1. CRISPR-Cas9でSOD1変異遺伝子を削除すると筋萎縮性側索硬化症 (ALS)モデルマウスの寿命が延びる
[出典] The deletion of mutant SOD1 via CRISPR/Cas9/sgRNA prolongs survival in an amyotrophic lateral sclerosis mouse model. Duan W [..] Song X, Li C. Mol Ther. 2019-12-09
 河北医科大学第二医院/河北省神経学研究室などの研究グループが、SOD1G93AトランスジェニックマウスのSOD1変異遺伝子をAAV-SaCas9-sgRNAシステムによって削除することで、マウスの寿命が54.6%延び、また、ALSの症状が顕著に改善されることを見出した。オフターゲット作用は、ディープシーケンシングでは検出されなかった。

2. ヒト白血病細胞株HL60とKG1において、サバイビンをコードするBIRC5遺伝子をCIRPSR/Cas9でノックアウトすると、アポトーシスが誘導され細胞増殖が阻害される
[出典] Knockout Of BIRC5 Gene By CRISPR/Cas9 Induces Apoptosis And Inhibits Cell Proliferation In Leukemic Cell Lines, HL60 And KG1. Narimani M, Sharifi M, Jalili A. Blood Lymphat Cancer. 2019-11-27
 CRISPR/Cas9とsgRNAのプラスミドはLipofectamine 3000で送達した。

3.  CRISPR技術を駆使して、ARF遺伝子座のシスエレメントが、クロマチンの長距離相互作用を介してp16INK4A発現を抑制することを同定
[出典] A cis-element within the ARF locus mediates repression of p16INK4Aexpression via long-range chromatin interactions. Zhang Y, Hyle J, Wright S [..] Li C. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019-12-09
 多くの癌細胞においてp16INK4Ap15INK4Bおよびp14ARF(マウスp19Arf)をコードするINK4/ARF (CDKN2A/B)が機能を喪失している。一方、老齢化の過程でその発現レベルが上昇すると細胞老化と組織変性疾患が進行する。
 St. Jude Children’s Research Hospitalに広州医科大学が加わった研究グループは今回、p16INK4Aの転写調節機構を詳らかにすることを目指して、B-ALL患者由来細胞にCRISPR-Cas9 HDRを介してp16INK4Aのストップコドンの上流にmCherryをノックインしたレポータ細胞 (p16INK4A-P2A-mCherry)において、 p16INK4Aを含むTAD (topologically associating domain)全域に広がるオープンクロマチン・ノンコーディング領域(ATAC-seqとH3K27ac修飾領域)を標的とするCRISPR-Cas9スクリーニングを行った。
 その結果、ARFプロモータに隣接し、クロマチンの高次構造 (ルーピング)を介してp16INK4Aの発現を抑制するシスエレメントを同定した。このシスエレメントをCRISPRi (dCas9-KRAB)で抑制することで、ARF/p16INK4Aの接触が阻害され、p16INK4Aの発現が再活性化した。
 また、1,639種類のヒト転写因子を標的とするCRISPRスクリーニングから、ZNF217を含むp16INK4Aの調節を阻害する転写因子候補を同定した。

4. CRISPR Cas9 KOスクリーンとCRISPRaスクリーンにより、PARP阻害剤オラパリブに対する応答を決定する因子を同定
[出典] Identification of regulators of poly-ADP-ribose polymerase (PARP) inhibitor response through complementary CRISPR knockout and activation screens. Clements KE [..] Moldovan GL. bioRxiv. 2019-12-11
 PARP阻害剤 (PARPi)は、BRCA2の変異などによりDNA二本鎖切断 (DSB)の相同組換え修復が機能しなくなった癌細胞に対して目覚ましい治療効果をあげてきたが、この修復機構が不全に陥った癌患者全てに奏功するわけではない。
 Pennsylvania State University College of MedicineにRutgers Cancer Institute of New Jerseyが加わった研究グループは、ゲノムワイドのCRISPR KOとCRISPRaを組み合わせて、野生型のHeLa細胞 (PARPi耐性細胞)とBRCA2ノックアウトHeLa細胞 (PARPi感受性細胞)それぞれについて、PARPi応答の決定因子をスクリーンし、BRCA2欠損細胞におけるアセチル転移酵素TIP60とE3ユビキチンリガーゼのHUWE1の欠損が、PARPi耐性をもたらすことを見出した。