出典
  • [論文] Conversion of Escherichia coli to Generate All Biomass Carbon from CO2. Gleizer S [..] Milo R. Cell. 2019-11-27.
  • [PREVIEW] Escherichia coli in Auto(trophic) Mode. Erb TJ, 0Keller P, Vorholt JA. Cell. 2019-11-27
  • [NEWS] E. coli bacteria engineered to eat carbon dioxide. Callaway E. Nature. 2019-11-27
  • [crisp_bio追記 2019-12-17] 酵母もオートトロフ化されたThe industrial yeast Pichia pastoris is converted from a heterotroph into an autotroph capable of growth on CO2. Gassler T [..]  Mattanovich  D, Steiger MG. Nat Biotechnol. 2019-12-16
炭素循環 [本項は原論文には詳述されていないcrisp_bio挿入分]
  • 気象庁のWebページ「二酸化炭素濃度の経年変化」によると、大気中の二酸化炭素量は、工業化 (1750年)以前の平均値とされる278 ppm (0.0278%)から2018年に世界平均で407.8 ppm (~0.0408%)へと47%増加し、また、気象庁が綾里、南鳥島及び与那国島にて測定したデータでも2019年に0.041%を超えた。
  • 地球温暖化説に対して賛否あり、大気中の二酸化炭素量が「3~4 % を超えると頭痛・めまい・吐き気などを催し、7 % を超えると炭酸ガスナルコーシスのため数分で意識を失う」に到るには進化的時間スケールを要すると思われるが、といって、二酸化炭素量の継続的上昇を放置して良いものでも無い。
  • 地球規模の人口増 (1975年 ~41億人; 2018年 ~76億人)と工業化の広がりを経ても濃度~0.04%に止まっているのは、大気圏内の炭素循環が回っているからである。この炭素循環を維持するには、人工的な二酸化炭素産生を抑制し、大気中の二酸化炭素を人工的に固定し分解あるいは変換を、促進することが必要である。
  • 生物界は、数億年の進化を経て、二酸化炭素を栄養源としてエネルギーや食糧の資源となるバイオマスに変換するオートトロフ (autotrophs: 独立/無機・栄養生物)と、有機化合物を栄養源とするヘテロトロフ (heterotrophs: 従属/有機・栄養生物)に、大別されるに至った。そこで、大気中の二酸化炭素量を制御する戦略の一つとして、植物、光合成細菌、化学合成細菌などのオートトロフ生物資源の保護・拡充が挙げられる。
研究成果
 二酸化炭素排出抑制も熱帯雨林の保護もままならぬ中、Weizmann Institute of Scienceの研究グループは今回、in silico解析から始まり遺伝子工学に進化工学を組み合わせることで、糖と多炭素化合物を栄養とするヘテロトロフ微生物である大腸菌を、二酸化炭素を唯一の栄養源としてバイオマス(*)を産生するオートトロフ微生物へと転換し、大腸菌を介して二酸化炭素をバイオマスへと変換する戦略の可能性を示した (* 2006年に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略 」では、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されている)
  • 研究グループは、光合成反応における代表的な炭酸固定反応であるカルビン・ベンソン回路  (Calvin-Benson-Bassham, CBB)に替わり二酸化炭素を固定することを目的として、二酸化炭素から電気化学的に合成可能なギ酸塩 (formate; メタン酸塩)酸化モジュールの組み込みを試みた (モデル図として原論文Figure 1引用下図参照)。Fig. 1
  • 化学量論的in silico解析では、、メチル栄養細菌Pseudomonas sp. 101由来のNAD+に共役するギ酸デヒドロゲナーゼ (formate dehydrogenase, FDH)、CBB回路において二酸化炭素を固定化する酵素であるRubisCO、およびホスホリブロキナーゼ (Prk)の3種類の酵素を組み込むことで、大腸菌のオートトロフ化が進むとされたが、3酵素を組み込んだだけでは、大腸菌はオートトロフ化しなかった。
  • [本段落について、原論文Figure 2引用下図参照] FIg. 2
    そこで、 はじめに、解糖系のホスホフルクトキナーゼ (Pfk)と酸化的ペントースリン酸経路のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ (Zwf)をノックアウトすることで、大腸菌がキシロース培地にてRubisCOを介したキシロースのカルボキシル化に依存して増殖するように設定した。次に、外因性のRubisCO、Prk、二酸化炭素を重炭酸塩を相互変換する炭酸脱水酵素(carbonate dehydratase, CA) 、およびFDHを発現させた。続いて、キシロースを制限しつつ、過剰なギ酸塩と二酸化炭素を10%含む空気を供給するケモスタットで培養を続けた。その結果、ケモスタットでの培養~200日 (~150世代に相当)で、キシロースを含まない培地での生育を観察し、~350日で全ての菌株がキシロース非依存/二酸化炭素依存になることを見出した。こうして、二酸化炭素を唯一の炭素源とし、FDHを介したギ酸塩の酸化をエネルギー源とする大腸菌株を得た
  • 研究グループは、ケモスタット由来の数クローンのゲノム解析から、指向性進化の過程で変異した遺伝子として、CBB関連遺伝子 5種類 (Category 1)、実験室内での大腸菌指向性進化実験で変異がよく見られる遺伝子 6種類 (Category 2)、および、クローンに依存して変動し機能未知の遺伝子 2~27種類 (Category 3)を同定した(原論文Figure 4引用下図参照)。FIg. 2