[出典] China’s CRISPR babies: Read exclusive excerpts from the unseen original research. Regalado A. MIT Technology Review. 2019-12-03
 2018年11月下旬にNatureJAMAに送られたと思われ、未発表のままの原稿を、法学者 (Hank Greely, Stanford U.)、不妊治療医 (Jeanne O’Brien, Shady Grove Fertility)、発生学者 (Rita Vassena, Eugin Group)ならびに遺伝子編集の専門家 (Fyodor Urnov, IGI/UC Berkeley)のチームで査読し、チームからのコメントを対応する原稿の一部 (キャプチャ画面)とともに、MIT Technology Reviewが公開した。

1. 産科医が著者に含まれていない。(出典の第1項と第7項を、ここでは、第1項に一体化)
 著者は、南方科技大学の賀建奎研究室のメンバーにAIDS支援ネットワークの代表Hua Bai生化学とゲノム工学を専門とするライス大学Michael Deemが加わった10名であり、被験者両親に直接接触していたはずの産科医が含まれていないのは何故か。プライバシーの保護のためなのか、何かを隠蔽するためなのか。
 Wall Street Journalの報道 (2019-05-10 12:44 pm ET)によると、研究グループから渡った血液サンプルがすり替えられていたとのことであり、 産科医は、何が進行しているのか、知らされていなかった可能性もある。

2. 著者らのデータ自体が、著者らの主張に反している (出典の第2項, 第5項および第13項を、ここでは、第2項に一体化)
 HIV耐性のヒトを生み出したと主張しているが、誘導された変異は、HIV耐性をもたらすとされているCCR 5 Δ32変異ではなく、HIV耐性をもたらすか否か不明は新たな変異であった。
また、CCR5遺伝子に両アレル変異がもたらされた胚は一つであり、他は、ヘテロ型変異であった。
 香港サミットなどで公開され、原稿に“supplementary”として付されているデータはモザイクに至ったことを示しているが、テキストにはモザイクに関する議論が無い。

3. 胚の遺伝子編集はHIVの感染抑止法として非現実的、特に、感染が最悪の状態の地域では。

4. 両親が同意するに至ったのは、一部では、不妊治療を受けるためであったのではないか。
 原稿自身にも書かれているように、HIV患者である父親からのHIV感染は、体外受精 (IVF)においてほぼ20年安全に利用されてきた精子洗浄によって防止できることから、胚ゲノム編集をする必要は全く無い。将来のHIV感染防止という目的も、胚ゲノム編集を正当化するには至らない。

6. オフターゲット編集
 原稿では、オフターゲット編集は1箇所であったとしていたが、なによりも、双子が由来する胚はオフターゲット編集が検証された胚ではなく、双子におけるゲノム編集の精度が評価されていない。また、胚を構成する全ての細胞のオフターゲット編集を、非破壊的に判定することは、そもそも、不可能である。

8. 双子の誕生時期が改竄されていた
 これも両親と双子のプライバシー保護を目的としてであろうが、双子は原稿にある11月ではなく、関係者によると10月誕生であった。

9. 適切な倫理的レビューが行われた不明
 原稿では、2017年3月にShenzhen Harmonicare Women's and Children's HospitalのMedical Ethics Committeeで実験計画が承認されたとし、http://www.chictr.org.cnに登録したと、簡略に記されているが、登録は、双子が誕生後のことであった。

10. HIVに対する免疫が有効か否かの前臨床試験を行っていない。
 原稿では、双子由来のCD4陽性T細胞のHIV暴露実験を行う予定 (will)としている。

11-12. 著者の役割分担、米国研究者も含む支援者や協力者、資金提供者、利益相反について、記述が無いまたは曖昧


[crisp_bio注]
  • 専門家チームは、論文原稿に基づいて、改めて、研究倫理の上でも生命倫理の上でも「胚ゲノム編集をすることを最優先とした無謀な実験」と判定したように思われる。
  • CRISPRbabies関連crisp_bio記事:2019-08-02 'CRISPRbabies'に至るまでと'CRISPRbabies'のこれから