2018年06月

1.[ビデオ・プロトコル]多重なエンハンサーの同時同定と機能解析を可能にしたEnhancer-i
  • [出典] "Dissection of Enhancer Function Using Multiplex CRISPR-based Enhancer Interference in Cell Lines" Carleton JB, Berrett KC, Gertz J. J Vis Exp. 2018 Jun 2.
  • 同一遺伝子を対象とする複数のエンハンサーの相関解明を目指して開発されたEnhancer-iの詳細プロトコル;不活性化Cas9に、遺伝子上流の2箇所に対して2種類の転写抑制ドメインを作用させるSID4X-dCas9-KRABの融合タンパク質を利用
  • Enhancer-i論文:"Multiplex Enhancer Interference Reveals Collaborative Control of Gene Regulation by Estrogen Receptor α-Bound Enhancers" Carleton JB, Berrett KC, Gertz J. Cell Syst. 2017 Oct 25;5(4):333-344.e5. Published online 2017 Sep 27.
2.CRISPR-Cas遺伝子編集用の長いDNAテンプレートを着床前胚にエレクトロポレーションする法'TIE'
  • [出典] "TIE: A Method to Electroporate Long DNA Templates into Preimplantation Embryos for CRISPR-Cas9 Gene Editing" Bagheri H [..]  Peterson A. CRISPR J 2018 Jun 1.
  • これまで、Cas9エンドヌクレアーゼ、gRNAsおよびDNA修復テンプレートは、マイクロインジェクションによってもエレクトロポレーションによってもマウス胚へ送達可能であったが、長いdsDNAの送達はマイクロインジェクションに限られていた。カナダMcGill大学の研究チームは今回、CISPRシステムの要素を全て透明帯サブドメインに注入し、続いてエレクトロポーレションすることで、着床前胚に送達可能なことを示し、この手法を TIE (Transfection by Injection and Electroporation)と命名した。
3.染色体転座は、患者腫瘍細胞に特異的な環状融合RNAs (f-circRNAs)を生成する十分条件である
  • [出典] "Chromosomal translocation formation is sufficient to produce fusion circular RNAs specific to patient tumor cells" Babin L, Piganeau M [..] Brunet EC. iScience 2018 Jun 19.
  • CRISPR/Cas9により、未分化大細胞型リンパ腫 (anaplastic large cell lymphoma: ALCL)に見られるNPM1-ALK融合遺伝子の染色体転座を誘導し、STAT3/ERK/AKTを介した発癌過程を活性化することを見出した。また、CRISPR/Cas9によりde novo染色体転座と接合部位が異なるde novo f-circRNAsが生成されることを見出した。
  • 患者由来腫瘍細胞に見られるf-circRNAsが、CRISPR/Cas9染色体転座モデルにおいて、新たに生成された染色体転座から直接生成されることも見出した。
  • 「染色体転座・環状融合RNA・癌」関連論文:"Oncogenic Role of Fusion-circRNAs Derived from Cancer-Associated Chromosomal Translocations" Guarnerio J, Bezzi M, Jeong JC, Paffenholz SV, Berry K, Naldini MM, Lo-Coco F, Tay Y, Beck AH, Pandolfi PP. Cell. 2016 Aug 11;166(4):1055-1056
4.アーケアとバクテリアのタイプⅢ CRISPR-Cas遺伝子カセット隣接領域に保存されているタンパク質の網羅的探索から39種類の新たなcas遺伝子ファミリーを同定
  • [出典] "Comprehensive search for accessory proteins encoded with archaeal and bacterial type III CRISPR-cas gene cassettes reveals 39 new cas gene families" Shah SA, Alkhnbashi OS, Behler J, Han W, She Q, Hess WR, Garrett RA, Backofen R. RNA Biol. 2018 Jun 19:1-13.
  • タイプⅢ CRISPR-Casシステムのアクセサリタンパク質を探索し、CARF (CRISPR-associated Rossmann fold)ドメインを帯びたファミリーとともに、CARFドメインを持たないファミリーも発見し、その特徴とともにhttp://accessory.crispr.dkから公開
5.Listeria初のCRISPR-Casシステム発見とそのファージ耐性
  • [出典] "A functional type II-A CRISPR–Cas system from Listeria enables efficient genome editing of large non-integrating bacteriophage" Hupfeld M [..] Kilcher S. Nucleic Acids Res 2018 June 22.
  • L. ivanovii sups. londoniensisからタイプII-A CRISPR–Cas (LivCRISPR-1)を発見:1,078アミノ酸と小型;独特のPAM配列 NNACAC
  • LivCRISPR-1 cas9とtracrRNAをL. monocytogenesへcrRNAをコードするプラスミドとともに導入し、バクテリアDNAと侵入ファージゲノム切断を確認;ListeriaファージA511を、Staphylococcusのペプチドグリカンを標的として細胞壁の加水分解酵素リソスタフィンを発現するように改変し、Listeria菌とStaphylococcus菌の共培養において、双方を溶解
6.無翅昆虫マダラシミ(Thermobia domestica)のCRISPR/Cas9生殖細胞系列ゲノム編集による翅発生モデル作出
  • [出典] "CRISPR/Cas9-based heritable targeted mutagenesis in Thermobia domestica: A genetic tool in an apterygote development model of wing evolution" Ohde T, Takehana Y, Shiotsuki T, Niimi T. Arthropod Struct Dev. 2018 Jun 13.
7.酵母Scheffersomyces stipitisのゲノム編集と遺伝子発現抑制
  • [出典] "CRISPR-mediated Genome Editing and Gene Repression in Scheffersomyces stipitis" Cao M, Gao M, Ploessl D, Song C, Shao Z. Biotechnol J. 2018 Jun 19.
  • Ku70-Ku80をCRISPR技術でノックアウトすることでDSB修復のNHEJを抑制しHDR修復を相対的に亢進し、シキミ酸パスウエイ産物などの応用が期待される酵母のCRISPR/Cas9 HDRを介した遺伝子操作を実現。

1.組織/細胞型特異的受容体を介したCRISPR-Cas9のデリバリーで、細胞型特異的遺伝子編集を実現
  • [出典] "Receptor-Mediated Delivery of CRISPR-Cas9 Endonuclease for Cell-Type-Specific Gene Editing" Rouet R [..] Doudna JA. J Am Chem Soc. 2018 May 30;140(21):6596-6603. Published online 2018 April 18.;PubMed Central 2018 Jun 15 公開
  • SpCas9に細胞型特異的リガンドを結合したRNP -> 細胞型特異的受容体 -> エンドサイトーシス -> エンドソーマルエスケープ -> 核への移行 -> 細胞特異型遺伝子編集
  • crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/04/25 - 2. 標的細胞表面に存在する受容体を介したデリバリーにより、CRISPR-Cas9による細胞型特異的遺伝子編集を実現
2.修復用テンプレートの導入が不要な同一遺伝子の2つのアレルに2種類の異なる変異を帯びた複合ヘテロ変異体の修復法
  • [出典] "Correction of a Recessive Genetic Defect by CRISPR-Cas9-Mediated Endogenous Repair" Lucia S, Alessandra C, Michela L, Franco L, Paolo V, Marianna P. CRISPR J 2018 Jun 1.
  • 複合ヘテロ変異体の2種類の変異の中間のイントロン領域をCRIRPS-Cas9で切断することで、内在するHDRを誘導し、遺伝子変換または有糸分裂組換えを介して、修復用DNAを導入することなく、少なくとも一つの正常なアレルを回復可能なことを、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ (Hprt)遺伝子の複合ヘテロ変異体をモデルとして実証
3.[特許]N末端側とC末端側に二分割しインテインを介して一体化発現させる手法
4.[特許] Cpf1
5.CRISPRにより、ヒト化マウスに移植した患者由来血液からHIV DNAを除去
  • [出典] "Removal of HIV DNA by CRISPR from Patient Blood Engrafts in Humanized Mice" Bella R, Kaminski R [..] Khalili K. Mol Ther Nucleic Acids 2018 Jun 19.
  • HIV-1のLTRを標的とする多重化sgRNAsを帯びたCas9をレンチウイルスで送達することで、HIV-1を感染させたヒト末梢血単核球において、標的領域の削除を実現し、HIV-1陽性患者由来の末梢血単核球を移植したNOD-SCIDマウスの血中、脾臓、肺、肝臓からウイルスDNA断片除去を実現。
6.[Editorial]科学コミュニティーは、CRISPR研究開発の進展を、あらゆる関係者との共有に努めるべし
  • [出典] "The Democratization of CRISPR" Rodolphe B. CRISPR J 2018 Jun 1.
  • crisp_bio関連記事:CRISPRメモ_2018/06/16 - 1. [生命倫理・科学政策・科学技術]地球規模のゲノム編集'測候所' (Global Genome Editing Observatory: GGEO) の概念と制度設計
7.[Perspective]CRISPRワールドの基盤Addgene
  • [出典] "Enabling the Rise of a CRISPR World" Caroline L, Rodolphe B. CRISPR J 2018 Jun 1.
  • Addgeneは2013年以来 ~100,000 CRISPRプラスミドを~3,400研究室/75ヶ国以上に提供
  • AddgeneはCRISPR最新情報共有を支援

[出典] "Current CRISPR gene drive systems are likely to be highly invasive in wild populations" Noble C, Adlam B, Church GM, Esvelt KM, Nowak MA. eLife 2018 June 19. (bioRxiv Posted 2017 Nov 16)
  • 最近、現行の自己増殖型CRISPR遺伝子ドライブシステムは、ドライブ抵抗性アレルの生成を介して遺伝子ドライブの基本であるDNA切断が阻害されるために、野生集団に効果的に侵襲することが困難、とする報告が続いている。EsveltNowakらの研究チームは今回、蓄積されてきたデータをもとに構築した数理モデルで、この仮説を検証した。
  • 数理モデルは、これまでに報告された中で最も非効率的なドライブシステムでも、野生集団に高い侵襲性を示した。
  • 少数の遺伝子ドライブ個体が集団に局所的に侵襲すると、続いて、極めて低速な遺伝子流動を介して集団全体へと広がっていく。
  • したがって、自己増殖型CRISPR遺伝子ドライブは、マラリア予防のように標的生物種の集団全てに作用させる目的に適合する。
  • しかし、全米アカデミーズ報告書*にある空間を限定した野外実験 (confined field trial: CFT)は、想定外の集団へ拡がるリスクを伴うことに留意し、対策を取る必要がある。
  • *) Gene Drives on the Horizon - Advancing Science, Navigating Uncertainty, and Aligning Research with Public Values. The National Academies Press 2016
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[出典] "Trio deep-sequencing does not reveal unexpected mutations in Cas9-edited monkeys" Luo X et al. bioRxiv 2018 Jun 5.
  • CRISPR-Cas9を臨床に展開するにはオフターゲット編集の機構解明と対策が必要である。今回、ヒトの疾患を必ずしも再現しないげっ歯類モデルに替えて、非霊長類をプラットフォームとしてオフターゲット編集解明に取り組んだ。
  • ヒト常染色体劣性原発性小頭症 (a human autosomal recessive primary microcephaly gene: MCPH1)遺伝子のエクソン2とエクソン4を標的とするsgRNAsによるノックアウト実験の結果をWGS (全ゲノムシーケンシング)解析した。
  • SpeedSeq パイプラインを利用して予測した4,328箇所のオフターゲット編集候補サイトに変異見られず。
  • TrioDeNovoを利用して、今回の全ゲノムデータのトリオ解析と既報のカニクイザルのノックイン実験からのWGSのトリオ解析を行い、発生した少数のde novo変異がオフターゲット編集結果ではなく自然突然変異の結果であることを同定。
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[出典] "Potent Cas9 inhibition in bacterial and human cells by new anti-CRISPR protein families" Lee J, Mir A [..] Maxwell KL, Sontheimer EJ. bioRxiv 2018 June 20. > mBio 2018-12-04
  • Sontheimerらの研究チームは先行研究でバクテリオファージにコードされているCas9特異的anti-CRISPR (Acr)タンパク質を発見し、Acrが宿主バクテリアのCRISPR-Casシステム不活性化を介して免疫応答に対抗することを示し、Acrが進化に有利に働きこの種のタンパク質が広がったという仮説をたてた。
  • Sontheimerらは今回、anti-CRISPR associated (aca)遺伝子近接領域を探索するバイオインフォマティクスにより、先行研究で発見したNeisseria meningitidis Cas9 (NmeCas9)に対するAcrを同定し、さらに、タイプII-C CRISPR-Casシステムを帯びたHaemophilus parainfluenzaeSimonsiella muelleriにおいて、新たなAcrを同定した。
  • これらのAcrsは、H. parainfluenzaeS. muelleriのCas9オーソログをいずれも阻害し、また、NmeCas9も阻害したが、より遠縁のCas9は阻害しなかった。
  • Acrの特異性とCas9sの多様性は、共進化における軍拡競争を示唆する。
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