1. CRISPR/Cas9は、蚊と共生細菌の相互作用研究のツールとして有用である
[出典] CRISPR/Cas9-mediated gene deletion of the ompA gene in symbiotic Cedecea neteri impairs biofilm formation and reduces gut colonization of Aedes aegypti mosquitoes. Hegde S [..] Hughes GL. PLoS Negl Trop Dis. 2019-12-02.
 Liverpool School of Tropical Medicine, Chulalongkorn UniversityおよびUniversity of Texas Medical Branchの研究グループは、ネッタイシマカのマイクロバイオームによく見られる共生細菌C. neteriの外膜タンパ ク質遺伝子ompAをCRISPR/Cas9によりノックアウトすると、C. neteriのバイオフィルム形成と腸管への定着レベルが低下することを示し、また、CRISPR/Cas9によりC. neteriにノックインした蛍光タンパク質遺伝子または薬剤耐性遺伝子がネッタイシマカ腸内で機能することを示した。

2. CRISPR/Cas9で誘導した両アレル変異体を、Cas12aにもとづくバイオセンシング・プラットフォームにより、精密かつ効率的にスクリーニングする
[出典] CRISPR/Cas12a-based biosensing platform for precise and efficient screening of CRISPR/Cas9-induced biallelic mutants. Xiao G [..] Zhang G. Talanta. 2019-12-07.
 Cas12aのコラテラルssDNA切断活性を利用した生体高分子の超高感度な検出システム (バイオセンシング・プラットフォーム)の開発が続いている [*]。南方科技大学を主とする中国研究グループは今回その技術に基づいて、CRISPR/Cas9によるゲノム編集の結果から両アレル変異細胞を、野生型細胞とヘテロ変異細胞から蛍光強度によって選別することを可能とした。

3.  マウスHipp11遺伝子間領域はヒト遺伝子のノックイン実験に有用である
[出典] Highly efficient CRISPR-targeting of the murine Hipp11 intergenic region supports inducible human transgene expression. Browning J [..] Kelly VP. Mol Biol Rep. 2019-12-06.
 Trinity College Dublinと筑波大学の研究グループはマウスにおいて遺伝子ノックインに利用されてきたセーフ・ハーバー部位5種類の特徴を論じた上で、Eif4enif1遺伝子とDrg1遺伝子の間に位置する遺伝子間領域Hipp11 (Isg2)に、CRISPR/Cas9 HDRを介して、7.5 kbとサイズの大きなヒトCD1A遺伝子のプロモーターとコーディング領域のノックインを試み、CD1A1コピーの発現をマクロファージと樹状細胞に誘導することに成功した。

4. CRISPRaによる頭蓋骨損傷修復をラットで実証
[出典] Co-Activation of Endogenous Wnt10b and Foxc2 by CRISPR Activation (CRISPRa) Enhances BMSCs Osteogenesis and Promotes Calvarial Bone Regeneration. Hsu MN, Huang KL [..] Cheng YH, Hu YC. Molecular Therapy. 2019-12-06
 国立清華大学を主とする台湾の研究グループは、CRISPRaによってWntシグナル伝達におけるWnt10bとFoxc2を活性化することで、骨髄由来間葉系幹細胞 (BMSCs)からの脂肪生成経路を抑制し、骨形成経路を選択的に活性化し、頭蓋骨損傷修復を亢進することが可能なことを示した。なお、CRISPRaシステムのデリバリーには、ハイブリッド・バキュロウイルス・ベクターを利用した。

5. CRISPR-CasがHDRを介したもたらす結果の多様性を検証する
[出典] Understanding the diversity of genetic outcomes from CRISPR-Cas generated homology-directed repair. Sansbury BM, Hewes AM, Kmiec EB. Commun Biol. 2019-12-06.
 Gene Editing Institute (Newark)/U Delawareの研究グループは、CRISPR-Cas HDRを介した遺伝子疾患の変異修復の成功が伝えられる中で、意図しない遺伝子編集の報告が伴っていないとし、先行研究で開発していた無細胞系アッセイシステムにより、CRISPR-Cas HDRがもたらす編集結果の偏りのない網羅的検証を試みた。
 Cas9またはCas12aのRNPによるssDNAドナーテンプレート (センス鎖とアンチセンス鎖)を介したDSB修復結果を検証し、CRISPR-Cas HDRによる精密な編集が、Casタンパク質とドナーDNAテンプレートの極性に依存することを見出した (実験のワークフローと多様な編集結果のモデル図についてそれぞれFig. 1とFIg. 2から引用した左下図と右下図参照)

FIg. 1 Fig. 2

6. CRISPRLearner: 深層学習にもとづく、CRISPR/Cas9 sgRNAのオンターゲット切断効率の予測システム
[出典] CRISPRLearner: A Deep Learning-Based System to Predict CRISPR/Cas9 sgRNA On-Target Cleavage Efficiency. Dimauro G [..] Caivano D. Electronics. 2019-12-04.
 University of Bariを主とするイタリアの研究グループが畳み込みニューラルネットワーク (CNN)に基づく予測システムを開発し、10種類のデータセットについて、DeepCas9と比較し、データセットによってはDeepCas9に優る結果を得た (Table 3引用下図参照)Table 3
7. 伝染性喉頭気管炎ウイルス (ILTV)に対して、NHEJ-CRISPR/Cas9による病原性因子削除とCre-Loxシステムによる抗原挿入を同時に施すことで、安定したワクチン・ベクターを作出
[出典] Simultaneous Deletion of Virulence Factors and Insertion of Antigens into the Infectious Laryngotracheitis Virus Using NHEJ-CRISPR/Cas9 and Cre–Lox System for Construction of a Stable Vaccine Vector. Atasoy MO, Rohaim MA, Munir M. Vaccines (Basel). 2019-12-05.
 ILTV (Infectious laryngotracheitis virus)は、異種遺伝子を受容し、病原性が低く、細胞免疫と液性免疫を誘導することから、鳥インフルエンザウイルスに対する組み換えワクチン開発のベクター・プラットフォームとして期待されている。Lancaster Universityの研究チームは今回、表題の手法によって、鳥類用ワクチンの開発が進むとした。

8. 遺伝子編集技術によるCCR5ネガディブ幹細胞移植のドナープール拡張
[出典] [In Translation] Gene Editing Expands the Donor Pool for CCR5-Negative Stem Cell Transplants. Cannon PM. Cell Stem Cell. 2019-12-05.
移植前の造血幹細胞にてCCR5をノックアウトする手法によるHIV療法の可能性を示したXu L.らの論文 (NEJM 2019-09-11) [*]をハイライト。

9. mpCRISTAR: 天然物生合成遺伝子クラスター (BGC)の新たなリファクタリング法
[出典] mpCRISTAR: Multiple plasmid approach for CRISPR/Cas9 and TAR-mediated multiplexed refactoring of natural product biosynthetic gene clusters. Kim H, Ji CH, Je HW, Kim JP, Kang HS. ACS Synth Biol. 2019-12-04
 著者らは、異なる栄養要求性マーカを帯びた多重なCRISPRプラスミドから多重なgRNAsを同時に発現させTAR (transformation-associated recombination)を介して、酵母のアクチノロージン生合成経路をモデルとして、複数の内在プロモーターを効率的に合成プロモーターに置換するBGCのリファクタリングを実現し、この手法をmpCRISTARと称した。

10. 果樹に対する侵襲性害虫D. suzukii (オウトウショウジョウバエ)のCRISPR/Cas9遺伝子編集ツールの性能向上
[出典] Improvement and use of CRISPR/Cas9 to engineer a sperm-marking strain for the invasive fruit pest Drosophila suzukii. Ahmed HMM, Hildebrand L, Wimmer EA. BMC Biotechnol. 2019-12-05
 Göttingen Center for Molecular BiosciencesとFaculty of Agriculture-University of Khartoumの研究グループは今回、gRNAと Cas9の発現をそれぞれ、D. suzukii内在のプロモーターU6と熱ショックタンパク質70 (hsp70)で駆動することで、先行研究で利用されたRDPよりも効率的なゲノム編集を実現した。また、精子形成特異的beta-2-tubulin (β2t)遺伝子のプロモーターを同定・クローニングし、精子の蛍光標識を実現した。

11. CRISPR/Cas9によるABC トランスポーターの2種類のホモログへの変異導入が、トマトに寄生植物Phelipanche aegyptiacaに対する耐性をもたらす
[出典] Mutagenesis of two homologs ATP Binding cassette protein in tomato by CRISPR/Cas9 provide resistance against the plant parasite Phelipanche aegyptiaca. Bari VK, Nassar JA, Meir A, Aly R. bioRxv. 2019-12-10.
 CRISPR/Cas9による植物由来カルテノイド誘導体ストリゴラクトンの生合成を触媒する遺伝子(CCD8)への変異誘発がトマトにP. aegyptiaca耐性をもたらすことを報告した (Sci Rep, 2019) Agricultural Research Organization (Israel)の研究チームは今回、ABCトランスポーターへの変異導入が、ストリゴラクトン (SL)生合成関連遺伝子 (CCD8MAX1)の発現抑制を介して、トマトに寄生雑草に対する耐性をもたらすことを明らかにした。