1. 深層学習によりsgRNAのバクテリアにおけるオンターゲット活性を予測する - 真核生物版も
[出典] Prediction of sgRNA on-target activity in bacteria by deep learning. Wang L, Zhang J. BMC Bioinformatics. 2019-10-24.
  • これまでに深層学習によるCRISPRシステムのオンターゲット活性モデル構築が試みられてきたが、北京理工大学の研究チームは今回、ヒト細胞に替えて、深層学習により微生物ゲノムを対象とするsgRNAのオンターゲット活性モデルを構築した。
  • 具体的には、 E. coliにおいて、~70,000 sgRNAライブラリーを利用して、Cas9、eSpCas9およびrecAコーディング領域を欠失したCas9 (ΔrecA)によるオンターゲット活性を測定した2種類のデータセット (Set 1とSet 2; Table 1引用左下図参照)に基づいて、5層の畳み込みニューラルネットワークによるモデル (以下、CNN_5layers)構築と評価を行い、既報のモデルを凌ぐ結果となった (Table 2引用右下図参照)。
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  • 次に、 Haeusslerら (Genome Biol., 2016) がまとめた真核生物ゲノムを対象とするデータセットをもとに真核生物版CNN_5laysersモデルも構築し、DeepCRISPR, CeepCas9およびTSAMと性能を比較し、11種類のデータセットのうち9種類について他を凌ぐ結果となった。
  • さらに、原核生物と真核生物の差異をもたらす特性パラメータ、オフターゲット効果およびsgRNAシーケンスの特徴も考慮に入れることで、オンターゲット活性の予測精度が向上することも示した。
[深層学習関連crisp_bio記事]
2. ショウジョウバエの染色体再編成を、CRISPR/Cas9と一対のsgRNAsにより実現
[出典] A method to estimate the frequency of chromosomal rearrangements induced by CRISPR/Cas9 multiplexing in Drosophila. Ng WA, Reed BH. bioRxiv. 2019-10-22
  • CRISPR/Cas9は、ショウジョウバエを含むモデル生物の遺伝子ノックアウトと遺伝子置換に広く利用されている。また、モデル生物の中で、マウス、酵母、線虫、およびゼブラフィッシュでは、CRISPR/Cas9によって部位特異的に転座や逆位といった部位特異的な染色体再編成が実現されていた。
  • ショウジョウバエの部位特異的な染色体再編成にはこれまで、Flp/FRTシステムを介した組換えが利用されてきた。この技術はDrosDel欠失系統のコレクションの作出にも利用されているが、トランスポゾンP因子によるFRTの挿入がランダムに発生することから、染色体の再編成や欠失を設計するにあたり、予めゲノムの構造や挿入の向きを知っておく必要がある。
  • University of Waterlooの研究チームは今回、self-selectingスクリーニング系を構築することでCas9と一対のsgRNAsにより、ショウジョウバエの部位特異的な染色体再編成が可能なことを、初めて示した。
  • 評価に必要なスクリーニング系を、autosynaptic formとして知られている常染色体性 (autosomal)挟動原体逆位(pericentric inversion)を帯びたショウジョウバエ系統を利用して構築した。このautosynapticのオスと野生型のメスの子孫は、挟動原体逆位の染色体乗り換へにより重複染色体が生成され異数性が過剰になり、致死となる。
  • このスクリーニング系に基づいて、野生型メスにCas9と一対のsgRNAsにより染色体再編成 (pericentric inversion)を誘導し、autosynaptic formのオス系統と交配し、致死性を免れた子孫を解析した。
  • 130匹のゲノム編集メスの中で、autosynaptic formのオス系統と交配の結果子孫をもたらしたのは1匹に留まったが、唾液腺の巨大な多糸染色体の電顕像、PCRおよびシーケンシング解析から、一対のsgRNAsで標的した2ヶ所の間で、 ブレイクポイント (breakpoint)が修復されていたことを確認した。
[染色体再編成関連crisp_bio記事]

3. CRISPR RNAは、Cascade核タンパク質複合体の構造とサイズと密接に関係している
[出典] A CRISPR RNA Is Closely Related With the Size of the Cascade Nucleoprotein Complex. Gu DH, Ha SC, Kim JS. Front Microbiol. 2019-10-29
  • エタノール生産菌として知られるZymomonas mobilis ZM4は3種類のCRISPRシステムを帯びているが、その中で、4種類の遺伝子 (ZmCsy1-4: -1, -2, -3, -4)がタイプI-F CRISPRシステムのCascade複合体を形成している。全南大学校とPohang Accelerator Laboratoryの研究チームは今回、Z. mobilisにおいてCascade複合体が形成される分子機構の構造基盤を明らかにすることを目指してZmCsy3サブユニットのX線結晶構造解析を行った (PDB ID 6KQR (分解能 2.9 Å) 2019-10-29公開待ち)。
  • 興味深いことに、ZmCys3はcrRNAに結合していない状態でも、crRNAが結合しているP. aeruginosaのタイプI-F Cascadeの構造に酷似していた (Figure 1とFigure 2から引用した下図左右を参照)。
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  • また溶液中で、単量体のZmCsy3タンパク質は、結合するcrRNAの長さによって、異なるオリゴマーを形成した (Figure 3引用下図参照)。2019-10-29 3
  • これまでの報告と今回の構造情報から、Cascade複合体の形成とサイズはcrRNAに依存することが示唆された。
[Z. mobilis CRISPRシステム関連crisp_bio記事]
  • CRISPRメモ_2019/03/23 - 2 [第4項] 通性嫌気性エタノール生産菌Zymomonas mobilis内在のタイプI-F CRISPR-CasシステムをZ. mobilisゲノム工学へ活用する