1. ヒト心房細動の病因候補調節領域をGWASデータから絞り込み、マウス相同領域のCRISPR/Cas9ゲノム編集で裏付けた
[出典] Identification of atrial fibrillation associated genes and functional non-coding variants. van Ouwerkerk AF, Bosada FM, van Duijvenboden K [..] Christoffels VM. Nat Commun. 2019-10-18
  • Amsterdam University Medical Centersをはじめとするオランダ・米国の研究グループは、GWASから同定された心房細動相関遺伝変異データから、心房細動の病因となる変異を帯びた調節領域と標的遺伝子群の候補をATAC-seqとEMERGEモデル、Hi-C、PHiC(Promoter Capture Hi-C)、RNA-seqなどのデータを相互参照して絞り込んだ (実験のワークフローとin silico解析のフローチャートについて、Supplementary Figure 1と2を引用した下図の左右参照)。
atrial fibrillation 1 atrial fibrillation 2
  • 絞り込んだ調節領域104種類のうち3種類について、マウスの相同な領域をCRISPR/Cas9で削除する実験により、裏付けた (例 ヒトのコネキシン43 (Cx43)をコードするGJA1遺伝子の下流遠位位置するサイズ680 Kbの調節領域)
2. C. eleganssftb-1/SF3B1のCRISPR編集により、癌関連変異とスプライシングの化学的的阻害との相互作用が明らかになった
[出典] CRISPR editing of sftb-1/SF3B1 in Caenorhabditis elegans allows the identification of synthetic interactions with cancer-related mutations and the chemical inhibition of splicing. Serrat X [..] Cerón J. PLOS Genetics. 2019-10-21.
  • SF3B1は、血液系腫瘍において最も高頻度で変異しているスプライシング因子であり、SF3B1の変異は癌細胞の適応度を高める一方で治療標的になり得る。IDIBELL (バルセロナ)にInstitut Pasteurが加わった研究グループは今回、ヒトSF3B1C. elagansオーソログsftb-1遺伝子へのCRISPR/Cas9による病因変異導入および抗腫瘍活性物質プラジエノリドBの結合モチーフ(HEATリピート)導入により、C. elegansを、ヒトSF3B1変異と合成致死の関係にあるヒト遺伝子や低分子のスクリーンに利用可能なことを実証した。
3. βサラセミア患者由来iPSCsにおいて病因遺伝子変異HBB IVS2‐654 (C > T)のCRISPR/Cas9とssODNによる修復に一工夫
[出典] Efficient gene correction of an aberrant splice site in β‐thalassaemia iPSCs by CRISPR/Cas9 and single‐strand oligodeoxynucleotides. Xiong Z [..] Sun X. J Cell Mol Med. 2019-10-02
  • ヘテロ接合型のHBB IVS2‐654変異はβサラセミアの症状が発生しないことから、ホモ接合型変異を帯びている患者のどちらか一方のアレルを修復することで治療効果をあげることができる。広州医学院第三附属医院の研究グループはCas9, sgRNAおよびHDR修復用のssODNを同時に送達する1ステップの修復を試み、4%の修復効率を達成した。
  • しかし、標的変異はPAMに隣接していないことから、sgRNAの標的を変異部位の近傍に設定する必要があり、修復後の配列をCas9が再切断するリスクを伴っていた。また、変異はイントロン領域に位置していることから、この再切断を同義置換導入により回避することができない。
  • そこで、研究グループは、第1段階で、変異修復と同時にgRNAの標的位置に1塩基置換を導入し、第2段階で置換を修復する2ステップの手法を開発し、平均21%の修復効率を達成した。この効率は、先行研究にてCas9とdsDNAドナーによる修復で報告された12.3%も上回る。
4. CRISPR/Cas9合成致死スクリーニングにより、癌細胞のフェロトーシス阻害剤に対する耐性を回避可能とする第2のフェロトーシス抑制因子を同定
[出典] The CoQ oxidoreductase FSP1 acts parallel to GPX4 to inhibit ferroptosis. Bersuker K [..] Olzmann JA. Nature. 2019-10-21
  • フェロトーシスは細胞死の一種であり癌療法の手段として研究が進められている。フェロトーシスを防止する主たる酵素としてグルタチオンペルオキシダーゼ4 (GPX4)が知られているが、GPX4阻害剤に対して耐性を示す癌細胞が存在することから、GPX4が関与しない他のフェロトーシス防止パスウエイが存在することが示唆されてきた。
  • UC Berkeley、Stanford Universityなどの研究グループは今回、GPX4阻害剤で処理したヒト骨肉腫由来U2OS細胞株において、GPX4と合成致死の関係にある遺伝子をCRISPR/Cas9にてスクリーニングし、フェロトーシス抑制タンパク質1 (FSP1: ミトコンドリア・アポトーシス誘導因子アAIFM2)が、フェロトーシス耐性因子候補であると同定した。また、数百の癌細胞株において、FSP1の発現とフェロソーシス耐性が正に相関し、FSP1が肺癌細胞にフェロトース耐性をもたらすことをin vitroおよび異種移植モデルin vivoで、確認した。
  • したがって、FSP1を薬理学的に阻害することで、癌細胞のフェロトーシス誘導化学療法に対する感受性を亢進することが可能なことが示された。
5. ブロック重合体ミセルによるRNPデリバリー:物理化学的特性がパッケージング機構と遺伝子編集効率に影響する
[出典] Block Polymer Micelles Enable CRISPR/Cas9 Ribonucleoprotein Delivery: Physicochemical Properties Affect Packaging Mechanisms and Gene Editing Efficiency. Tan Z [..] Reineke TM. Macromolecules 2019-10-21
  • 単分散両親媒性ブロック重合体 poly[ethylene oxide-b-2-(dimethylamino) ethyl methacrylate-b-n-butyl methacrylate] (PEO-b-PDMAEMA-b-PnBMA) を合成し球状のカチオン性ミセルを導出した (10 kDAの長さのPEOを採用)。このミセルはRNAが突き出しているゆえにアニオン性RNPと静電相互作用を介して複合体 (micelleplex)を構成する。
  • Micelleplexの動態と遺伝子編集効率は溶媒に依存し、PBS (リン酸緩衝生理食塩水)よりも水の場合の方がナノ粒子のサイズが大きくまたLipofectamine 2000による編集効率が2倍(40%)になることを見出した。
6. タイプI-F CRISPR-Casは、DNAファージを防御するがRNAファージは防御しない
[出典] Type I-F CRISPR–Cas provides protection from DNA, but not RNA phages. Buyukyoruk M, Wiedenheft B. Cell Discovery. 2019-10-22
  • 2016年10月にCell Research誌から「Pseudomonas aeruginosa (PA14)のI-F型CRISPR/Casがクオラムセンシングのマスター調節因子であるlasR (すなわち宿主遺伝子)のmRNAを分解」とする論文 [1]が発表され、翌年2月にFront Microbiol.誌に疑義を呈するコメンタリー [2]が発表された。
  • 今回、Montana State Universityの研究チームが、PA14のI-F型CRISPR/Cas9は、lasR mRNA分解機構のモデルを模した合成CRISPRアレイによるMS2ファージのRNAゲノム分解実験を行い、Cell Research論文で提案された非標準的なcrANAの標的認識機構(*)ではMS2のRNAゲノムは分解されないという結論に至った (Figure 1引用下図参照)。type I-F
  • (*) I-F型のエフェクターは標的DNAをPAMで認識したのち下流の領域で切断するが、ssRNAの場合は"PAM-like"なモチーフ(5'-GGN-3')の上流の12-ntの"コア"配列を検出し切断する。
  1. Type I CRISPR-Cas targets endogenous genes and regulates virulence to evade mammalian host immunity. Rongpeng L [..] Li G, Jiang J, Wu M. Cell Res. 2016-11-18
  2. Commentary: Type I CRISPR-Cas targets endogenous genes and regulates virulence to evade mammalian host immunity. Müller-Esparza H, Randau L. Front Microbiol. 2017-02-17
7. [研究資源] CRISPR/Cas9によりWWTR1/TAZノックアウトiPSC株MUSIi012-A-1を樹立
[出典] Generation of a WWTR1 mutation induced pluripotent stem cell line, MUSIi012-A-1, using CRISPR/Cas9. Lorthongpanich C [..] Laowtammathron C, Issaragrisilaef S. Stem Cell Research. 2019-10-21
  • 胚性胚葉形成およびWWTR1/TAZホモログのYAP1との機能的冗長性に関する研究に有用