M. GantzとEthan Bierは今回、CRISPR/Cas9により、ショウジョウバエにおいて、転写因子の変異と形態形成の相関を精密に解析した結果をeLifeにて発表した。
  • L2翅脈形成に必要な転写因子をコードするknirps (kni)遺伝子座(kni L2-CRM)を標的として、そのミニマルな断片1.4 kbと隣接する保存配列の〜2 kbの領域を順次連続的に欠損させ、転写を促進する染色体対合など、CRMのレポータタンパク質による観察では得られなかった新たな知見を得た。
  • 加えて、先行研究で実現した遺伝子ドライブ技術に倣って、標的ショウジョウバエのL2-CRMを、異種ショウジョウバエのL2-CRMによって置換し、継代可能とする技術を実現し、標的ショウジョウバエがドナーのL2翅脈を発現することを同定した。著者らは、この生殖細胞系列を経て継代される要素を'self-propagating active genetic elements (CopyCat elements)'と呼称した。
2.CRISPR sgRNA活性改善の鍵となる配列の特徴を同定
  • [出典]"Identify Key Sequence Features to Improve CRISPR sgRNA Efficacy" Chen L ~ Dong Y. IEEE Access. December 22, 2017.
  • Doenchらが発表したsgRNAの活性データ(sgRNAと標的DNA2,799組のデータ)を元に、sgRNA配列、標的DNAがコードするタンパク質(アミノ酸配列保存性と天然変性)から、最大関連性最小冗長性(mRMR)特徴抽出、拡張特徴選択(IFS)、サポートベクターマシン(SVM)の手法によって、活性に影響を与える152種類の主要な因子を選別し、サポートベクターマシンによる判別器を構築。標的タンパク質の天然変性が、CRISPR sgRNAの活性に最も大きな影響を与えることを示唆。
3.Xanthomonas albilineans由来Cas2(XaCas2)の溶液内構造とヌクレアーゼ活性機構
  • [出典]"Solution structure and dynamics of Xanthomonas albilineans Cas2 provide mechanistic insight on nuclease activity" Jeong M, Kim I, Kim G, Ka D, Kim NK, Bae E, Ryu KS, Suh JY. FEBS Lett. 2017 Dec 18.
  • CRISPR-Casシステムにおいて、Cas2は外来DNA断片(スペーサー)獲得の足場タンパク質、および、基質のDNAとRNAに対するヌクレアーゼ、として機能する。これまでに得られたCas2の結晶構造は不活性なコンフォメーションであった。Jeong-Yong Suh(ソウル大学)らはNMRのresidual dipolar coupling法と緩和測定によって今回、溶液内でのXaCas2のヒンジ領域における動的なコンフォメーション変化を観測し、XaCas2が極めて可動性が高いAsp8を介して一時的に金属イオンと相互作用することでヌクレア-ゼ活性を発揮することを同定した。XaCas2は、2種類のコンフォメーションの動的平衡によって、足場とヌクレアーゼの二役を担う。
4.Cas9とCas12a(Cpf1)は、RNAに依存することなく、DNAを切断する
  • [出典]"RNA-Independent DNA Cleavage Activities of Cas9 and Cas12a" Sundaresan R, Parameshwaran HP, Yogesha SD, Keilbarth MW, Rajan R. Cell Rep. 2017 Dec 26;21(13):3728-3739
  • Rakhi Rajan(Oklahoma U)らは今回、Francisella tularensis novicida由来のCas12aとCas9(FnoCas12aとFnoCas9)およびSpyCas9が、Mn2+イオンの存在下で、gRNAに依存することなく(標的配列に依存することなく非選択的に)DNAを編集することを見出し、その活性とゲノム編集とバクテリアの病原性との関連を論じた。基質はそれぞれ異なり、FnoCas9はHNHドメインを介して二本鎖プラスミドをニックし、SpyCas9はRuvドメインを介して一本鎖DNAを切断し、FnoCas12aはRuvCとNucドメインの協働を介してdsプラスミドをニックし、ssDNAを切断する。
5.タイプI-E CRISPR-CasシステムのCascadeが標的を探索し標的に結合する動態を一分子FRETによりリアルタイムで観察
  • [出典]"Real-Time Observation of Target Search by the CRISPR Surveillance Complex Cascade" Xue C, Zhu Y, Zhang X, Shin YK, Sashital DG. Cell Rep. 2017 Dec 26;21(13):3717-3727.
  • Dipali G. Sashital(Iowa State U)らの成果。Cascadeは、そのCas7サブユニットとdsDNAのリン酸骨格との間で一時的に 非選択的静電相互作用し、PAMが存在しない領域では迅速にdsDNAから0.1秒以内に遊離することで、dsDNAを高速かつランダムにサンプリングする。標的に隣接している可能性があるPAMの密度が高い領域には、CascadeはそのCse1サブユニットの2種類のモチーフとPAM配列との相互作用を介して〜1秒以上止まり、DNAを20°程度曲げ、DNAの局所的巻き戻しを可能にする。標的配列が存在しない場合、CascadeはDNAから遊離し標的探索を続ける。
  • [参考] CRISPRメモ_2018/04/18 -1.大腸菌のタイプI-E CRISPR-Casシステムが標的DNAを切断するに至る過程を初めてin vivoで解析
6.[レビュー]CRISPR/Cas9ゲノム編集による乳癌に必須の(addiction)遺伝子- 乳癌治療分子標的の探索と同定
  • [出典]"Break Breast Cancer Addiction by CRISPR/Cas9 Genome Editing" Yang H, Jaeger ML, Walker A, Wei D, Leiker K, Weitao T. J Cancer. 2018; 9(2): 219-231.
  • 乳癌の発生、増殖、転移、そして各種療法に対する耐性獲得は、細胞内の多様な反応を異常な遺伝子発現とタンパ質分解を介して
  • た細胞内反応の調節に依存する(下図参照)。CRISPR/Cas9ゲノム編集による乳癌がaddictionする遺伝子の探索・同定をレビュー
Break Breast Cancer Addiction 1 Break Breast Cancer Addiction 2
7.大腸菌によるイソプレイド工業生産:メバロン酸経路のCRISPR-Cas9による最適化
  • [出典]"Towards industrial production of isoprenoids in Escherichia coli: lessons learned from CRISPR-Cas9 based optimization of a chromosomally integrated mevalonate pathway" Alonso-Gutierrez J, Koma D, Hu Q, Yang Y, Chan LJG, Petzold CJ, Adams PD, Vickers CE, Nielsen LK, Keasling JD, Lee TS. Biotechnol Bioeng. 2017 Dec 26.
  • Taek Soon Lee(Joint BioEnergy Institute, US)ら国際共同研究チームの成果。スクロースを資化する大腸菌W株のスクロース資化オペロンをイソプレノイド産生大腸菌DH1株に導入することで、グルコースに加えてスクロースも炭素源として効率的にビサボレンを産生かつ生育する大腸菌 DS株を作出し、さらに、メバロン酸経路(MVA)を組込み、CRISPR-Cas9によりプロモーター配列を置換することで、MVAの発現を高め、ビサボレンの産生量の5倍増を実現。
8.[特許]長寿化による癌など加齢に伴う疾患療法の手法とシステム - CRISPR-Casシステムによりマイクロバイオームを改変しトマチジンまたはラパマイシンの発現を誘導する手法を含む
  • [出典]"Method and System for Treating Cancer and Other Age-Related Diseases by Extending the Healthspan of a Human" US 2017/0348359 A1.
  • 公開日 12/07/2017;発明者/権利者 Kovarik, Katherine Rose; Kovarik, Joseph E (Englewood, CO, US) 
9.[特許]遺伝子編集因子h(Creリコンビナーゼ、CRISPR/Cas分子、TELE転写活性化因子、Cas9ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、転写調節因子またはそれらのコンビネーション)を哺乳類内耳の種々の細胞に効率的に直接送達する手法
  • [出典]"Efficient delivery of therapeutic molecules in vitro and in vivo" US 2017/0340754 A1.
  • 公開日 11/30/2017;発明者 Chen, Zheng-yi; Liu, David (Cambridge, MA, US) ;権利者Massachusetts Eye and Ear Infirmary (Boston, MA, US) 

  • ショウジョウバエの光受容応答に関与するTRP(Transient receptor potential)チャネルが発見されて以来、哺乳類ホモログが多数同定されてきた。現在、TRPスーパーファミリーは、C, M, P, ML, V, Aの6種類のサブファミリーに分類され、その中で最大のTRPM(TRP melastatin)サブファミリーは、8種類のサブタイプ(TRPM1〜TRPM8)に分類されている。
  • TRPの構造は基本的に6回膜貫通領域と細胞内N末端とC末端を特徴としているが、N末端部位とC末端部位は、TRPそれぞれに特徴的な構造が存在する。TRPMのN末端にはTRPMホモロジー領域(MHR)が4つ(MHR1〜4)存在する。
  • TRPチャネルの活性化機序と機能は、サブタイプ内でも多様である。TRPM4は、細胞内のカルシウムイオン濃度上昇を感知し、電位依存性で活性化(ナトリウムイオンそしてまたはカリウムイオンの流れによる脱分極)するが、他のTRPチャネルと異なり、一価カチオンのみを透過する(Ca2+は透過しない)。TRPM4は心筋細胞を含む多くのヒト器官・組織で発現し、心筋梗塞などの心血管疾患と相関する。
1.カルモジュリン(CaM)とS100カルシウム結合タンパク質A1(S100A1)が結合する新たなエピトープを同定
  • [出典]"Shared CaM and S100A1 binding epitopes in the distal TRPM4 N-terminus" Bousova K, Herman P, Vecer J, Bednarova L, Monincova L, Majer P, Vyklicky L, Vondrasek J, Teisinger J. FEBS J. 2017 Dec 14.
  • Kristyna Bousovaらチェコの研究チームは、Calmodulin Target Databaseから探索したS100A-1結合サイト(TRPMnpエピトープ)を摸した合成ペプチドと変異ペプチドを利用して、in vitroでCaMとS100A1結合特異性を蛍光偏光法で判定し、CaMとS100A1が結合機構は異なるが共に結合するエピトープ(N末端領域: V129-Q147)を同定。
2.脂質ナノディスクにおけるヒトTRPM4イオンチャネルの構造
  • [出典]"Structure of the human TRPM4 ion channel in a lipid nanodisc" Autzen HE, Myasnikov AG, Campbell MG, Asarnow D, Julius D, Cheng Y. Science. 2017 Dec 7.
  • David JuliusとYifan ChengらUCSFの研究チームは、脂質ナノディスクに埋め込まれたヒト全長TRPM4の構造2種類(EDTA結合構造とカルシウム結合構造)をクライオ電顕単粒子再構成法で解き、カルシウムの結合サイトがS1-S4ドメインの細胞内に位置することを見出した。
  • 2種類の構造のポアに相違は見られずまた細胞質側のゲートがいずれも閉じており、TRPM4は、カルシウム結合によるC末端部位のコンフォメーション変化を介して、電位依存性開口に至ることが示唆された。
  • PDB/EMDBエントリー:
  • 6BQR: Human TRPM4 ion channel in lipid nanodiscs in a calcium-free state
  • EMD-7132: Human TRPM4 ion channel in lipid nanodiscs in a calcium-free state (3.2Å)
  • 6BQV: Human TRPM4 ion channel in lipid nanodiscs in a calcium-bound state(下図2参照)
  • EMD-7133: Human TRPM4 ion channel in lipid nanodiscs in a calcium-bound state (3.1Å)
3.ヒト全長TRPM4チャネルのクライオ電顕構造
  • [出典]"Electron cryo-microscopy structure of a human TRPM4 channel" Winkler PA, Huang Y, Sun W, Du J, Lü W. Nature. 2017 Dec 14;552(7684):200-204.
  • Wei Lü(Van Andel Inst.)らは、TRPM4にアゴニストのカルシウムイオンとモジュレーターのデカバナジン酸(decavanadate, DVT)が結合した構造をクライオ電顕単粒子再構成法で解いた:4つのC末端部位が傘状の構造を形成(1個のコイルドコイルドメインが傘の柄、4つのヘリックスが傘の骨に相当)し、N末端部位のMHRsひいては4サブユニットからなる'王冠'を支えている;DVTの結合サイトはC末端領域のターンとMHR3に隣接するMHR1/2との界面の2箇所に位置し、DVTがC末端とN末端の双方に作用してチャネル開閉に関与することを示唆;TRPM4の一価カチオン選択性は選択フィルターに位置するグルタミンGln977に因る
  • PDB/EMDBエントリー
  • 5WP6: Cryo-EM structure of a human TRPM4 channel in complex with calcium and decavanadate(下図3参照) 
  • EMD-8871 EMD-8873 EMD-8875 EMD-8876 EMD-8877 EMD-8878 EMD-8879 EMD-8872
  • EMD-8871: Cryo-EM structure of a human TRPM4 channel in complex with calcium and decavanadate (3.8Å)
TRPM4
4.マウスのカルシウム活性化非選択的カチオンチャネルTRPM4の構造
  • [出典]"Structures of the calcium-activated, non-selective cation channel TRPM4" Guo J, She J, Zeng W, Chen Q, Bai XC, Jiang Y. Nature. 2017 Dec 14;552(7684):205-209.
  • UT Southwesternの研究チームは、マウスTRPM4の2種類の構造、アポ構造とチャネル活性が阻害されたATP結合構造、をクライオ電顕単粒子再構成法で明らかにした:一価カチオン選択性は選択フィルターに位置するグルタミンGln973に因る;カルシウムイオン(およびホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸、PtdIns(4,5)P2)は、S1-S4とTRPドメインが構成する膜貫通ゲーティング装置に結合することが示唆され、S4-S5リンカーそしてまたは TRPヘリックス1に起こるコンフォメーション変化を介してチャネルを活性化;ATPはN末端領域のヌクレオチド結合ドメインに結合し、TRPM4のC末端領域の四量体(論文3の傘)的構成を壊し、アロステリックにチャネルを不活性化;'傘の柄'がピストンのように運動し、'傘の骨'の伸び縮みを介してチャネルゲーティングを調節する機構を示唆。
  • PDB/EMDBエントリー
  • EMD-7081: Cryo-EM structure of TRPM4 in apo state with short coiled coil at 3.1 angstrom resolution (3.14Å)
  • 6BCJ: Cryo-EM structure of TRPM4 in apo state with short coiled coil at 3.1 angstrom resolution
  • EMD-7082: Cryo-EM structure of TRPM4 in apo state with long coiled coil at 3.5 angstrom resolution (3.54Å)
  • 6BCL: Cryo-EM structure of TRPM4 in apo state with long coiled coil at 3.5 angstrom resolution
  • EMD-7083: Cryo-EM structure of TRPM4 in ATP bound state with short coiled coil at 2.9 angstrom resolution (2.88Å)
  • 6BCO: Cryo-EM structure of TRPM4 in ATP bound state with short coiled coil at 2.9 angstrom resolution
  • EMD-7085: Cryo-EM structure of TRPM4 in ATP bound state with long coiled coil at 3.3 angstrom resolution (3.25Å)
  • 6BCQ: Cryo-EM structure of TRPM4 in ATP bound state with long coiled coil at 3.3 angstrom resolution(上図4参照)

 (構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/21)


 膨大なゲノム配列データと合成生物学の進歩によって、天然物の探索と合成を実現する技術が発展している.UCLAのYi Tangらは、10ページ11節からなるそのレビューの中2節で、CRIPSR/Cas9技術の有用性を取り上げた.


 遺伝子への変異導入と同時並行で、DNA二本鎖切断(DSB)と酵母の相同組換え修復(HDR)機構によってゲノムの任意の位置に遺伝子クラスターを多重に組み込むことを可能にするCRISPR/Casは、天然物生合成酵母工場に必須の技術である:

  1. 酵母におけるCRISPR/Cas9のHDRを利用した高効率な遺伝子組込み実証 
    James E. DiCarlo et al. “Genome engineering in Saccharomyces cerevisiae using CRISPR–Cas systems.” Nucleic Acids Res. 2013 Apr;41(7):4336-43.
  2. Enterococcus faecalis ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体をコードする6種類の遺伝子の多重挿入と他の遺伝子への変異導入によってアセチルCoAの過剰生産株を作出 
    Robert Mans et al. “CRISPR/Cas9: a molecular Swiss army knife for simultaneous introduction of multiple genetic modifications in Saccharomyces cerevisiae.” FEMS Yeast Res. 2015 Mar;15(2).
  3. 15種類の遺伝子断片を3箇所の遺伝子座に導入しパスウエイを構築 
    Tadas Jakočiu̅nas et al. “CasEMBLR: Cas9-facilitated multiloci genomic integration of in vivo assembled DNA parts in Saccharomyces cerevisiae.” ACS Synth. Biol. 2015 Nov 20;4(11):1226-34.
  4. 酵母ゲノムに内在するレトロトランスポゾンのLTR領域 (繰り返しデルタ配列)を切断し、キシロースを基質として(R,R)-(-)-2,3-ブタンジオール(BDO)を産生するパスウエイを構成する24kbの遺伝子クラスターを18コピー導入しキシロースから直接DBOを産生する株を作出.Di-CRISPRプラットフォームと命名. 
    Shuobo Shi et al. “A highly efficient single-step, markerless strategy for multi-copy chromosomal integration of large biochemical pathways in Saccharomyces cerevisiae.” Metab. Eng. 2016 Jan;33:19-27.
  5. 1重から5重までの遺伝子破壊を試みて、メバロン酸収量を野生株の41倍にあげることに成功.
    Tadas Jakočiu̅nas et al. “Multiplex metabolic pathway engineering using CRISPR/Cas9 in Saccharomyces cerevisiae.” Metab. Eng. 2015 Mar;28:213-22.

↑このページのトップヘ