2018年08月

[出典]"IN DEPTH: In dogs, CRISPR fixes a muscular dystrophy" Cohen J. Science. 2018 Aug 31;"REPORT: Gene editing restores dystrophin expression in a canine model of Duchenne muscular dystrophy" Amoasii L [..] Olson EN. Science. August 30, 2018

背景
  • ジストロフィン遺伝子はX染色体に位置し、ジストロフィンタンパク質はジストロフィン遺伝子1コピーからでも発現する。したがって、1コピーの変異に対して少女にはバックアップが備わっているが、少年の場合はバックアップが無く、若年で歩行困難になり、平均して20台半ばで心臓と呼吸器の不全により死に至る。
  • DMD患者の少年の13%がエクソン45と50の間の領域に変異を帯び、そのために、エクソン51の読み枠が壊れている。2009年に、Royal Veterinary CollegeのRichard PiercyはDMDの兆候を呈するスパニエルにおいて、エクソン51の読み枠が壊れていることを同定していた。
概要
詳細
  • DMDの犬モデルの一種であり、ヒトDMD遺伝子の変異ホットスポットに対応するエクソン50を欠損しているdeltaE50-MD犬4頭に1月齢で、エクソン51のスプライス受容部位を標的とするsgRNA-51とCas9をそれぞれ組換えAAV9で送達した。
  • ジストロフィンタンパク質の発現を、2頭については筋肉内投与後6週で、他の2頭については静脈を介した全身投与後8週で、測定した。
  • 全身投与後、骨格筋ではジストロフィン・タンパク質のレベルが筋肉の種類に応じて正常ジストロフィン遺伝子の3~90%まで回復し(横隔膜では58%)、心筋では最も高い用量を施した場合に92%まで回復した。
  • CRISPR遺伝子編集による筋肉組織の改善も見られた。
IN DEPTHから
  • IN DEPTHの記事は、Olsonグループらの成果を簡明に紹介し、CRISPR/Cas9遺伝子編集によるDMD遺伝子治療が前進しているとしつつ、以下のような問題点も指摘した:
  • 今回の報告に対しては、例数が少ないことや、DMDの表現型のデータがほとんどないことを問題とみる研究者もいる。
  • 骨格筋は常に更新されるため必要とされる投与の繰り返しを、幹細胞でのジストロフィンタンパク質発現の回復により回避する工夫が必要である。
  • CRISPR遺伝子編集が発癌性変異を誘導するか見るために長期的観察が必要である。
  • 療法として認められたとしても、DMDによる筋肉の損傷は非可逆的なため、DMD発症早期に処方する必要がある。
関連ツイート

DMD関連crisp_bio記事

[出典]"Engineered CRISPR-Cas9 nuclease with expanded targeting space" Nishimasu H. [..] Zhang F, Nureki O. Science. 2018 Aug 30.

背景と概要
  • Casタンパク質の中で最も広く利用されているStreptococcus pyogenes由来Cas9(SpCas9)によるゲノム編集は、ゲノムDNA上のNGG配列に縛られている。すなわち、SpCas9は、NGGをPAM(プロトスペーサー隣接配列)として認識することで標的部位を切断する。
  • そこで、NGG縛りを緩めて標的可能領域を広げるために、SpCas9への変異導入によるPAM配列改変や、異なるPAM配列を認識するCasタンパク質の探索が試みられてきた(関連crisp_bio記事参照*)。
  • 西増ら東大、慶応大、阪大、Broad研、McGovern研ならびにMITの研究チームは今回、PAM配列NGをPAMとして認識するSpCas9変異体(SpCas9-NGと命名)を合理的に設計・作出し、その編集機能ならびに構造基盤を明らかにした。
  • Jinekらの先行研究において、SpCas9は、そのArg1333とArg1335でPAM配列NGGの2番目と3番目のGを認識することが明らかにされていた。そこで、研究チームは3番目のGとArg1335の間の塩基特異的相互作用を欠損させ、一方で、SpCas9とPAM二重鎖との間に塩基非特異的な相互作用を導入することで、SpCas9のNGG縛りを緩めることを試み、NG配列をPAMとして認識するSpCas9-NGに至った。
SpCas9-NGの樹立と機能
  • はじめに、野生型(WT)SpCas9にR1335A変異を導入した変異体がNGGの一種であるTGGに対して切断活性を示さないことをin vitroで確認した。
  • 次に、PAM二重鎖の周囲のLeu1111, Gly1218, Ala1322ならびにThr1337をアルギニンに置換することで、SpCas9変異体の切断活性が部分的に復活することを見出しR1335A/L1111R/G1218R/A1322R/T1337R変異体(以下、ARRRR)がTGGを帯びたプラスミドを効率的に切断することを確認した。
  • しかし、ARRRRの切断速度がWT SpCas9よりも遅いことから、先行研究からの知見を生かして、PAM二重鎖の糖‐リン酸主鎖と相互作用するD1135V、PAMの2番目のGと疎水性相互作用をするE1219F、ならびに、Arg1333とPhe1219 (E1219F)を安定にするR1335Vの変異も導入し、R1335V/L1111R/D1135V/G1218R/E1219F/A1322R/T1337R変異体 (以下、VRVRFRR)に至った。
  • TGN PAMsを帯びたプラスミドに対するVRVRFRRのin vitro切断活性を測定し、WT SpCas9より未だ切断速度は遅いが、TGA, TGTおよびTGCを伴う標的をより効率的に切断することを見出した。また、VRVRFRRの切断活性は概ねWT SpCas9とSaCas9よりも低いがAsCas12aおよびLbCas12aと同等であった。
  • In vitroアッセイでWT SpCas9がNGGを特異的に認識し、VRVRFRRがNGを認識することを確認した。VRVRFRRはNAN PAMsも認識したが、in vitroアッセイでその活性はTGN PAMsよりも低いことを確認した。
  • In vitroアッセイで、SpCas9-NGは、NGH PAMsを帯びた標的に対して、xCas9に優る認識と切断活性を示した。
SpCas9-NGの構造基盤
  • SpCas9-NG、sgRNAおよびTGG PAMを帯びた標的DNAからなる三者複合体の構造を2.7 Å分解能で決定し(PDB-5ZMH)、Arg1333とPAMの2番目のG(dG2*)との間の2本の水素結合、Arg1337(T1337R)と3番目のG(dG3*)との間の水素結合、Arg1111 (L1111R), Val1135 (D1135V)ならびに Phe1219 (E1219F)とPAM二重鎖の糖‐リン酸主鎖との相互作用などを同定した。
HEK293FT細胞内在NGN PAMsを標的とするゲノム編集
  • WT SpCas9は主としてNGGサイトおよび一部NGAサイトを切断indels誘導;NGGとNGAサイトは非認識
  • SpCas9-NGは、NGA, NGTおよびNGGサイトと、低率ではあるがNGCサイトを、切断indels誘導
  • xCas9は、NGHサイト全てについてSpCas9-NGよりも低い切断効率
  • GUIDE-seqで評価したEMX1VEGFAを標的とした場合のオフターゲット編集サイト数はWT SpCas9と同等;SpCas9-NGをeSpCas9に倣ってより高精度にしたSpCas9-NG-ESは、EMX1標的のオフターゲット編集を検出限界以下にし、VEGFA標的のオフターゲット編集を大きく低減
SpCas9-NGに基づくBase Editor
  • SpCas9-NG D10Aニッカーゼに活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)と融合させたSpCas-NG版Target-AID(以下、Target-AID-NG)の塩基編集(C-to-T変換)をNG PAMsを伴うヒトゲノム32ヶ所の標的サイトでTarget-AIDおよびxCas9-BE4と比較評価
  • Target-AID (nSpCas9–AID)は、NGGサイトを効率的に変換;NGAサイトは低率な変換;NGT/NGCサイトは無変換
  • Target-AID-NGは、NGCサイトでは低率であるが全てのPAMsについて塩基編集実現;poly-Cを含むオンターゲット・サイトの編集においてxCas9–BE4(xCas9 D10AニッカーゼとAPOBEC1)より高効率
2016-03-23 CRISPR関連文献メモ_2016/03/23(Cas9のPAM認識)

1. ヒト・バレット食道(BE)腫瘍オルガノイドを樹立:野生型とWnt活性変異型
[出典]"Modeling Wnt signaling by CRISPR-Cas9 genome editing recapitulates neoplasia in human Barrett epithelial organoids" Liu X [..] Meltzer SJ. Cancer Lett. 2018 Aug 22.
  • CRISPR-Cas9によりAPC遺伝子をノックアウトした患者由来オルガノイドが、自律的Wnt活性化を呈し、長期間培養が可能なことを確認
  • Wntシグナル伝達経路活性化BEオルガノイドは野生型に対して、組織学的異型、高増殖性・複製活性亢進、アポトーシス低減、ならびに、Ki67, c-mycおよびサイクリンD1の過剰発現、加えて、基底膜の破壊に至る浸潤が亢進
  • BE腫瘍をドライブする他のパスウエイについても、今回の手法により、不死化または癌細胞由来細胞モデルに見られるシグナル伝達におけるノイズの擾乱を受けない評価が可能。
2. CRISPR-C: ヒト細胞においてCRISPR技術により遺伝子と染色体を環状化
[出典]"CRISPR-C: circularization of genes and chromosome by CRISPR in human cells" Møller HD, Lin L [..] Regenberg B, Luo Y. Nucleic Acids Res. 2018 Aug 24. (bioRxiv 2018-04-19)
  • はじめに、二重蛍光バイセンサー・カセット(exogenous dual-fluorescence biosensor cassette, ECC biosensor)を作出し(原論文Figure 1引用左下図のA)とB)参照)、CRISPR-C 1
    一対のCRISPR/Cas9 gRNAsを介して切り出されたDNA断片が、主として両端の結合を経て、環状DNA(外来遺伝子由来および遺伝子間領域と遺伝子座由来)を形成する (CRISPR-C)ことを実証した。
  • CRISPR-Cにより、異なる遺伝子座においてサイズの異なる環状DNA生成が可能であり、第18染色体からの47.4メガベースのサイズの環状染色体作出も実現した。
  • 癌のほぼ半分は癌遺伝子とeccDNAsを帯びており、また、環状染色体が病因となる遺伝子疾患が知られており、CRISPR-Cはヒト疾患研究に有用である。CRISPR-Cはまた、染色体・ゲノム合成研究にも有用である。
3. AAV送達による中枢神経系のCRISPR-Cas9ゲノム編集
[出典]"Adeno-associated virus-mediated delivery of CRISPR-Cas9 for genome editing in the central nervous system" Nishiyama J, Mikuni T, Yasuda R. Neuron. 2017 Nov 15;96(4):755-768.e5. Online 2017 Oct 9.
  • Max Planck Florida Institute for Neuroscience の西山、三國ならびに安田らは先行研究で、CRISPR-Cas9発現ベクターと相同組換え修復(HDR)用のテンプレートを、マウス子宮内胎児の脳の神経前駆細胞にエレクトロポレーションすることで、精密な遺伝子編集を実現するSLENDR法を開発していた (関連crisp_bio記事:2017-04-19 SLENDR法 - マウス脳において、タンパク質細胞内局在をハイスループットかつナノスケールでマッピング)
  • 研究チームは今回、有糸分裂神経前駆細胞と分裂終了後グリア細胞において、AAVでHDRテンプレートを送達することでHDR過程を介した効率的な配列ノックインが可能なことを示し、vSLENDR法と命名した。
  • Cas9をノックインまたはCas9を発現するAAVを送達し、HDRをAAVで送達することで、器官培養in vitroに加えて、
  • ヒト神経変性モデルマウス脳in vivoでの内在タンパク質のタギングも実現
4. [概説]CRISPR/dCas9を介した細胞分化
[出典]"CRISPR/dCas9-mediated cell differentiation" Gong J, Tang D, Leong KW. Curr Opin Biomed Eng. 2018 Aug 24.
  • 再生医療に必要な細胞分化には、複数の転写因子それぞれにウイルスベクターを用意し、また、長時間の遺伝子過剰発現のためにウイルスベクター送達を繰り返す必要があった。
  • 近年、CRISPR-Casシステムによって、不活性なCas9タンパク質(dCas9)にエピゲノム調節因子または転写調節因子を融合し、gRNAで標的位置に誘導することで、内在遺伝子発現の活性化と抑制を簡便に制御することが可能になった。
  • CRISPR-dCas9に基づく手法、および、その幹細胞からの細胞分化または成熟細胞の直接変換を介した目的細胞作出への応用を概観し、再生医療と疾患モデリングへの応用を展望。
5.  [レビュー]CRISPR/Cas9による哺乳類ゲノム編集実験におけるオフターゲット編集と培養細胞・実験動物の不均一性が実験結果に与える影響
[出典]"Review: Strategies for controlling CRISPR/Cas9 off-target effects and biological variations in mammalian genome editing experiments" Kimberland ML [..] Lua Q. J Biotechnol. 2018 Aug 22.

6. [レビュー]CRISPR/Cas9ゲノム編集技術による癌ウイルス療法研究の動向
  • [出典]"Review: The implication of CRISPR/Cas9 genome editing technology in combating human oncoviruses" Gilani US, Memoona, Rasheed A, Shahid M, Tasneem F, Arshad MI, Rashid N, Shahzad N. J Med Virol. 2018 Aug 22.
7. [論説]CRISPR技術などによる遺伝子編集作物はこれまでのGMOの枠組みで取り扱うとした欧州連合司法裁判所 (ECJ)の裁定に対する反論に加えて科学者が行動する必要性を訴え
[出典]"CRISPR Craziness: A Response to the EU Court Ruling" Barrangou R. The CRISPR Journal. 2018 Aug 1.
  • 76億人(PopulationPyramid.net)の人々に囲まれて、800万人の科学者が研究に携わっている(UNESCO統計)。新たな技術による食糧問題などの地球規模の問題解決には、科学者が平均960人の人々からの理解と信頼を得ていく努力をするることが必要 (CRISPR Crazinessの中の一文を意訳し数字を改訂)。
8. 荘厳なる議論:CRISPRの勝利
[出典]"Pomp and Circumstance: Making the Case for CRISPR" Curchoe CL, Barrangou R. The CRISPR Journal. 2018 Aug 1.
  • 1982年に英国オックスフォード大学にて設立された威厳ある団体であるOxford Unionが2018年5月3日に主催した遺伝学討論会"This House Believes that Genetic Engineering Undermines the Nature of Humanity"に招待され、3ラウンドのディベートに参加した発生生物学者Carol Lynn CurchoeとCRISPR関連研究でガードナー国際賞も受賞した生物学者Rodolphe Barrangouのエッセイ。ディベートの結果は、2対1でゲノム編集賛成派が勝利
9.  [コメント]Cas9に対するヒトの免疫応答が投げかけたCRISPR遺伝子編集療法の課題は克服できる
[出典]"[Comment]Cas9 immunity creates challenges for CRISPR gene editing therapies" Crudele JM, Chamberlain JS. Nat Commun. 2018 Aug 29.
  • CharlesworthらのbioRxiv投稿の「ヒトに内在するCas9に対する適応免疫を同定」に対するコメント (関連crisp_bio記事 CRISPRメモ_2018/01/07 2. ヒトはSpCas9とSaCas9に対する抗体を帯びている
  • 一般的に、細胞内の外来タンパク質は細胞性免疫、特に、CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTLs)を介して、細胞死を誘導するが、外来タンパク質に対する抗体が直接に細胞死を誘導することはない。Charlesworthらが報告したCas9反応性CD8陽性T細胞は、インターフェロンγを分泌し細胞死を誘導することが示唆される。すなわち、ヒトの細胞性免疫が、CRISPR-Cas9が修復した細胞を破壊することを意味する。
  • AAVのような非炎症性ベクターを利用した遺伝子治療を施した動物モデルでは、未だ、Cas9に対する免疫応答がCas9を発現細胞を細胞死に誘導する例は見出されていない。したがって、Cas9に対する免疫の内在いかんにかかわらず、Cas9発現が形質転換した細胞を破壊するか否か定かではない。
  • また、仮に遺伝子治療の結果CTLが細胞死を誘導するとしても、抗Cas9 T細胞の影響を最小限に止める戦略が複数あり、この点で、遺伝子編集の分野は遺伝子治療の分野に学ぶことができる。遺伝子治療分野はこれまでに、ベクター、用量、標的組織、投与ルート、プロモーター、および免疫抑制を注意深く分析・調節することで、カプシドや外来遺伝子に対するCTLの問題を克服してきた。Cas9の発現を恒常的ではなく一時的に発現させてCTLの問題を回避する手法も今後の開発・改良を期待できる。
  • 免疫能を備えた大型動物モデルによる前臨床試験が必要であるが、遺伝子編集の未来に陰りは見えない。
10. 癌におけるBCL-2遺伝子依存性の網羅的マッピングから、BH3ミメティック感受性の決定因子を同定
[出典]"Systematic mapping of BCL-2 gene dependencies in cancer reveals molecular determinants of BH3 mimetic sensitivity" Soderquist RS [..] Wood KC. Nat Commun. 2018 Aug 29.
  • BH3ミメティックス (BCL-2ファミリータンパク質阻害剤)が抗がん剤として有望であるが、各種癌のBCL-2遺伝子依存性の理解は進んでいなかった。
  • デューク大学の研究チームは今回、BCL-2, BCL-XL, およびMCL-1の阻害剤およびその組合せに対する10種類の組織型の癌の感受性を判定し、CRISPR/Cas9スクリーンによって、BCL-wとBFL-1が、BH3ミメティクスの全ての組合せに対する耐性を亢進することを同定。
11. 高精度CRISPR/Cas9を介した遺伝子特異的ヒドロキシメチル化により、遺伝子発現を修復し腎線維症を抑制
[出典]"High-fidelity CRISPR/Cas9- based gene-specific hydroxymethylation rescues gene expression and attenuates renal fibrosis" Xu X [..] Zeisberg EM,  Zeisberg M. Nat Commun. 2018 Aug 29.
  • プロモーターの異常なメチル化による特定の遺伝子の発現抑制による臓器の線維化が進むが、その遺伝子を特異的に再活性化する療法は実現していなかった。
  • TET酵素は、メチル化されたDNAをヒドロキシメチル化を触媒し、遺伝子発現を再活性化する。University Medical Center Göttingenを中心とする研究チームは今回、Kleinstiverらが開発したhigh-fidelity Cas9 (HFCas9)のエンドヌクレアーゼを不活性化したdHFCas9に、TET触媒ドメイン (TET3CD)を融合し、gRNAを介して、in vitroにて、腎線維症において高度にメチル化されているRASAL1とKlothoを含む4種類の抗線維化遺伝子の再活性化を実現した。
  • さらに、in vivoにて、Rasal1を標的とするdHFCas9-TET3CDをレンチウイルスを介して間質細胞へ送達し、また、Klothoを標的とするdHFCas9-TET3CDを尿細管上皮細胞に送達し、いずれも目的遺伝子発現の再活性化と繊維化の抑制を実現した。
  • 2017-06-15 SpCas9-HF1:ゲノム編集の精度をさらに向上させるハイファイ(high-fidelity)CRISPR/Cas9
12. SIRT6のハプロ不全がIGFシグナル伝達を介して、BRAFV600Eメラノーマ細胞にMAPK阻害剤(MAPKi) に対す耐性をもたらす
[出典]"SIRT6 haploinsufficiency induces BRAFV600E melanoma cell resistance to MAPK inhibitors via IGF signalling" Strub T [..] Bernstein E. Nat Commun 2018 Aug 24.
  • クロマチン調節因子を標的とするCRISPR-Casスクリーニングにより、ヒストン脱アセチル化酵素SIRT6のハプロ不全によって、メラノーマ細胞がMAPKiに対する耐性を獲得することを同定
  • SIRT6の両アレル欠損ではなくハプロ不全が、クロマチンアクセシビリティを増してIGFBP2の発現と、IGFBP2遺伝子座のH3K56アセチル化を促進し、IGF-1受容体(IGF-1R)とその下流のAKTシグナル伝達を活性化
  • IGF-1RiとBRAFiを併用することでin vitroでもin vivoでもSIRT6ハプロ不全に由来する耐性を克服ダブラフェニブ とトラメチニブ の併用療法を受けたメラノーマ患者由来の試料において、IGFBP2がMAPKi耐性のバイオマーカーになり得ることを同定
13. Cas9を安定発現するヒト肝細胞癌細胞株と胆管癌細胞株の樹立
[出典]"Establishment of Cas9 stably expressed human hepatocellular carcinoma and cholangiocarcinoma cell lines" Zuo CX  ,  Bian XC,  Yang ZL ,  Feng HL,  Zhou FY,  Liu YQ. Zhonghua Zhong liu za zhi 2018 Aug 23;40(8):572-579. [Chinese Journal of Oncology
  • ヒトの肝臓癌細胞株6種類、胆管癌細胞1種類および胆嚢癌細胞1種類に、Cas9を発現する三種類のレンチウイルス(pLv-EF1α-Cas9-Flag-Neo, pLv-EF1α-Cas9-Flag-Puro, Cas9m1.1)を感染させ、 Cas9安定発現を実現

1. [特許]Cas9ゲノム編集と転写調節
[出典] "Cas9 Genome Editing and Transcriptional Regulation" US20180230450. 公開日 08/16/2018. 発明者 Chavez A, Tuttle M. 権利者 President and Fellows of Harvard College.
  • dCas9ではなく、gRNAの長さによってCas9の活性を調節し、同一Cas9による切断と転写調節を実現
  • 関連論文 "Cas9 gRNA engineering for genome editing, activation and repression" Kiani S, Chavez A, Tuttle M [..] Weiss R, Church G. Nat Methods. 2015 Nov;12(11):1051-4. Online 2018-03-19.
2. CRISPR/Cas9による免疫工学:樹状細胞のリンパ節走とシグナル伝達を解析する
[出典] "CRISPR/Cas9 Immunoengineering of Hoxb8-Immortalized Progenitor Cells for Revealing CCR7-Mediated Dendritic Cell Signaling and Migration Mechanisms in vivo" Hammerschmidt SI, Werth K [..] Bošnjak B, Förster R. Front Immunol. 2018 Aug 28.

Cas9-Hoxb8細胞の作出、維持、遺伝子改変および分化
(原論文Figure 12引用下図参照)Immunoengineering
  • Cas9トランスジェニックマウスの骨髄由来の細胞系マーカを発現していない (lineage-negative)細胞に、ドキシサイクリン(Dox)で発現を調節可能な転写因子Hoxb8とピューロマイシン(Puro)選択用カセットをレンチウイルスに形質転換し、mSCF, huIL-11, huFlt3L, mIL-3, Dox, およびPuroを添加した培養条件で非分化状態で数週間維持する。この長期間の培養期間を活かして、遺伝子の過剰発現やCISPR/Cas9によるノックアウトを複数回加えることが可能である。
  • 遺伝子編集の結果から、遺伝子改変が誘導された細胞をFACSで選別する。その上で、mSCF, huIL-11, huFlt3L, mIL-3, Dox, およびPuroをマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)に置換することで、それぞれ、in vitroでマクロファージまたは樹状細胞(以下, Cas9-Hoxb8 DC)へと分化させる。
Cas9-Hoxb8 DC
  • Cas9-Hoxb8 DCは、T細胞の増殖を誘導し、CCR7依存のリンパ節への遊走性を示した。
  • カルシウムセンサータンパク質GCaMP6を発現するCas9-Hoxb8 DCを利用することで、ケモカインに誘導されるカルシウムイオンのシグナル伝達の二光子顕微鏡によるin vivoリアルタイム可視化を実現。
3. トキソプラズマT. gondii RH系統の濃縮顆粒(dense granule)タンパク質の機能解析
[出典] "Functional Characterization of Dense Granule Proteins in Toxoplasma gondii RH Strain Using CRISPR-Cas9 System" Bai MJ, Wang JL, Elsheikha HM, Liang QL, Chen K, Nie LB, Zhu XQ. Front Cell Infect Microbiol. 2018 Aug 28.
  • トキソプラズマの侵入・増殖に、濃縮顆粒と呼ばれる小器官から放出されるタンパク質(dense granule proteins, GRAs)が必須とされている。今回、CRISPR-Cas9でGRA遺伝子17種類 (GRA11, GRA12 bis, GRA13, GRA14, GRA20, GRA21, GRA28-31, GRA33-38, ならびにGRA40)をノックアウトし(原論文Figure 1から引用した下図参照)、Toxoplasma gondii
    変異型と野生型の表現型と遺伝子発現プロファイルを比較した。
  • 個々の遺伝子のノックアウトがT. gondiiの病原性に与える影響は、in vitroでもBALB/cマウスin vivoでも、見られなかった。したがって、T. gondiiの病原性は他の GRA遺伝子またはGRA遺伝子間の協働によることが示唆された。遺伝子発現プロファイルは、T. gondiiの細胞周期とジェノタイプに依存することも見出した。
4. クローニング不要の簡便で効率的な遺伝子発現誘導CRISPRaの検証
[出典] "A simple cloning-free method to efficiently induce gene expression using CRISPR/Cas9" Fang L, Hung SSC, Yek J, Nguyen T, Khan S, Hewitt AW, Wong RCB. bioRxiv 2018 Aug 17.
5. CRISPR-Cas9ゲノム編集技術とCre-LoxP部位特異的組換えを組合わせて、哺乳類細胞における条件付き遺伝子ノックアウトを実現
[出典] "A Simple Combined Use of CRISPR-Cas9 and Cre-LoxP Technologies for Generating Conditional Gene Knockouts in Mammalian Cells" Noiman T, Kahana C. The CRISPR Journal. 2018 Aug 1.
  • 誘導可能なCreリコンビナーゼを帯びた細胞においてCas9-sgRNAによりFLAG標識した必須遺伝子をノックアウト、標的遺伝子にサイレンス変異を導入してsgRNAの標的にはならないfloxedアレルを組み込んでおくことで、ノックアウト遺伝子を相補し、後にCreの活性化によりサイレンス変異体を欠失させることで、必須遺伝子の機能を解析可能とする手法
6. CRISPR-Cas9遺伝子編集療法によって生じるHIV-1のサブタイプに特異的なオフターゲット編集の予測
[出典] "Prediction of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Subtype-Specific Off-Target Effects Arising from CRISPR-Cas9 Gene Editing Therapy" Link RW, Nonnemacher MR, Wigdahl B, Dampier W. The CRISPR Journal. 2018 Aug 1.
  • HIV-1の5'末端long terminal repeat (LTR)を標的とするCRISPR-Cas9がもたらすオフターゲット編集をCRISPRseekでin silico解析;サブタイプA, B, C, D, F, GおよびOの5'LTR配列35種類をテンプレートとする11,959gRNAのオフターゲット編集を評価し、その96.40%はオフターゲット編集が発生しないと判定
7. Sox遺伝子の遠位(1~Mb)に位置する組織特異的エンハンサー複合体をCRISPR/Cas9技術などで同定
[出典] "Combinatorial CRISPR/Cas9 Approach to Elucidate a Far-Upstream Enhancer Complex for Tissue-Specific Sox9 Expression" Mochizuki Y, Chiba T, Kataoka K, Yamashita S, Sato T, Kato T, Takahashi K, Miyamoto T, Kitazawa M, Hatta T, Natsume T, Takai S, Asahara H. Dev Cell. 2018 Aug 23.
  • SPY-box 9 (SOX)は軟骨形成を調節するマスタ転写因子であり、屈曲肢異形成症(acampomelic campomelic dysplasia, ACD)患者において、SOX9の上流~1-Mbに位置するブレイクポイントに起因するハプロ不全が報告されている。医科歯科大、日本医科大、慶応大ならびに産総研の研究チームは今回、SOX9の上流~1-Mbに位置し、転写因子Stat3で制御されるマウスの肋軟骨部位に特異的なエンハンサー(Rib Cage Specific Enhancer, RCSE) を同定した。
  • CRISPR/Casシステムを初代肋軟骨細胞に送達し、クロマチン免疫沈降とNGS (ChIP-seq)によりRCSE候補を同定し、抑制型クロマチン構造を形成する複合体Sin3AとdCas9を融合したエピジェネティック抑制と3C法によってRCSEを特定した。
  • CRISPR/Cas9でRCSEを欠失させたマウスはACD様表現型を呈した。
  • CRISPR/dCas9-ChIp-質量分析により、STAT3がSox9エンハンサーをトランス活性化する因子であると特定した。
  • また、RCSEが肋軟骨特異的であることもX-gal染色体法により確認した。

[出典]"Single Live Cell Monitoring of Protein Turnover Reveals Intercellular Variability and Cell-Cycle Dependence of Degradation Rates" Alber AB, Paquet ER, Biserni M, Naef F, Suter DM. Mol Cell 2018 Aug 23.

[概要]
  • 正常な生細胞ではタンパク質の合成と分解とが同時進行しつつもプロテオームが然るべく制御されている。
  • 今回、スイスEPFLの研究チームはマウスES細胞において、40種類の内在タンパク質を対象として、その合成速度と分解速度をトランスクリプトミクスに依存することなく直接測定し、タンパク質の合成と分解がプロテオームを制御する分子機序を論じた。
[ツール]
  • 成熟時間が短い (<10分) sfGFPと成熟時間が長い (>4時間) mOrangeを融合することで哺乳類細胞に最適化した (mammalian-cell-optimized)タンデム蛍光タイマー (tandem fluorescent protein timers)(以下、MCFT)を作出し、コンピュータ・シミュレーションと実証実験に基づいて、合成速度と分解速度の同時測定を検証;内在タンパク質mRNAにMCFT mRNAを融合し、タンパク質を発現させ、速度を測定
  • SNAPタグとHaloタグの二重蛍光タグに基づくパルス-チェイス・タンパク質ラベリング(pulse-chase protein labeling)とタイムラプス・イメージングを利用したタンパク質分解速度測定も実施
[結果]
  • G1期とG2期の間でタンパク質合成速度が大きく変動する。細胞分裂時に多くのタンパク質の分解速度が低下し、~40%のタンパク質のレベルが安定する。
  • ES細胞においても線維芽細胞でも、細胞ごとにタンパク質分解速度が大きく変動するが、同一細胞内では異なるタンパク質の半減期が共変動する。
  • また、細胞ごとのタンパク質分解速度とタンパク質合成速度とが正に相関し、結果的に、細胞ごとのタンパク質発現レベルの変動が抑制される
  • タンパク質分解速度の細胞間の変動は、プロテアソームの因子であるプロテアソームユビキチン受容体ADRM1の発現レベルと相関し、遺伝子特異的なタンパク質分解速度とは独立である。

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