[出典] Targeting specificity of APOBEC-based cytosine base editor in human iPSCs determined by whole genome sequencing. McGrath E, Shin H [..] Revollo J, Ye Z. Nat Commun. 2019-11-25.
 SpCas9と異なり二本鎖DNA切断 (DSB)を伴わない塩基置換法であるBase Editors (BE)は、dCas9にラット由来のシチジンデアミナーゼ (rAPOBEC1)を融合し'C:G to T:A'の直接変換を実現したBEから始まった。その後、BEsの派生型・改良型が続き、また、2017年には'A:T to G:C'を実現するBEs、ABE、が加わり、それまでのBEsはCBEsと称されるに至った。さらに、2019年、4種類全てのトランジッションと8種類全てのトランバージョンを可能にするPrime Editors(PEs)が加わった [1-10]。一方で、BEsは、望ましくない変換をもたらすバイスタンダー活性オフターゲット活性を伴うことが、動植物やヒト細胞株で明らかにされてきた [6-9]
 米国FDAにJohns Hopkins School of Medicineが加わった研究グループは今回初めて、ヒトiPSにおけるCBEの精度を検証した。
  • CBEの強化版の一種であるAncBE4max [4]を持続的に発現させた場合と一時的に発現させた場合の双方について検証し、持続的発現がより多くの望ましくない変異をもたらすことを見出した。したがって、CBEの臨床応用にあたっては、CBEのデリバリー手段として、持続的発現をもたらす結果になるAAVを回避する必要がある。
  • 重大なオフターゲット編集を伴わないiPSCクローンが得られた一方で、in silicoで予測されるCRISPR-Cas9のオフターゲットからは外れて、APOBECに因って、望ましくない (unintended)変換が誘導されることを見出した。すなわち、AncBE4maxのオフターゲット編集はCas9のDNAへの結合とは独立な現象であることが示唆された。
  • オフターゲットのほとんどは、'C:G to T:A'のトランジッションまたは'C:G to G:C'のトランスバージョンであり、APOBEC特有の突然変異パターン (mutagenesis signature)への偏りが見られた (現論文Fig 3引用下図参照)。BE3
  • AncBE4maxはシチジンデアミナーゼとしてrABOBEC1の変異体を利用しており、他のシチジンデアミナーゼが組み合わされたCBEは、AncBE4maxとは異なるオフターゲット・プロファイルを示すと想定される。
[参考crisp_bio記事]
4. CRISPRメモ_2018/05/30 - 3 [第1項] 塩基エディターBE4とABEを、BE4max/AncBE4max/ABEmaxへと強化
7. CRISPRメモ_2019/02/02_1  [第1項] APOBEC-Cas9エディトソームによる1塩基編集の定量化と最適化のためのeGFPレポータを開発
8. 2018-11-16 D. R. Liuによる塩基編集技術 (BE)のレビューと最新論文 [2018年時点でのBEs一覧表 Nat Biotechnol 2018-10-15 Table 1へのリンクあり ]
9. CRISPRメモ_2018/07/31 [第2項] バイスタンダー活性とオフターゲット活性を最小限にとどめたAPOBEC3A-Cas9による1塩基編集(BE)