[出典] High-fidelity endonuclease variant HypaCas9 facilitates accurate allele-specific gene modification in mouse zygotes. Ikeda A, Fujii W, Sugiura K, Naito K. Commun Biol. 2019-10-10.

 東京大学の藤井 渉らは今回、J. A. Doudnaらが開発したHypaCas9 [*]がヒト細胞における遺伝子編集と同様に、マウス受精卵においても高精度であることを実証し、必須遺伝子のヘテロ変異型マウスの作出に利用可能なことを示した [* CRISPRメモ_2018/06/08 [第1項] [特許公開]レポータCas9変異体 (HypaCas9)とその利用法]。
  • 先行研究で顕著なオフターゲット編集を引き起こすことを同定していたGt(ROSA)26Sor-gRNAを組み合わせたHypaCas9が、野生型 (WT-)Cas9と同等のオンターゲットの活性を維持しつつ、オフターゲット作用が、ミスマッチの位置による変動はあるが顕著に低減することを確認した(原論文Fig.1引用下図 b-c 参照)。Fig. 1
  • 続いて、Cdx2のエクソン3におけるSNP (rs32379528: C57BL/6N (B6), G/G; DBA/2J (D2), C/C) をモデルとして、 B6とD2のF1 (B6D2F1)受精卵において、HypaCas9がWT-Cas9とは異なりB6由来アレルに特異的な編集を実現することを確認した(原論文Fig. 2引用左下図とTable 1引用右下図赤下線参照)。Fig. 2 Table 1
    上図においてgRNA1はPAM領域にSNPが位置する設計であったため、WT-Cas9でもB6アレル特異的編集が誘導された (右上図青下線参照)。
  • さらに、そのノックアウトが胚致死性であるCdk1をモデルとして、HypaCas9によって、生存や発生の必須遺伝子に片アレル変異 (monoallelic mutation)を誘導可能なことを示した。B6のCdk1遺伝子のエクソン3の左右のイントロンに位置するSNPs (rs29378304とrs29355421)を認識するB6特異的sgRNAを設計し、HypaCas9-sgRNAを送達したB6D2F1受精卵120個の移植を経て、35匹の仔を得、そのうち22匹がB6アレル特異的エクソン3欠損を示しつつ形態異常を示さないことを、確認した。また、この欠損が継代されることも確認した。