#crisp_bio注: 2019-10-15にタイトルのマイクロマニホールドパッチをマイクロニードルパッチに修正
[出典] A luminal unfolding microneedle injector for oral delivery of macromolecules. Abramson A, Caffarel-Salvador E [..] Traverso G. Nat  Med. 2019-10-07.  [News & VIews] Microneedle patch drug delivery in the gut. Prausnitz MR, Gomaa Y, Li W. Nat Med. 2019-10-07

 インスリンをはじめとする皮下注射可能なバイオ医薬品は糖尿病などの患者に効果的な療法を届けたが、患者および医療従事者は効力が劣っても経口投与薬をしばしば好む。皮下注射と比較すると経口投与は、患者に与える苦痛がより少なく、高温でより化学的に安定しており、また、注射針という有害な医療廃棄物を生じない。そこでバイオ医薬品の経口投与を可能にすることが望まれるが、バイオ医薬品は、経口投与可能薬の経験則であるリピンスキーの法則を満たすことが困難であり、消化管から血流へ吸収され難い。

 MITとGlobal Drug Discovery/Novo Nordiskの研究グループは今回、Luminal Unfolding Microneedle Injector (LUMI)と称する部品を、飲み込むことが可能なカプセルに組み込むことで、バイオ医薬品の代表であるインスリンの経口投与が可能なことを、ex vivoヒト小腸組織とex vivo/in vivoブタ組織で実証した。

LUMIとカプセルの構造 (News & VIews Figure 1参照)
  • ポリ(メチルメタクリラート-co-エチルアクリラート)でコートしたサイズ 9 mm x 30 mmのカプセルはpH ≥ 5.5で溶解するように設計し、酸性環境の胃 (1.5~3.5 pH)をそのまま通過し~6 pHの小腸へ達すると溶解する。
  • カプセルが溶解すると、PEGで固定されていた圧縮スプリングが解放され、LUMIがカプセルから押し出される (in vitro実験で、スプリングの作動時間をPEGの分子量によって1~5時間の範囲で調節可能なことを確認)。
  • スプリングが作動後カプセルは径 ≤ 9mm、長さ15 mmの有窓の (fenestrated)断片まで分解され、消化された食物の流れを妨げることなく腸から安全に排出される。
  • LUMIには、生分解性のポリエチレンオキシドとポリビニルカプロラクタムポリ酢酸ビニルポリエチレングリコールグラフト共重合体 (Soluplus)を素材とするアームが3本束ねられており、カプセルから放出されると傘のように3本のアームが広がり、腸壁と接触する。
  • アームは10分間強度を維持するが24時間以内に分解するように設計されている。
  • 各アームの先端部分には32本のマイクロニードル*を生やした0.5平方cmのパッチが付着している (インスリン、ワクチン、化粧品、薬物の経皮吸収に利用されているマイクロニードルパッチについてWikipediaから引用した下図参照)。マイクロニードルパッチ
  • マイクロニードルは、薬剤を混合した水溶性の素材からなり、障壁への侵入に伴って溶解し、粘液と腸上皮のバリアを超えて薬剤が血流に浸透していく。LUMIには0.3 mgまでの薬剤をロード可能である。
  • LUMIの分解しないエラストマーのコアは12 mm径 x 1.5 mmの長さであり、消化管から安全に排出される。
インスリンをモデルとする実験と評価
  • インスリンは、LUMIを介して迅速に吸収され、4時間を超える観察期間中、全身にわたって皮下注射の10% を超える吸収レベルを達成した。また、血糖値の調節効果も示した。
  • LUMI内蔵カプセルを投与したのちの内視鏡検査で、ブタの消化管に異常が発生していないことを確認した。
  • 糖尿病治療に利用するには、インスリンの血流への流入時期を迅速かつ精密に制御する工夫が必要であるが、LUMIはバイオ医薬品の経口投与の可能性を広げた。