7. フェニルボロン酸 (PBA) から誘導した脂質ナノ粒子 (NP)と細胞表面のシアル酸 (SA)の間の界面を修飾することで、細胞特異的mRNAのデリバリとCRISPR/Cas9ゲノム編集を実現
[出典] Cell-selective Messenger RNA Delivery and CRISPR/Cas9 Genome Editing by Modulating the Interface of Phenylboronic Acid-derived Lipid Nanoparticles and Cellular Surface Sialic Acid. Tang Q [..] Wang M. ACS Appl Mater Interfaces. 2019-11-25
  • 著者らは、PBA-BADPにもとづくカチオン性脂質により、mRNAとともに表面にPBA基を提示するNPを自己組織化を介して形成することで、SAを過剰発現している癌細胞によるmRNAの取り込みを選択的に亢進した。
  • ルシフェラーゼ・レポ-タ発現実験からPBA-BADP/mRNA NPsの癌細胞取り込みレベルは正常細胞の300倍に達することを同定した。また、腫瘍抑制因子p53のmRNデリバリにより癌細胞の増殖の選択的阻害と、Cas9 mRNAのデリバリによりHeLa細胞選択的に標的遺伝子を高効率でノックアウトを実現した。
8. SpCas9-NGによるウサギの塩基編集の標的拡大と効率化
[出典] Highly efficient base editing with expanded targeting scope using SpCas9-NG in rabbits. Liu Z [..] Li Z. FASEB J. 2019-11-26
  • xCas9(3.7)によるウサギ遺伝子編集効率の向上を2019-04-27にMol Life Sci.に発表(*)した研究グループが今回、'NG' PAMを認識するSpCas9-NG を組み込んだ塩基編集ツールNG‐BE4maxとNG-ABEmaxにより、ウサギ胚において、'NGN' PAMを標的として、それぞれ、75-100&%と80-100%の置換効率を達成した (CRISPRメモ_2019/05/03[第6項] ウサギ遺伝子編集の向上)。
  • NG‐ABEmaxにより、'NGA' PAMを標的とするSp-ABEでは困難なヒトHoxc13遺伝子の p.Q271R ミスセンス変異をミミックする変異をF0世代で実現した。
9. 抗-CRISPRタンパク質AcrIIA5は広範なCas9オーソログを阻害する
[出典] AcrIIA5 Inhibits a Broad Range of Cas9 Orthologs by Preventing DNA Target Cleavage. Song G [..] Tian Y. Cell Rep. 2019-11-29.
  • 中国科学院生物物理研究所の研究グループが、抗-CRISPRタンパク質の一種であり、Streptococcus thermophilusのファージから同定されたAcrIIA5が、CRISPRシステムのII-A、II-BおよびII-Cの各タイプにわたる多様なCas9オーソログに対して、DNAへの結合は阻害しないが、DNAの切断を強力に阻害することを見出した。AcrIIA5はRuvCヌクレアーゼドメインの活性を阻害するが、HNHヌクレアーゼドメインには影響を及ぼさない 。
  • 左下図は原論文のGraphical Abstract引用、右下図は原論文 Figure 2 - IのCas9オーソログと一連のAcrII1, 2,  4および5の対応関係を引用
AcrIIA5 GA AcrIIA5 2
  • [AcrIIA5関連crisp_bio記事] CRISPRメモ_2018/07/26 [第2項] 毒性バクテリオファージの広範な抗-CRISPRタンパク質が、一連のCas9タンパク質を阻害する;CRISPRメモ_2019/11/18 -2 [第7項] 抗-CRISPRタンパク質AcrIIA5は、ゲノム編集に利用されているCas9のホモログ全てを強力に阻害する
10. Cas9とマウス由来の主要な 3ʼ-5ʼ DNA エキソヌクレアーゼTREX2を共にブタ受精卵にエレクトロポレーションすることで、モザイク変異を抑制
[出典] Suppression of mosaic mutation by co-delivery of CRISPR associated protein 9 and three-prime repair exonuclease 2 into porcine zygotes via electroporation. Yamashita S, Kogasaka Y, Hiradate Y, Tanemura K, Sendai Y. J Reprod Dev. 2019-11-24
  • 東北大学と全農飼料畜産中央研究所の研究グループが、Cas9とmTREX2の同時デリバリが胚盤胞の形成には影響を及ぼすことなく、Cas9単独に対して、モザイク変異を帯びていない胚盤胞の割合を増し、モザイク変異を帯びている胚盤胞の割合を抑制することを示した:Cas9 (5.6 ± 6.4%と92.6 ± 8.6%)からCas9 & mTREX2 (29.3 ± 4.5%と70.7 ± 4.5%)へ
11. [プロトコル] マウス骨髄由来初代マクロファージにおけるCRISPR/Cas9遺伝子ターゲッティング
[出典] [PROTOCOL] CRISPR/Cas9 Gene Targeting in Primary Mouse Bone Marrow-Derived Macrophages. Bailis W. In: Katz S., Rabinovich P. (eds) Cell Reprogramming for Immunotherapy. MIMB 2019-11-28.
  • レトロウイルスによるデリバリを介して遺伝子ターゲッティング
12. パーキンソン病の研究と療法に有用なハイスループットなCRISPRツールボックス
[出典] [レビュー] CRISPR System: A High-throughput Toolbox for Research and Treatment of Parkinson’s Disease. Safari F [..] Khademi F. Cell Mol Neurobiol. 2019-11-26
  • Shiraz University of Medical Sciences (イラン)に Case Western Reserve Universityの研究者が加わったグループによるレビュー:CRISPR/Cas9ゲノム編集技術;PDの病因と予防に関わる10種類の遺伝因子;CRISPR/Cas9による遺伝子編集実験例;PD病のin vivo/in vitroモデリング;CRISPRによるiPSCsゲノム編集の長所短所
13. 癌細胞がNK細胞に対する耐性を、NK細胞誘導IFN-γを介して獲得することを、ゲノムワイドCRISPRスクリーンにより同定
[出典] Genome-wide CRISPR screen reveals cancer cell resistance to NK cells induced by NK-derived IFN-gamma. Zhuang X, Veltri DP, Long EO. Front Immunol. Accepted 2019-11-25
 米国NIAID/NIHの研究チームは今回、ヒト慢性骨髄性白血病 (CML)細胞株K562とヒト初代NK細胞を共培養し、ゲノムワイドCRISPR機能喪失 (CML障害)スクリーンを行った。
  • 細胞傷害性受容体NKp30をコードするNCR3LG1欠損により、K562細胞がNK細胞に対する耐性を獲得し、抗原提示とIFNγのシグナル伝達のパスウエイを調節する一連の遺伝子の欠損がK562細胞のNK細胞に対する感受性を高め、また、IFNγの中和抗体もK562細胞のNK細胞に対する感受性を高めた。
  • NK細胞と共培養後のK562細胞において、NK細胞の細胞傷害活性を抑制するMHCクラスIの発現の亢進がインターフェロンγ受容体2 (IFNGR2)に依存し、また、TCGAのRNA-seqデータからIFNGR2の発現が低レベルである急性骨髄性白血病および淡明細胞型腎細胞癌の患者の全生存率が高いことも見出した。
  • 今回、NK細胞が産生するIFNγによるMHCクラスIの上方制御がK562細胞にNK細胞耐性をもたらすことが明らかになったことから、IFNγを標的とすることでNK細胞の抗癌性が高まることが示唆された。
14. BMPR1aのS-パルミトイル化が、神経幹細胞の分化運命を制御する
[出典] Palmitoylation of BMPR1a regulates neural stem cell fate. Wegleiter T, Buthey K [..] Jessbergera S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019-11-26
  • 神経幹細胞 (NSCs)は一生にわたり神経細胞とグリア細胞を生成する。S-パルミトイル化はS-アシル化の一種であり、タンパク質の可逆的な翻訳後修飾として知られている。
  • University of Zurichを主とする研究グループは今回、S-アシル化をプロファイリングし、骨形成タンパク質受容体1a  (BMPR1a)がマウスES細胞とNSCsにおいてS-シル化され、それが、骨形成タンパク質 (bone morphogenic protein, BMP)シグナル伝達に重要であることを同定した。CRISPR/Cas9によるBMPR1aのノックアウトがNSCsの増殖を抑制することも示した。