1. PADS Arsenal: 原核生物の防御システムに関する遺伝子の網羅的データベース
[出典] PADS Arsenal: a database of prokaryotic defense systems related genes. Zhang Y, Zhang Z, Zhang H, Zhao Y, Zhang Z, Xiao J. Nucleic Acids Res. 2019-10-17. Webサイト
  • National Genomics Data Center/BIG Data Center (CAS)を主とする研究グループが、CRISPR-Casシステム、制限修飾系 (R-Mシステム)、毒素 - 抗毒素システム (TAシステム)などの原核生物の防御システムに関連する遺伝子を集積したデータベースPADS Arsenalを開発・提供した (PADSはprokaryotic antiviral defense systemに由来する。
  • 33,390種のバクテリアとアーケアに由来する63,701ゲノムから、18カテゴリーの防御システムに関与する6,600,264遺伝子を抽出しデータベース化した (原論文Table 1引用左下図参照)。Webサイトは、データベース検索に加えて防御システムのオンラインアノテーション機能も備えているPADS Arsenal  Webサイトの画面キャプチャ右下図参照)。
PADS Arsenal Table 1 PADS Arsenal
2.  CRISPRCasdb: 完全ゲノム配列から抽出したCRISPRアレイとcas遺伝子を網羅し、反復配列とスペーサのダウンロードと検索サービスを提供
[出典] CRISPRCasdb a successor of CRISPRdb containing CRISPR arrays and cas genes from complete genome sequences, and tools to download and query lists of repeats and spacers. Pourcel C et al. Nucleic Acids Res. 2019-10-18.
  • CRISPRdbの後継データベース:GenBankからダウンロードしたデータをもとに、バクテリア2,973種由来の16,650株とアーケア300種由来の340株の完全ゲノムに対して、CRISPRCasFinderによりCRISPRsとcas遺伝子をアノテーションし、その他のメタデータとともに、CRISPR-Cas++ Webサイトから公開した。
  • 左下図は、原論文Figure 1から引用したデータベース構築のワークフロー、右下図はWebサイトのトップページの画面キャプチャである。右下図の下の行に、CRISPRCasdbの分類木を介したアクセス機能とblastを介したアクセス機能のメニューが見える。
CRISPRCasdb CRISPR-Cas++
3. [レビュー] 膵臓癌研究におけるCRISPR Cas9
[出典] CRISPR Cas9 in Pancreatic Cancer Research. Yang H, Bailey P, Pilarsky C. Front Cell Dev Biol. 2019-10-18. 
  • Universitätsklinikum Erlangenの研究チームが、膵臓癌の主たる治療法は手術、放射線療法および化学療法であるが、この10年間、患者生存に大きな改善が見られていなかったが、近年、CRISPR/Cas9技術による療法の可能性が見えてきたとし、CRISPR/Csa9技術の進歩、膵臓癌研究への応用、特に、膵臓癌のドライバー遺伝子を特異的に標的とする療法をレビューした 
  • 左下図はTable 1から引用したCRISPR/Cas9ノックアウトによる機能ゲノミクスの例、右下図はTable 2引用から引用したプール型CRISPRスクリーンによるドライバー遺伝子同定例 。
Table 1 Table 2
4. [インタビュー記事] ロシアの研究者、難聴 (deaf)遺伝子編集をの女性の卵子のゲノム編集を開始
[出典] Russian ‘CRISPR-baby’ scientist has started editing genes in eggs from a deaf woman. Cyranoski D. Nature. 2019-10-18.
  • 2019年6月にヒト胚ゲノムにおけるCCR5遺伝子編集の意図をNature誌に伝えていたDenis Rebrikov (Kulakov National Medical Research Center for Obstetrics)が10月17日からのNature誌との電子メールの中で明らかにした:聴力損失をもたらす変異の遺伝子治療を目指す中で、オフターゲット編集を検証することを目的として健常な女性の卵子の遺伝子編集を行い、遺伝子編集した胚の移植は目論んでおらず、実験結果を難聴の患者由来の体細胞のGJB2遺伝子変異の修復実験の結果とともに、公開する。
  • Rebrikovは、これから難聴者由来の卵子の編集に進むとしているが、Jennifer Doudnaは、これを致死性ではない疾患の治療を目的とするヒトゲノム胚編集として、批判した。
  • なお、Ministry of Health of the Russian Federationは、遺伝子編集ベービーは時期尚早としている。また、国際的な規範は、WHOおよび米国アカデミーと英国王立協会が設置した国際委員会で検討中であり、委員会は2020年春に生殖細胞系列の臨床研究のガイドの枠組みを発表する予定である。
4. ディスカッションペーパー:ゲノム編集の科学的妥当性および倫理問題、法的問題および社会問題
[出典] 
Genome Editing Working Group of the Ethics Council of Max Planck  Society (2019 May). 
  • Christina Gross & Emmanuelle Charpentier: CRISPR-Cas9を中心とするゲノム編集技術の発展と広がりDetlef Weigel: 植物ゲノム編集 (基礎研究、穀物育種および規制)
  • Guy Reeves: 遺伝子ドライブと改変ウイルスの環境放出
  • Hans R. Schöler &Thomas Rauen: 幹細胞研究におけるゲノム編集 (Christiane Walch-Solimena: CRISPR-Cas9と動物愛護)
  • Stefan Mundlos & Hans Schöler: ヒトゲノム編集
  • Silja Vöneky: 法制度 (植物その他の生物; ヒト; デュアルユース(軍民両用技術)研究)
  • Klaus Tanner & Christiane Walch-Solimena:倫理問題と社会問題 (考察すべき6つの問いかけ)