2018年01月

1.[プロトコル]前核収入法によるゴールデンシリアンハムスターのCRISPR/Cas9ゲノム編集
  • [出典] Li R, Miao J, Fan Z, Song S, Kong IK, Wang Y, Wang Z. "Production of Genetically Engineered Golden Syrian Hamsters by Pronuclear Injection of the CRISPR/Cas9 Complex" J Vis Exp. 2018 Jan 9;(131)
  • トランスジェニックマウス作出で成功を見た1細胞期受精卵の前核に遺伝子導入する前核注入(pronuclear (PN) injection)法を他の実験動物や家畜へ展開するには、マイクロインジェクションや体外培養といった技術と共に、標的生物種についてその生殖整理などについての知見が必要である。遺伝子ノックアウトとノックインを帯びたゴールデンシリアンハムスター(golden hamster|Syrian hamster)を、PN法によって初めて作出した著者らのビデオ・プロトコル
  • [関連論文とレビュー] Mashiko D, Fujihara Y, Satouh Y, Miyata H, Isotani A, Ikawa M. "Generation of mutant mice by pronuclear injection of circular plasmid expressing Cas9 and single guided RNA" Sci Rep. 2013 Nov 27;3:3355;伊川正人. "ゲノム編集がひらく遺伝子改変マウスの未来" ライフサイエンス 領域融合レビュー. 2014年7月15日.
2.Cas9 RNPとAAV6によるヒト多能性幹細胞(hPSCs)のセレクション・フリーで高効率な相同組換え(HR)ゲノム編集
  • [出典] Martin R, Ikeda K, Uchida N, Cromer MK, Nishimura T, Dever DP, Camarena J, Bak R, Lausten A, Jakobsen MR, Wiebking V, Sebastiano V, Nakauchi H, Porteus MH. "Selection-free, high frequency genome editing by homologous recombination of human pluripotent stem cells using Cas9 RNP and AAV6" bioRxiv. Posted January 23, 2018.
  • 2.2 kb DNA発現カセットのhPSCsの遺伝子座HBBとMYD88へのノックインをそれぞれ94%と67%の効率で実現。
  • 鎌状赤血球症(SCD)患者由来のiPSCにおけるホモ型SCD変異の修復効率62%を達成。
3.[プロトコル]CRISPR/Cas9によるヒトiPSCsの内在タンパク質の蛍光標識法
  • [出典] Sharma A, Toepfer CN, Ward T, Wasson L, Agarwal R, Conner DA, Hu JH, Seidman CE. "CRISPR/Cas9-Mediated Fluorescent Tagging of Endogenous Proteins in Human Pluripotent Stem Cells" Curr Protoc Hum Genet. 2018 Jan 24;96:21.11.1-21.11.20.
  • HDRを介したタンパク質への蛍光レポータータンパク質融合実験プロトコル
4.ウイルスのp30遺伝子(CP204L)を標的とするCRISPR/Cas9により、アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の複製を効果的に阻害
  • [出典] Hübner A, Petersen B, Keil GM, Niemann H, Mettenleiter TC, Fuchs W. "Efficient inhibition of African swine fever virus replication by CRISPR/Cas9 targeting of the viral p30 gene (CP204L)" Sci Rep. 2018 Jan 23;8(1):1449.
  • コドン71-78を標的とするsgRNAとCas9遺伝子をイノシシ肺由来のASFV許容細胞に送達することで、ASFVのプラーク形成の阻害およびウイルス量の4桁減を実現。
5.発展途上国における遺伝子ドライブとCRISPR/Cas9によるマラリアと媒介蚊の絶滅は得策か
  • [出典] Roitman LA, Fisher D, Theriot J. "Playing God: Eradicating Malaria and Mosquitoes in the Developing World with Gene Drives and CRISPR/Cas9" J Nanomed Nanosci. 2017 Nov 10.
  • 蚊帳によるマラリア感染防止のコスト(一張US$3.-;3,000ドルで一人の命を救うとされている)、パナマ、ケイマン諸島およびブラジルでのOxitec社による実地試験の結果、CRISPR/Cas9によるマラリア耐性蚊の作出などと、遺伝子ドラインブを比較し、遺伝子ドライブが最適な手法とした。
6.蛍光タンパク質を融合したdCas9とテロメアを標的とするsgRNAの一過性発現により、植物(タバコ)におけるクロマチン可視化を実現
  • [出典] Fujimoto S, Matsunaga S. "Visualization of Chromatin Loci with Transiently Expressed CRISPR/Cas9 in Plants" Cytologia. 2017;82(5):559-562

(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/30から転載)

  • [出典] [技術プレビュー] Yihan Lin & Michael B. Elowitz "Central Dogma Goes Digital" Mol.Cell 2016 Mar 17;61(6):791-792. [技術報告] Cem Albayrak et al. "Digital Quantification of Proteins and mRNA in Single Mammalian Cells." Mol. Cell. 2016 Mar17;61(6):914-24.[Corresponding author] Savaş Tay (ETH Zürich/U. Chicago)
  • ETH Zürichの研究チームは、タンパク質コピー数のデジタル測定技術を、Proximity Ligation Assay(PLA)とDroplet Digital™ PCR (ddPCR™)を組み合わせて構築した.このデジタルPLA技術は、標的タンパク質に結合して近接したプローブとコネクター・オリゴヌクレオチドが形成するdsDNAを、ddPCR™でデジタル定量し、タンパク質コピー数へ換算する技術である.
  • 研究チームは、単一細胞を溶解したのち2分し、一方についてデジタルPLA法でタンパク質コピー数を測定し、もう一方について、2段階RT-ddPCR™によってmRNAコピー数を測定し、タンパク質とmRNAのコピー数の相関を検証した.具体的には、HEK293T細胞において内因性のCD147とICAM-1遺伝子および外因性GFP-p65を対象として測定・解析を進め、いずれの場合も、相関が極めて小さいことを見出した.
  • さらに、CD147のデータをもとに、遺伝子の活性化がランダムにオン・オフされ(プロモーターがオン・オフし)、タンパク質翻訳過程で外部環境からのノイズが入ることを仮定した二状態確率過程モデルによって、タンパク質のコピー数とmRNAのコピー数の間の相関の低さを再現可能なことを示した.なお、細胞集団としての平均的なmRNA量とタンパク質量の間には、確率過程の影響が失われるために、相関が見られる.
  • 近年、単一細胞のmRNAとタンパク質を同時に定量する技術の開発が続いている中で、研究チームが開発した手法の特徴や次のとおり:mRNAとタンパク質の絶対量を測定;タンパク質をフェムトモル濃度感度で測定可能でありダイナミックレンジが広い;市販のddPCR™装置を使うなど特別な装置を必要としない.

(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/29から転載)

  • [出典] Thomas H. Sharp, Abraham J. Koster & Piet Gros. "Heterogeneous MAC Initiator and Pore Structures in a Lipid Bilayer by Phase-Plate Cryo-electron Tomography." Cell Rep. 2016 Apr 5;15:1-8. Published online 2016 Mar 24. [EMデータ] EMD-3289: Subtomogram average of the membrane attack complex(分解能 23 Å)
  • 膜侵襲複合体(membrane attack complex: MAC)は、病原菌細胞膜に孔(ポア)を穿つことによって、哺乳類の病原菌に対する免疫防御機構を担っている.補体系の活性化過程で、C5b6、C7、C8ならびにC9が順次膜に結合・侵入することで本記事挿入モデル図のようなMACが形成される.

36230001
  • ドイツの研究チームは今回、ガラス状リポソームを使用して、Volta位相板Falcon II電子直接検出カメラを備えたTitan Krios電顕から得た共グラフについてサブトモグラム平均化を行って、C5b-7、C5b-8およびC5b-9複合体の像を得て、C5b-9のポア構造を分解能2.3-nmで決定した.
  • 細胞膜上にC5b-7複合体がクラスターを形成し、C5b-8のオリゴマー化とともに膜が変形して孔が開き、C5b-9複合体によって脂質二重膜にポアが形成される.ポアはほぼ挿入モデル図の形状をとり、C5b-8から多重のC9へとつながる10-〜11.5-nmのコーン型であった.しかし、サブトモグラフには多様な形が見られた.
  • ポアが多様な形状をとることで、病原菌の多様な膜表面に対応可能にっていると考えられる.
  • [参考資料] 位相差電子顕微鏡が拓く新しいバイオイメージング(自然科学研究機構 永山國昭、2010)

1.アレイ型CRISPR-Cas9によるゲノム編集とハイコンテントスクリーニングの融合
  • [出典] de Groot R, Lüthi J, Lindsay H, Holtackers R, Pelkmans L. "Large‐scale image‐based profiling of single‐cell phenotypes in arrayed CRISPR‐Cas9 gene perturbation screens" Mol Syst Biol. 2018 Jan 23;14(1):e8064.
  • CRISPR-Cas9スクリーニングの多くがプール型ライブラリーを利用して行われているが、プール型スクリーニングの場合、scRNA-seqを利用しても細胞ごとの大規模な多面的プロファイリングが困難であり、また、細胞の形態、細胞微小環境あるいは核膜孔複合体のような細胞内構造の観察は不可能である。Zurich大学の研究チームは今回、アレイ型CRISPR-Casライブラリー、顕微鏡画像の自動解析装置ならびに機械学習を組み合わせたパイプラインを構築した。
  • 1,457遺伝子を標的とする2,281種類のsgRNA, spCas9およびレポーターを含むプラスミドのライブラリーを、384ウエルのプレートに撒いたHeLa細胞に一時的にトランスフェクション
  • 同一ウエル内で形質導入された細胞と形質導入されなかった細胞の比較、および、ウエル間での比較から、表現型をプロファイリング
2.鎖骨頭蓋異形成症(cleidocranial dysplasia: CCD)患者由来のiPSCsの変異をCRISPR/Ca9で修復することで、頭蓋冠骨不全モデルラットにおける骨再生を改善
  • [出典] Saito A et al. "Targeted reversion of induced pluripotent stem cells from patients with human cleidocranial dysplasia (CCD) improves bone regeneration in a rat calvarial bone defect model" Stem Cell Res Ther. 2018 Jan 22;9(1):12.
  • CCD-iPSCに、CRISPR/sgRNA発現プラスミドと修復用ドナープラスミドをエレクトロポレーションすることで、Runt-related transcription factor 2(RUNX2)遺伝子における変異の修復を実現し、さらに、このRev-iPSCによる骨再生の可能性も示した。
3.[特許]RNAの3'末端、5'末端およびその双方をキャップすることで、RNAの発現と安定性を向上し、免疫原性を低減
  • NOVEL 3' END CAPS, 5' END CAPS AND COMBINATIONS THEREOF FOR THERAPEUTIC RNA
  • US 2018/0002368 A1. PubDate 01/04/2018
  • Inventors Barnes-seeman, David et al.
  • Assignee NOVARTIS AG (Basel, CH) 
  • CRISPR/Cas9技術に展開可能
4.リン脂質スクランブラーゼ1 (PLSCR1) は、A型インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)と相互作用して、感染細胞への核への移行を阻害することで、ウイルス複製を抑制
  • [出典] Luo W, Zhang J, Liang L, Wang G, Li Q, Zhu P, Zhou Y, Li J, Zhao Y, Sun N, Huang S, Zhou C, Chang Y, Cui P, Chen P, Jiang Y, Deng G, Bu Z, Li C, Jiang L, Chen H. "Phospholipid scramblase 1 interacts with influenza A virus NP, impairing its nuclear import and thereby suppressing virus replication" PLoS Pathog. 2018 Jan 19;14(1):e1006851.
  • PLSCR1がNPと相互作用することをY2Hで同定し、加えて、PLSCR1をsiRNAでノックダウンあるいはCRISPR/Cas9でノックアウトすると、ウイルス感染が亢進することを同定。
5.IFN制御因子8(IRF8)は、カスパーゼ1の発現を調節して、B細胞受容体刺激および化学誘導に応答したEBVの再活性化を促進する
  • [出典] Lv DW, Zhang K, Li R. "Interferon regulatory factor 8 regulates aspase-1 expression to facilitate Epstein-Barr virus reactivation in response to B cell receptor stimulation and chemical induction" PLoS Pathog. 2018 Jan 22;14(1):e1006868.
  • CRISPR/Cas9でIRF8を欠損させると、EBVの再活性化が顕著に抑制される。

[出典]
[背景]
  • 代謝物は細胞内の分子群の大勢を占め、タンパク質との相互作用を介して細胞過程を調節し、細胞の恒常性に主要な役割を果たしている。しかし、代謝物とタンパク質の相互作用の全体像、インタラクトーム、の解明は、タンパク質間インタラクトームやタンパク質とDNAのインタラクトームの解明に遅れをとっている。
  • ETZ ZurichのPaola Picottiらの研究チームはタンパク質限定分解(limited proteolysis, LiP)に質量分析を組み合わせた手法を開発し、酵母内在1,001タンパク質と栄養素の相互作用(Nature Biotechnology, 2014)やE. coli, S. cerevisiae, T. thermophilusおよびヒト細胞におけるのべ8,000種類以上のタンパク質の熱安定性(Science, 2017)を報告してきた。研究チームは今回、E. coli内在タンパク質と代謝物のインタラクトーム解析に取り組んだ。
[手法]
  • はじめに、ネイティブ条件で全細胞溶解液をプロテイナーゼK(PK)で処理して、構造に特異的なタンパク質断片を生成し、続いて、トリプシンでボトムアップ質量分析(LC-MS/MS)にかけるペプチドへと分解する。低分子の有無による質量スペクトルの変化から、低分子結合によるPKの切断部位の変化、ひいては、タンパク質の構造変化への推論が可能になる。
  • 著者らは今回この手法をLiP-SMap(これまでに、LiP LC-MS/MS Multiple Reaction Monitoring (LiP-SRM)やLiP-MSが使われていた)と、低分子の存在によって切断パターンが変化したタンパ質をputative metabolite binding proteins(MBPs)、量が変化したペプチドをconformotypic peptidesと呼んだ。
[LiP-SMapのベンチマーク]
  • 既知の相互作用件数が幅広い3種類の代謝物(600種類のATP;中間的なホスホエノールピルビン酸(PEP);15種類のL-フェニルアラニン(L-Phe))について2種類の濃度で解析し、ATP/PEP/L-Pheについて既知の結合特異性と整合するMBPsおよび新規MBPs(低濃度 162/12/2種類;高濃度231/129/41種類)を同定した。
  • 抗菌剤セルレニンが結合するタンパク質は唯一Fas2である。LiP-SMapは、セルレニン(cerulenin)に対するMBPが2,500種類のタンパク質の中でFas2唯一であることを示し、LiP-Smapが偽陽性を示す可能性が低いことも確認できた。
[代謝物-タンパク質相互作用の全体像]
  • 疎水性、分子量および電荷が広範囲にわたる20種類の代謝物(中心炭素代謝系の中間代謝物、4種類のアミノ酸、7種類のヌクレオシドホスフェート、3'-5'-環状アデノシン一リン酸(cAMP))を対象としてLiP-MS解析:代謝物-タンパク質相互作用1,678種類を推定;1,447種類が新奇(有機酸/糖リン酸が関与する相互作用それぞれ377/410種類を含む);新奇相互作用に関与するタンパク質のうち76種類がこれまで機能未知)
  • 推定相互作用の54%には文献を含む複数の裏付けが存在した。酵素の網羅的データベースBRENDAに存在しなかった推定相互作用が5.5%存在したが、その中には新奇相互作用も含まれると思われる。
  • プロテオームの25%が、20種類の代謝物のうち少なくとも1種類の代謝物と相互作用する。"コア・プロテオーム(core proteome)"を構成するさまざまな環境条件下で一貫して発現するタンパク質356 種類は、他のタンパク質よりも、MBPsに推定される頻度が有意に高い。
  • Conformotypic peptidesから推定した結合部位は、Protein Data Bankのタンパク質-代謝物複合体構造データベースLigand Expoの実験的に特定された結合部位に極めて近接;酵素の活性部位の3分の1は、複数種類の代謝物と相互作用可能(binding promiscuity)
  • 代謝物結合部位の43%が、活性部位以外に位置し、アロステリック作用または触媒作用を帯びている;フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPアーゼ)がPEPシンセターゼ調節因子PpsRとアロステリック相互作用し、PEPシンセターゼPpsAを調節することで、FBPの濃度に応じて解糖フラックスをスイッチする現象を同定
  • 内在代謝物がタンパク質の複合体/重合体のアッセンブリーに影響を与える現象も確認
[先行研究論文]

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