[出典] Molecular basis for the PAM expansion and fidelity enhancement of an evolved Cas9 nuclease. Chen W [..] Gan J, Ji Q. PLoS Biol. 2019-10-11.

 Broad研のDavid R. Liuらは2018年に、野生型SpCas9 (WT-SpCas9)から定向進化システムPACE (phage-assisted continuous evolution)を介してPAMの拡張と高精度な編集を両立したxCas9に到達した[1]。その構造基盤について、2019年はじめにHarbin Institute of Technologyの研究チームがxCas9-sgRNA-dsDNA (AAG PAM)とxCas9-sgRNA-dsDNA (GAT PAM)の三者複合体の構造に基づいて論じた[2]。

 上海科技大学と復旦大学の研究グループが今回、4種類のPAM (TGG; CGG; TGC; TGA)との三者複合体の解像度~3.0 Åの構造およびWT-SpCas9と2種類のPAM (TGAとCGA)を含む三者複合体の構造*に基づいて、さらなる考察を加え、Harbin Institute of Technologyの研究チームの報告を裏付けた [* ()内はPDB-ID: xCas9/TGG (6K4P); xCas9/CGG (6K4Q); xCas9/TGC (6K4S); xCas9/TGA (6K4U); SpCas9/TGA (6K3Z); SpCas9/CGA (6K57)]。

 すなわち、SpCas9では残基#1219との間の塩橋で固定化されているR1335が、xCas9ではE1219V変異によって回転自由になることでNGG以外のPAMを認識可能になり (原論文Fig.4/5の一部引用下図参照)、Salt Bridge
R324L、S409IおよびM694Iの変異がREC2とREC3のコンフォメーション変化を介して高精度化に貢献する。なお、NGG PAMに対しては、xCas9もSpCas9と同様に振る舞う。