2019年01月

[出典] "A Functional Mini-Integrase in a Two-Protein-type V-C CRISPR System" Wright AV, Wang JY, Burstein D, Iavarone AT, Banfield JF, Doudna JA. Mol Cell. 2019-01-29. 2019-02-21;73(4):727-727.e3.

背景
  • CRISPR-Cas獲得/適応免疫機構は外来DNA断片を宿主ゲノムのCRISPR遺伝子座に格納すること(adaptation/適応過程)で成立し、CRISPR遺伝子座は繰り返し配列の間に外来DNA断片由来のスペーサを"記憶"するCRISPRアレイの形をとっている。
  • ほとんどのCRISPRシステムの適応過程がCas1とCas2に依存しているが、タイプV-CとV-Dのシステムの多くはcas2遺伝子を欠いており、CRISPR遺伝子座のリピート配列とスペーサ配列が他のCRISPRシステムに比べて短い。
  • Casタンパク質の進化系統解析から、Cas1は、casposonと命名されたDNAトランスポゾンに由来することが示唆されている。
  • タイプV-CとタイプV-Dはこれまで、メタゲノム解析によって、培養不可能な微生物から見出されている。
成果
  • J. A. Doudnaらは今回、JGIのIMG/Mデータベースのメタゲノムデータを改めて解析し、マウス盲腸由来と甲虫の腸由来のメタゲノムからそれぞれ新奇なV-CシステムとV-Dシステムを同定し、cas2遺伝子欠損と短いスペーサを確認した。
  • 今回のV-CとV-DからのCas1を精製し、E. coli由来Cas1-Cas2複合体インテグラーゼをコントロールとして、33-bpまたは18-bpの長さのDNAを基質としてそのインテグラーゼ活性をアッセイし、タイプV-C Cas1が18-bp DNAに対して活性を示すことを同定した。
  • 続いて、15 -/35-bpの2種類のプロトスペーサを対象とする実験から、タイプV-C Cas1がミニ・インテグラーゼ (mini-integrase)として単独で、17-bpから19-bpの比較的短いDNA断片の獲得・格納を実現することを同定した。
  • ミニ・インテグラーゼはin vitroでプロトスペーサを多くのオフターゲット部位に組み込み、これを排除する宿主因子や分子機構がin vivoでの適応過程に関与していることが示唆された。
  • Cas1は適応過程におけるプロトスペーサ結合時に、他の多くのCRISPR Casシステムと異なり、Cas2に拠るブリッジを介さず4量体を形作る。この違いが、タイプV-CとV-Dのスペーサを他のシステムよりも短くすることが示唆された。
  • 進化系統樹から見て、ミニ・インテグラーゼは、Cas2がシステムに加わる以前の祖先型Cas1に相当するとした。

[出典] "sgRNA Sequence Motifs Blocking Efficient CRISPR/Cas9-Mediated Gene Editing" Graf R, Li X, Chu VT, Rajewsky K. Cell Rep. 2019-01-29.

Max Delbrück Center for Molecular MedicineとBerlin Institute of Healthの研究チームの報告
  • これまでに報告されたsgRNA活性のデータセットから、非効率なsgRNAにTT-およびGCC-モチーフがほぼ特異的に存在することを同定した。
  • これらのモチーフは、標的配列の3'末端でPAM近位4塩基に対合する20塩基sgRNAの17-20塩基内に位置する。
  • Lamin B1遺伝子座をモデルとして、CDSの3'末端に、モチーフを帯びた、または帯びていないsgRNA標的配列とGFP配列をノックインし、CRISPR/Cas9によるノックアウト実験を行い、モチーフがノックアウト効率を一桁下げることを確認した。
  • 2種類のモチーフが遺伝子編集の効率を下げる分子機構の解明も試み、TT-モチーフを帯びたsgRNAsはウイルスベクターからの発現が非効率なことを介してノックアウト効率低下をもたらし、GCC-モチーフを帯びたsgRNAsはin vivoで標的部位へのアクセスが阻害されることを介してノックアウト効率低下をもたらすことを示唆する結果を得た。
  • TT-モチーフの問題は、ウイルスベクターによらないデリバリーと発現法を選択するか、RNAスキャフォールドに変異 (スキャフォールド5'末端における4つのTうち5番目または2番目と3番目をAに変換)を導入することで回避可能である。

[出典] "Engineering of high-precision base editors for site-specific single nucleotide replacement" Tan J, Zhang F, Karcher D,  Bock R. Nat Commun. 2019-01-25.
[関連crisp_bio記事] 2020-02-05 BE3の高精度化 (2) - 標的可能領域拡大と位置特異性付加

背景
  • これまでに開発された種々のBEは目的としていない塩基の編集そしてまたは多重塩基の編集を誘導し、標的の選択性が十分でない。例えば、C-to-T BEは4-5 nt (システムによっては9-nt)のウインドウ内のCを変換する。一方で、アルツハイマー病関連遺伝子APOE4やβサラセミア関連HBB遺伝子には、治療標的変異を含むウインドウ内に多重のCsが存在する。このため、BEの臨床応用を目指してウインドウを狭める工夫がされてきたが、未だ、酵素活性の低下や標的配列依存性の課題を伴っている。
成果
  • MPIの研究チームは今回、C-to-T変異を実現するシチジン・デミナーゼBEを対象として、デアミナーゼ・ドメインとCas9ドメインのリンカー配列をシステマティックに改変・評価し、デアミナーゼからBEの活性に不必要な配列を削除することで、ウインドウを狭めて、特定のサイトの単一シチジンだけを高効率で編集する高精度なBEを実現した。
  • 具体的には編集効率を損なうことなく高精度な1塩基編集を、リンカーの長さを固定したBE3-PAPAPAPと、C末端を短縮したウミヤツメ由来のAIDホモログを利用するnCDA1Δ-BE3にて実現した。前者は主として-14から-16のウインドウ内の編集を、後者は主として-18での編集を達成した (APOBEC1またはCDA1をSpyCas9に結合したBE3コンストラクトと、CDA1のC末端削除の効果について、それぞれ原論文Fig. 2とFig. 5を引用した下図左右を参照)。
Fig. 2 Fig. 5
関連crisp_bio記事

1. ヒトはCas9に免疫応答する
[出典] "Identification of preexisting adaptive immunity to Cas9 proteins in humans" Charlesworth CT [..] Weinberg KI, Porteus MH. Nat Med. 2019-01-28.
 関連crisp_bio記事
2. CRISPRを利用したレコーダーで、精密な細胞系譜を再構成することが果たして可能なのか?
[出典] "Is it possible to reconstruct an accurate cell lineage using CRISPR recorders?" Salvador-Martínez I, Grillo M, Averof M, Telford MJ. eLife. 2019-01-28.

[出典]"Targeted Cleavage and Polyadenylation of RNA by CRISPR-Cas13" Anderson KM, Poosala P, Lindley SR, Anderson DM. bioRxiv. 2019-01-26.

背景と概要
  • 真核生物内でのmRNAとlncRNAsの転写後切断と3'末端のポリアデニル化は、~20種類のタンパク質の超複合体によって制御されている。ポリアデニル化は、RNA転写物の安定化、核輸送、および翻訳効率を調節する。ヒトRNA転写物の半分以上が、多重なポリアデニル化シグナル配列を帯びており、細胞の発生と分化の過程で選択的切断とポリアデニル化を受ける。選択的切断とポリアデニル化は遺伝子発現を調節する重要な分子機構であり、3'末端の欠陥は多様なヒト疾患の病因となる。
  • University of Rochester School of Medicine and Dentistryの研究チームは今回、不活性化したCas13 (dCas13)に単一の哺乳類ポリアデニル化因子を融合することで、哺乳類細胞におけるRNAの部位特異的切断とRNAのポリアデニル化を実現し、この手法をPostscriptr命名した。Postscriptrは、ゲノムを改変することなく遺伝子発現の調節を可能にし、ヒトRNAプロセッシングの異常に起因する疾患の療法へと展開可能である。
詳細
  • 研究チームは、Prevotella sp. P5-125由来タイプⅥ-B CRISPRのエフェクターCas13bの触媒活性を不活性化したdPspCas13bに、3種類のポリアデニル化因子 (CPSF30; WDR33; Nudix hydrolase 21, NUDT21)を融合し、それぞれの機能を評価した。
  • タンパク質の検出用にN末端に、立体障害を回避するための長いフレキシブルなペプチドリンカー[GGGGSGGGGS]を介して、3x FLAGエピトープタグを融合した。さらに、核局在化シグナル (NLS)配列の核局在化性能を比較した結果、酵母のTy1レトロトランスポゾン由来の二成分NLSを選択し、dPspCas13b融合タンパク質の安定した核移行を実現した。
  • レポーター遺伝子として、11本の反平行βストランド (#1-311)からなるβバレル構造の蛍光タンパク質superfolder GFPを元にした"sfGFP(1-10)|14aaのリンカー(L)|sfGFP11"のコンストラクトを設計し、sfGFP(1-10)|L|sfGFP11の構成が維持されていればsfGFPの蛍光が観察可能になり、sfGFP11が分離されるとsfGFPが蛍光を発しないsfGFPapa (apa=alternative cleavage and polyadenylation)と、さらにポリアデニル化したレポーターsfGFPapa-pAを作出した。
  • このレポーターを利用してアフリカミドリザル腎由来COS7細胞株において、dPspCas13b-NUDT21の融合タンパク質だけがRNA切断とポリアデニル化活性を示すことを同定した。さらに、このPostscriptrが、HEK293細胞株において、ステロール調節配列結合タンパク質1 (SREBP1)のmRNAを、内在するイントロン性ポリアデニル化シグナル配列 (PAS)で切断しポリアデニル化することを見出した。

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