2019年08月

[出典] "Restore natural fertility of Kitw/Kitwv mouse with nonobstructive azoospermia through gene editing on SSCs mediated by CRISPR-Cas9" Li X, Sun T, Wang X, Tang J, Liu Y. Stem Cell Res Ther. 2019-08-24.
  • 広州医学院第一附属医院とInstitute of Zoology (北京)の研究グループがex vivoでのCRISPR-Cas9遺伝子編集を介したnonobstructive azoospermia (NOA)の治療法の可能性を示した。
  • 14日齢のKitw/Kitwvマウスの片側の精巣から変異精原幹細胞 (spermatogonial stem cells: SSCs)を分離し、in vitroで増殖し、KitwvサイトのC-to-T点変異をCRISPR-Cas9とドナーDNAを介して修復し、修復に成功したSSCsを分離・増殖、残していた精巣に移植した結果、完全な精子形成が実現した。
  • 変異修復マウスと野生型マウスの交配から、野生型Kit遺伝子またはKitw変異型遺伝子を帯びた健康な胎仔が得られた (原論文Fig. 1引用下図参照)。NOA
男性不妊関連crisp_bio記事

[出典] "Recovery of the non-functional EGFP-assisted identification of mutants generated by CRISPR/Cas9" Ren C [..] Liang Z. Plant Cell Rep. 2019-08-24.

 Institute of Botany (北京)の研究グループは今回、標的細胞からのDNA抽出・解析不要のスクリーン法を開発し、フィトエン不飽和化酵素遺伝子 (PDS)を標的モデルとし、Nicotiana tabacumとブドウ細胞でその性能を実証した。
  • nEGFPは、EGFPイタの5'末端"ATG"開始コドン直下にsgRNAとPAMを挿入し、プロモーター(35S)に連結した構成である。
  • 35S-nEGFPベクタを植物細胞に導入した場合と、35S-nEGFP-ターミネーター (NOS)-Atu8g-sgRNASを導入した場合を比較し、前者では蛍光が発生せず、後者で蛍光が発生することを確認した。
  • 蛍光を示した細胞の90%以上が変異細胞であることを確認した。
  • nEGFPの導入がCas9とsgRNAの活性を損なわず、また、細胞を障害しないことも確認した。

[出典] ”Structural insight into multistage inhibition of CRISPR-Cas12a by AcrVA4” Peng R, Li Z, Xu Y [..] Shi Y, Gao GF.PNAS 2019-08-29.

背景
 Lachnospiraceae bacterium Cas12a (LbCas12a)によるヒト細胞におけるゲノム編集がanti-CRISPRタンパク質AcrVA4によって阻害されることが報告され、続いて、生化学的解析と構造解析からその分子機序と構造基盤の解明も進んできた [1-3]。

成果概要

  • University of Chinese Academy of Sciences, CAS Institute of Microbiologyなどの中国の研究グループは今回、改めてクライオ電顕法によりLbCas12a-crRNA: AcrVA4複合体の構造を再構成し、多段階の過程からなり先行研究の結果とも整合する分子機序を提案した (原論文Fig. 6の分子機構モデル図参照)。
  • LbCas12a-crRNA-AcrVA4複合体構造には~90%のform A (化学量論比 2:1)と~10%のform B (化学量論比 2:1)の2種類が見られた (それぞれ3.25 Åと4.10 Åの分解能の構造がEMD-0704/6KL9とEMD-0705/6KLBとしてEMDB/PDBに登録された [2019-08-31時点では非公開])。
3段構えの阻害
  1. AcrV4は、LbCas12a-crRNA複合体が標的dsDNAに結合前に、crRNAの標的dsDNAへの結合を不可能とするコンフォメーションに固定する。
  2. AcrV4は、LbCas12a-crRNAがdsDNAに結合しR-ループが形成された状態でこの複合体に結合し、LbCas12aがdsDNAを切断する前にdsDNAを複合体から遊離させる。
  3. LbCas12a-crRNAがdsDNAを切断後に、LbCas12aに結合し、LbCas12aの活性を封じ込める (酵素リサイクリングを阻害する)。
他のAcrsによる標的Casシステムの阻害機序
  • AcrIF1は、サーベーランス複合体のコンフォメーションを局所的に改変してスペーサと標的配列の 塩基対合を立体障害する。
  • AcrIF2, AcrIF10, AcrIIA2およびAcrIIA4は、dsDNAの構造を模倣して、dsDNAのエフェクタ複合体への結合を阻害する。
  • AcrVA1は、crRNA (スペーサ)の3’末端切断により障害する。
  • AcrVA5は、Cas12aのPIドメインをアセチル化することで、dsDNA結合を立体障害する。
[引用crisp_bio記事]

[出典] "Anti-CRISPR-Associated Proteins Are Crucial Repressors of Anti-CRISPR Transcription" Stanley SY [..] Davidson AR. Cell 2019-08-29. ; [crisp_bio 2019-11-07追記] [in Brief] Anti-anti-CRISPR. Tang L. Nat Methods. 2019-10-31

背景
  • ファージはanti-CRISPR (Acr)タンパク質を発現することで宿主のCRISPR-Casシステムを阻害し宿主細胞内で生存する。Acrタンパク質をコードするacr遺伝子のほとんどが、ヘリックスターンヘリックス (HTH)モチーフを帯びたタンパク質をコードする保存性の高いanti-CRISPR-associated(aca)遺伝子に隣接している。このことから、aca遺伝子は、ゲノム配列からのacr遺伝子探索の手がかりとして利用されている。
  • Acaタンパク質の機能は不明であったところ、Acrタンパク質とAcaタンパク質の関係について、University of Otagoの研究グループが、Acaタンパク質がacr遺伝子発現の自己調節因子として機能すると2019-08-20にNAR誌に発表 [1]していた。
成果
  • U.  TorontoとUCSFなどの研究グループは今回、Pseudomonas aeruginosa phage JBD30をモデルとした解析から、Acaタンパク質がacr遺伝子の転写を抑制するとの論文をCell誌に発表した (Cell論文は2019-07-25に受理)。
  • ファージは宿主細胞に侵入すると同時に、cr遺伝子のプロモーターによってacr遺伝子の転写が急速に進み、Acrタンパク質が宿主細胞内に蓄積され宿主のCRISPR免疫応答に対抗するが、一方で、ファージ自身を破壊する。
  • 一方で、anti-CRISPRオペロンにコードされているaca遺伝子からのAcaタンパク質が、acr遺伝子のプロモーターに作用しacr遺伝子の転写を抑制することを同定した。
  • Acaが欠損していると、aca遺伝子の下流に位置している遺伝子の転写プロファイルが改変され、ファージの形態形成が損なわれることで、ファージの生存が脅かされるに至る分子機序が示唆された。
  • すなわち、Acaがanti-anti-CRISPRとしてacr遺伝子の転写を抑制することが、CRISPR-Casシステムの有無とは独立に、ファージの生存に必須であることが示唆された。

[出典] "Genetic manipulation of cell line derived reticulocytes enables dissection of host malaria invasion requirements" Satchwell TJ, Wright KE [..] Baum J. Nat Commun. 2019-08-23.
  • U. Bristolと Imperial College Londonなどの研究グループは今回、不死化ヒト赤血球細胞株Bristol Erythroid Line Adult (BEL-A) からin vitro分化した網状赤血球に、マラリア原虫Plasmodium falciparumが侵入し、分化することを見出した。
  • その上で、CRISPR-Cas9による受容体のノックアウト実験と、レンチウイルスを介した野生型受容体とその短縮型の発現実験に基づいて、P. falciparumの侵入にベイシジンの細胞質内ドメインが必須であり、シクロフィリンBが必須ではないことを同定し、BEL-Aからはじまるこの実験系が、マラリア原虫感染機構の解明に有用であることを示した。

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