(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/31

  1. [論文] Cas9活性制御に展開可能なバクテリオファージ由来・抗CRISPRタンパク質
    • Corresponding author: Joseph Bondy-Denomy (UCSF)
    • UCSFの研究チームは、リステリア症の病原体Listeria monocytogenes のプロファージから、大腸菌とヒト細胞において、現在最も広く応用されているStreptococcus pyogenes 由来Cas9を含むCas9のDNA結合と遺伝子編集を阻害する4種類のCRISPR/Cas9阻害タンパク質AcrIIA(AcrIIA1〜4)を同定した。
      • これまでクラス1のCRISPR/Casシステムの機能を阻害するファージ由来のタンパク質が報告(*)されてきたが、今回初めて、クラス2のCRISPR/Casシステムに対する抗CRISPRタンパク質を同定した。 
        (*)CRISPR関連文献メモ_2016/10/20 4.[論文] 抗CRISPRタンパク質の溶液構造
      • cas9 ならびにCRISPRスペーサーとその免疫応答の標的配列が共存ししてるバクテリアゲノムをバイオインフォマティクスで解析することで、抗CRISPRタンパク質候補を探索。
      • AcrIIA2とAcrIIA4は、バクテリアにおいてdCas9の標的への結合を阻害する。
      • AcrIIA2とAcrIIA4は、ヒト細胞においてCas9を介した遺伝子編集を阻害する。
      • Cas9特異的な抗CRISPRタンパク質(“anti-CRISPRs”)は、CRISPR/Cas9のゲノム編集活性を制御するツールとして有用である。
  2. [論文] ペプチドタグ挿入によるRNA結合蛋白質(RBP)-RNA相互作用解析CLIP法の改良
    • Corresponding author: Gene W. Yeo (UCSD/NUS/)
    • YeoらはRBP-RNA相互作用解析法として開発されたCLIP(cross-linking immunoprecipitation)法を改良したeCLIP法を開発していたところ、免疫沈降に利用可能な品質の抗体が存在しない問題を認識していた。そこで今回、CRISPR/Cas9システムの相同組換え修復(HDR)を利用して内在RBP遺伝子座にペプチドタグを挿入し、タグ特異的な抗体を組み合わせるTAG-eCLIPを開発した。
  3. [論文] dCas9-VP160によるlammin α-1の発現上昇
    • Authors: A. Perrin, J. Rousseau & J. P. Tremblay (Laval U.)
    • [背景] ラミニンα1の遺伝子LAMA1 は、胚形成時に限って発現するラミニン-111を構成する鎖である。筋ジストロフィーモデル動物(mdxマウス)にラミニン-111(laminin-111)を投与すると筋繊維鞘が安定になり、血中クレアチンキナーゼのレベルが野生型のレベルまで回復し、運動誘発性障害から筋肉が保護されることから、ラミニン-111増量によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー療法が考えられる。
    • 研究チームは今回、ラミニン-111タンパク質の反復投与に変えて、dCas9に転写活性化VP160ドメインを融合し、Lama1遺伝子のプロモーターを標的とするgRNAsを組み合わせることで内在Lama1遺伝子発現を亢進させる手法を試行した。
      • dCas9-VP160をコードするプラスミドをエレクトロポレーションすることで、マウス横紋筋由来C2C12細胞株とマウス筋肉における発現を実現し、さらに、2 gRNAsまたは3 gRNAsを利用することで発現が上昇することを見出した。
  4. [論文] βサラセミア患者由来iPSCsの変異修復法
    • Corresponding authors: Xiaoping Li (Guangzhou Inst. Biomedicine and Health); Lei Bu (New York U. School of Medicine); Yong Fan (The Third Affiliated Hospital of Guangzhou Medical U.)
    • “High fidelity”に改変されたCas9(SpCas9-HF1)、ssODNおよび低分子L755507を組み合わせた効率の高い相同組換え修復機構を介して、βサラセミア iPSCsのHBB遺伝子のβ41/42(TCTT)欠損変異について、ゲノム編集の痕跡を残すことなく両アレルを一段階で修復し、このiPSCsから造血肝細胞を経て分化した赤芽球は、正常なβグロビン転写物を発現した。
  5. [レビュー] 配列特異的ヌクレアーゼ(site specific nucleases: SSNs)を利用した遺伝子ターゲッティングを介した精密なゲノム編集による作物改良
    • Corresponding author: Lanqin Xia (Institute of Crop Sciences)
    • ZFN、TALENおよびCRISPR/Cas9の遺伝子テーゲッティング技術の作物改良への応用の現状を相同組換え修復機構の利用に焦点を当てながらレビュー
  6. [特許] Methods for Nuclear Reprogramming Using Synthetic Transcription Factors
    • 発明者:Abraham, Eytan (Potomac, MD, US); Payne, Thomas (Cambridge, GB); Young, Robert J. (London, GB); Friedrich Ben, Nun Inbar (Rockville, MD, US)
    • 譲受人:Lonza Walkersville, Inc. (Walkersville, MD, US)
  7. [特許] Genome Engineering