[出典] Herpesviral Lytic Gene Functions Render the Viral Genome Susceptible to Novel Editing by CRISPR/Cas9. Oh HS, Neuhausser WM [..] Knipe DM. eLife 2019-12-2

 先行研究において、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9が、複製が進行している溶解感染時のHSV-1に対して抗ウイルス性を発揮することが報告されていたが、Harvard Medical Schoolなどの研究グループは今回、CRISPR/Cas9によって、溶解感染の防止に加えて、潜在感染からの再活性化の防止も可能なことを示した。なお、今後の展開を想定して小型のSaCas9を主とし、SpCas9をレファランスとして実験が進められた。
  • PCR合成したウイルス必須遺伝子DNAを標的とするSaCas9とSpCas9によるin vitroスクリーニングを経て切断活性が高い一連のsgRNAsを選択した。
  • 溶解感染について:ヒト線維芽細胞への感染時にindel変異誘導やDNA切断が進行して標的タンパク質やウイルスDNAのレベルが低下し、複製進行時にはそれらがさらに亢進し、複製自体も抑制された。
  • 潜伏感染と再活性化について:複製能を欠失したHSV-1 d109のウイルスと野生型HSV-1を利用して解析;潜伏感染状態でUL30-5を標的とするsgRNAによって、40-80%のウイルスゲノムにindel変異が誘導されたが、ウイルスDNA切断は発生せず、ウイルスDNAレベルも低下しなかった;再活性化時に、indel変異誘導が亢進し、また、ウイルスDNAの切断も発生し、標的タンパク質レベルとウイルスDNAレベルおよび複製が抑制された。
  • 研究グループは、クロマチン・ローディングとDNA損傷修復パスウエイを抑制するHSV-1 ICP0タンパク質がSaCas9によるウイルスDNA編集を亢進したことからも、クロマチンを開いた状態にし、DNA損傷修復応答を阻害することが、CRISPR/Cas9による抗ウイルス療法の可能性を広げるとした。
  • 下図は、原論文Figure 10から引用したモデル図
Fig. 10