[出典] Detection of spacer precursors formed in vivo during primed CRISPR adaptation. Shiriaeva AA [..] Nickels BE, Severinov K, Semenova E. Nat Commun. 2019-10-10

 原核生物に見られるタイプ I CRISPR-Cas遺伝子座は、原核生物に核酸をベースにした侵入DNAに対する獲得免疫機能をもたらす。この機構には、侵入DNAから~30-bpの断片 (prespacer)をCRISPRアレイにスペーサとして取り込むadaptationの過程と、スペーサにマッチしたプロトスペーサを帯びたDNAを分解するinterferenceの過程とで成り立っている。

 タイプ I CRISPR-Casのadapitation過程は、侵入DNAから直接スペーサを獲得するナイーブ (naive)型とは異なるプライム (primed)型を備えている。プライム型では、interference過程におけるDNA分解と共役して、CRISPRアレイにすでに存在しているスペーサとマッチするプロトスペーサ (priming protospaper: PPS)周囲のDNA (prespacer)からスペーサを獲得する 。

 ロシアのSkolkovo Institute of Science and Technology, Petersburg Polytechnic University, Institute of Molecular Geneticおよび米国Rutgers Universityの研究グループは今回、プライム型adaptationのプロセスを詳らかにすることを目的として、in vivoモデルシステムと、dsDNAの各DNA鎖に特異的なハイスループット・シーケンシング法、FragSeq、を開発した。
  • モデルシステムは、E. coli タイプ I-E/I-F CRISPR-Cas セルフ-ターゲッティング遺伝子座 (染色体上のプロトスペーサを標的とするcrRNAをコード)で構成し (原論文Fig. 1/4の一部引用下図参照)、FragSeqによって、crRNAの標的プロとスペーサ周辺に由来する短いDNA断片を検出した。FIg. 1-4
  • FragSeaで同定したDNA断片配列は、タイプI-E/I-Fのプライム型adaptationsにより獲得されたスペーサと一致する配列を帯び、PAM側に~3-ntから4-ntのオーバーハングを伴う非対称型であり、その向きは双方向であるが標的プロトスペーサの向きとの関係に依存していた。また、このDNA断片を侵入DNAとしてE. coliイタ細胞に導入すると、スペーサの前駆体として機能した。
  • 研究グループは今回得られた知見に基づいて、プライム型adaptationの機構モデルも提案した (原論文 Fig. 5引用下図参照)FIg. 5