[出典] Extensive Mammalian Germline Genome Engineering. Yue Y, Kan Y, Xu W, Zhao HY, Zhou X, Song X [..]  Qin W, Gao Y, Wei H, Church GM, Yang L. bioRixv. 2019-12-19/20.  

 ブタの臓器による移植医療を実現するためには、ブタ内在性レトロウイルス (PERVs)の感染リスクと、移植片拒絶反応のリスクを回避する手立てが必要である。
 eGenesis、Harvard U、雲南農業大学などの米中およびデンマークの研究グループは先行研究で、CRISPR-Cas9を介してPERVエレメントの25コピーすべてをノックアウト(以下、PERVKO)し、PERVフリーなブタを樹立していた [*]
 今回、eGenesis, Harvard U、雲南農業大学、Qihan Bio (杭州市)などの米中の研究グループは、ヒトにとっての異種抗原にあたる3因子(GGTA1, CMAH, B4GALNT2)のノックアウトと9種類のヒト遺伝子(transgenes)ノックインを加えた3KO 9TGブタを樹立し、続いて、PERVsを全てノックアウトすることで、PERVKO 3KO 9TGブタの樹立に成功し、ブタ臓器による移植医療の実現にまた一歩近づくとともに、合成生物学の可能性を示した。
  • ブタの耳の線維芽細胞に、3因子の遺伝子を標的とするCRISP-Cas9システムと、PiggyBacトランスポザーゼと9種類のヒト遺伝子 (hCD46, hCD55, hCD59, hB2M, hHLA-E, hCD47, hTHBD, hTFPI, およびhCD39) を帯びたプラスミドを、それぞれエレクトロポレーションした。その結果から、3KO 9TGが実現したクローンを選択・増殖し、体細胞核移植 (SCNT)を経て、3KO 9TGブタを樹立した。
  • 次に、3KO 9TGブタ線維芽細胞に、PERVエレメント25コピーに共通な逆転写酵素pol遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9システムをエレクトロポレーションし、pol遺伝子に活性部位を含む大規模な欠損が生じたクローンを選択しSCNTを経て、PERVKO 3KO 9TGブタを樹立した。
  • オフターゲット編集については、野生型、3KO·9TGおよび PERVKO 3KO 9TGの耳の線維芽細胞において、10x WGSで検証した。オフターゲット変異誘導が2~3ヶ所に見られたが、タンパク質コーディングには影響を与えない変異であり、また、構造多型も見られず、PERVKO 3KO 9TGのゲノム安定性が確かめられた。
  • 設計通りのノックアウトとノックインが達成されたことを、RNA-seqによる遺伝子発現プロファイルとタンパク質発現プロファイルにより検証した。
  • PERVKO 3KO 9TGブタの生理機能は正常で繁殖性を備え、改変したゲノムは継代された。
  • In vitroアッセイにて、PERVKO 3KO 9TGブタ組織が、ヒトの液性と細胞性の免疫反応、および、調節不全凝固から免れることも見出した。
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