2019年12月

[出典] Engineering CRISPR Interference System to Repress Class 1 Integron in Escherichia coli". Lia Q [..] Shi L, Tian P. Antimicrob Agents Chemother. 2019-12-23.

 華南理工大学、北京化工大学ならびに曁南大学の研究グループが、大腸菌をモデルとして
  • 表題の手法で抗生物質の50%阻害濃度 (IC50)が顕著に低減することをAlamarBlue®マクロプレート細胞生存率測定アッセイで確認した:トリメトプリムとスルファメトキサゾールのIC50が、それぞれ8分の1と32分の1に低減
  • RT-qPCRにより、一連の抗生物質耐性遺伝子 (dfrB2sul1、intI1)の転写レベルが、sgRNAに依存するが、84-96%低減した
  • コンジュゲーション・アッセイによって抗生物質耐性遺伝子 (ARGs)の水平伝播が1000分の1に低減した
  • このCRISPRiシステムは安定であり、可逆的に作用し、誘導剤の濃度によって作用を調整可能である。

[出典] High-frequency random DNA insertions upon co-delivery of CRISPR-Cas9 ribonucleoprotein and selectable marker plasmid in rice. Banakar R [..] Wang K. Sci Rep. 2019-12-27.  

 CRISPR-Cas9をRNPの形で送達するとCas9-sgRNAのゲノムへの組み込みを回避しオフターゲット編集が抑制されるメリットがあるが、RNPが導入された植物細胞を選択するためにマーカ遺伝子も送達する必要がある。
 Iowa State Universityの研究グループは今回、イネのフィトエン不飽和化酵素 (rice phytoene desaturase gene; OsPDS)遺伝子編集をモデルとして、CRISPR-Cas RNPとマーカ遺伝子の送達法3種類を比較した。
  • パーティクル・ガン法によるRNP/マーカ遺伝子の同時デリバリ、パーティクル・ガン法によるマーカ遺伝子のデリバリ、および、アグロバクテリウム法によるデリバリの3種類を比較した。
  • いずれの手法でもOsPDSの標的部位へのindels導入に成功したが、パーティクル・ガン法ではいずれも、プラスミド由来DNA断片および比較的稀であるが染色体由来のDNA断片が、標的部部位に高頻度 (> 14%)で挿入されることを見出した。
  • 一方で、アグロバクテリウム法による送達はランダムなDNA断片挿入を伴わずまたT-DNAの挿入も見られなかった。
  • 本研究は植物遺伝子編集にあたり、デリバリー法の選択と編集結果のスクリーニングが重要であることを示した

[出典] Upgrading of efficient and scalable CRISPR–Cas-mediated technology for genetic engineering in thermophilic fungus Myceliophthora thermophila. Liu Q, Zhang Y [..] Tian C. Biotechnol Biofuels. 2019-12-23.
  • 天津工业生物技术研究所の研究グループが、Acidaminococcus sp. Cas12aとcrRNAのアレイを採用することで、バイオマスからの有用物質生産菌として期待されるM. thermophilaの多重遺伝子の効率的な同時編集を実現した。
  • また、選択マーカをCas12a HDRの標的とすることで、neobarの2種類のマーカだけをピンポンのように交互に入れ替えて利用していく手法を開発し、セルラーゼ生合成に関与する9種類の遺伝子の編集を、2種類の選択マーカを利用することで形質転換3ラウンドで実現した。この9重変異体はセルラーゼの生成/活性を野生型のそれぞれ9.0倍/18.5倍まで向上させた。
  • CRISPR-Cas9でも同一手法の編集を行い、Cas12aとCas9を相補的に利用可能なことを確認し、これを CRISPR–Cas-assisted marker recycling technology (Camr technology)と称した。

[出典] Method of Treating Diseases Associated with Elevated KRAS expression using CRISPR-GNDM system
  • 公開日:2019-12-12 US20190376088A1; 2018-08-16 WO2018147343A1 
  • 発明者:Yamagata T, Qin Y, Morita H, Akbulut T, Thompson IR. 
  • 権利者:EdiGENE (エディジーン、2019年8月28日モダリスへ社名変更)
  • 注:クリスパー・ガンダムはCRISPR-GNDMに由来し、GNDMはGuide Nucelotide Directed Modulationに由来する;"dCas9/dCpf1 + KRAB"[*]によるKRAS遺伝子発現抑制 (下図はWikipedia "CRISPR interference"から引用したCRISPRiとCRISPRa模式図)CRISPRi:a
[CRISPRiとKRAS編集関連crisp_bio記事]

[出典] Specificity Assessment of CRISPR Genome Editing of Oncogenic EGFR Point Mutation with Single-Base Differences. Bae T, Kim H  [..] Lee SH, Ham BJ, Hur JK. Molecules. 2019-12-22

 肺癌において活性化しているEGFRには19種類のエクソン欠損と21種類のミスセンス置換エクソンが知られており、EGFR変異を帯びた肺癌に対して一般的な化学療法は奏功せず、EGFRを標的とするゲフィチニブやエルロチニブは新たな変異を誘導し耐性が発生する問題を伴っている。

 慶熙大学校、KRIBBならびに高麗大学校の研究グループは今回、発癌性EGFR点変異、2573T > G (L858R)、の修復を表題の手法で実現した (Figure 1引用下図参照)。Figure 1
すなわち、上図のCの下段の(1)と(2)のgRNAにあるようにT > Gの点変異を、SpCas9のPAM配列である5'-NGG-3'に取り込むようなgRNAを設計することで、T > Gの点変異そのものを標的とするgRNAよりも、精密な修復を実現した。本手法は、変異型アレルとの違いが1塩基である野生型アレルには影響を及ぼさず、また、オフターゲット作用はゲノムワイドで見られなかった。

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