[出典] Large-scale transgenic Drosophila resource collections for loss- and gain-of-function studies. Zirin J [..] Ni J, Perrimon N. bioRxiv. 2019-11-23. 
 2008年にHarvard Medical Schoolで開始されたトランスジェニックRNAiプロジェクト (TRiP)は、ショウジョウバエ機能ゲノミクスのプラットフォームとして、これまでRNAi技術によって、15,000種類を超えるトランスジェニック・ショウジョウバエのRNAiストックを作出し、分譲してきた。こうして、ショウジョウバエのほとんどの遺伝子をカバーするに至ったことから、TRiPは、CRISPR技術によるCRISPRストックの開発を進めてきた。
 Harvard Medical School, 中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所、清華大学、Bloomington Drosophila Stock Centerおよび国立遺伝学研究所の国際共同研究グループは今回、RNAiおよびCRISPRで作出してきたショウジョウバエ・ストックのコレクションの到達点を紹介し、CRISPR技術によるTRiP-CRISPR overexpression (TRiP-OE)と TRiP-CRISPR knockout (TRiP-KO) のコレクションをハイライトした:
  • RNAiとCRISPR技術で作出されたin vivo機能喪失機能獲得実験に利用可能なコレクション
  • ゲノムスケールのRNAiストックと、特に、ヒト疾患関連遺伝子のオーソログを標的とするsgRNAを帯びたCRISPRストック (* 参照)
  • 各研究室でのRNAi系統とCRISPR系統の開発を支援するToolboxストック
  • RNAiストックとCRISPRストックのデータべースRSVP Plus (RNAi & sgRNA Stock Validation & phenotypes) 
(*) CRISPRストック
  • TRiP-OEストックは、遺伝子の転写開始点の上流を標的とするsgRNAsを発現しており、転写活性化因子 (VP64-p65-Rta (VPR) または Synergistic Activation Mediator (SAM))を融合したdCas9 を共発現させることで (CRISPRaに相当)、遺伝子活性化を誘導可能である。
  • TRiP-KOストックは、一つまたは複数の遺伝子を標的とする1種類または2種類のsgRNA(s)を発現しており、生殖細胞と体細胞にindelsを誘導可能である。
  • これまでに公開したTRiP-OEまたは-KOストックは、5,000系統を超えた。
WebサイトDRSC/TRiP Functional Genomics Resources (下図はWebサイトの冒頭の画面キャプチャ)TRiP