1. ストレプトコッカス・ミュータンスのCas9からCRISPRiシステムを実現
[出典] Repurposing the Streptococcus mutans CRISPR-Cas9 System to Understand Essential Gene Function. Shields RC, Walker AR, Maricic N, Underhill SAM, Burne RA. bioRixv. 2019-10-02.
  • う蝕の原因菌ストレプトコッカス・ミュータンス (S. mutans)の必須遺伝子または増殖を可能にする遺伝子 (以下、増殖遺伝子)が最近ゲノムワイドスクリーンによって~300種類同定された。
  • University of Floridaの研究グループは今回、dSpSas9に基づくCRISPRiに替えて、S. mutans UA159ゲノムにコードされているSmuCas9の不活性化版dSmuCas9に基づくキシロース誘導性CRISPRiによる必須遺伝子/増殖遺伝子の機能解析が可能なことを示した。
  • dSmuCas9 CRISPRiの活性は5'NGG-3' PAMで最も高く、5'-NAG-3' PAMについてもある程度の活性を示した。また、dSmuCas9 CRISPRiは、2/3塩基ミスマッチおよびsgRNAの3'末端領域における1塩基ミスマッチが存在する標的に対しては不活性であった。
  • 253種類の必須遺伝子/増殖遺伝子候補を標的とするsgRNAsの77%がS. mutansの成長を抑制した。
  • 細胞壁グリコ多糖 (ラムノース・グルコース多糖: RGP)生合成経路を標的とするCRISPRiがS. mutansの細胞壁の異常と病原性の低減を誘導することも見出した。
2. 標的遺伝子にランダムに誘導した劣性致死変異をCRISPRaにより迅速同定
[出典] A method for rapid selection of randomly induced mutations in a gene of interest using CRISPR/Cas9 mediated activation of gene expression. Ng WA, Ma A, Chen M, Reed BH.
  • University of Waterlooの研究チームは、「野生型遺伝子の過剰発現がもたらすフェノタイプはその遺伝子の機能を喪失した変異型では出現しない」という前提のもとに、CRISPRa技術に基づいてF1世代でのフェノタイプスクリーンから劣性致死変異を同定するシステムを構築し、ショウジョウバエの hindsight (hnt)遺伝子にEMSで処理したF1世代45,000個体から、機能喪失した新規hntアレル8種類を同定した。
3. CRISPR-Cas12aに基づいて、アフリカ豚コレラウイルス (ASFV)をハイスループット・超高感度で検出するシステムを開発
[出典] High-throughput and all-solution phase African Swine Fever Virus (ASFV) detection using CRISPR-Cas12a and fluorescence based point-of-care system. He Q, Yu D [..] Qin P, Du K. bioRxiv. 2019-10-01 > Biosens Bioelectron 2020-02-04.  https://doi.org/10.1016/j.bios.2020.112068
  • Tsinghua-Berkeley Shenzhen Institute、Rochester Institute of Technology、Virginia TechおよびDong-A Universityの米中韓の研究グループは今回、DETECTRシステムと同様に、Cas12aのコラテラルssDNA切断活性を利用して、レポータssDNAからの蛍光でASFV DNAを2時間以内で検出可能とするシステムを実現した。検出限界は 1 pMであった。
  • Cas12a/crRNA/ASFV DNA三者複合体は生理的温度で極めて安定であり、Cas12aのssDNAレポータの切断活性は24時間後も維持され、検出限界が100 fMまで向上した。
  • 本検出システムの器具は使い捨てカートリージと簡易な蛍光光度計で十分であり、ポイントオブケアとして場所を選ばない。