[論文] An intra-tumoral niche maintains and differentiates stem-like CD8 T cells. Jansen CS, Prokhnevska N [..] Kissick H. Nature 2019-12-11. [NEWS AND VIEWS] Identifying the source of tumour-infiltrating T cells. Kumar Vodnala S, Restifo NP. Nature 2019-12-11

 患者自身の免疫細胞を利活用する養子免疫細胞療法 (adoptive cell therapy, ACT)は、進行した血液癌や固形癌の患者に持続的な抗腫瘍性をもたらし、癌療法を革新した。しかし、ACTの恩恵は全ての患者には行き渡らない。細胞障害性T細胞の腫瘍組織への浸潤は、癌療法への応答ひいては生存期間と相関することが知られている。しかし、この浸潤は全ての患者と腫瘍組織に同じように起こるわけではない。Emory University School of MedicineとNational Cancer Instituteなどの研究グループは今回、細胞障害性CD8 陽性T細胞のヒト腫瘍への浸潤の機構解明に取り組んだ。
  • 切除手術を受けた腎臓癌患者68名に由来する腫瘍組織をフローサイトメトリーで分析し、CD8 T細胞浸潤が全細胞に占める割合が由来によって0.002%から>20%の間で分散しており、手術後の癌の進行が2.2%未満の患者において有意に速い (ハザード比 https://oncolo.jp/dictionary/hr 3.84)ことを見出した。CD8 T細胞浸性は癌の進行度や患者の年齢と相関しなかった。
  • 腫瘍浸潤T細胞集団は2つの細胞集団で構成されていた。一つは、TCF1を発現している幹細胞様CD8 T細胞とその子孫細胞の集団であった。もう一つは、それらと関連したクローンではあるが、増殖せず、抗原による再活性化に応答せず、PD-1をはじめとするチェックポイント分子を高発現している、いわゆる疲弊した、最終分化細胞集団であった。この疲弊した細胞集団の存在が、興味深いことに、腫瘍浸潤T細胞の総数と相関し、かつ、癌の進行抑制と相関していた。
  • 腎臓癌患者の腫瘍組織で発見したこの現象は、抗原との間で続く戦いの中で、チェックポイント分子が発現・蓄積し、T細胞が癌細胞に対する細胞障害性を失っていくモデル、疲弊モデル、と整合しない。研究グループは幹細胞様細胞と最終分化細胞の機能と、両者に見られたT細胞受容体 (TCRs)が有意に重なりあっていたことから、研究グループは、最終分化細胞が幹細胞様幹細胞から分化するモデルを提唱した。
  • このモデルの成立には、二次リンパ組織におけるT細胞領域に相当する領域の存在が、腫瘍組織に内在していることが前提となる。T細胞は、ニ次リンパ組織において抗原提示細胞と相互作用することで、抗原特異的な免疫応答活性を獲得する。研究グループは、腎臓癌に加えて、前立腺癌および膀胱癌の腫瘍組織に浸潤している抗原提示細胞 (APCs)集団を分析し、腫瘍組織において樹状細胞の存在と幹細胞様CD8 T細胞が有意に相関することを同定した。マクロファージの存在と幹細胞様CD8 T細胞数またはCD8 T細胞数とは相関しなかった。
  • APCsと幹細胞様CD8 T細胞の分布が相関することを、さら蛍光免疫染色法によって同定した。TCF1(+) CD8 T細胞が、MHC-II陽性の細胞が高密度 (5 細胞/10,000µm2)に存在する領域 (研究グループはimmune nicheと表記)に局在していたのに対して、TCF1(-) CD8 T細胞は、組織全体に分布しimmune nicheへの偏りは見られなかった。さらに、腎臓癌患者由来組織において、immune nichesの数と手術後の癌の進行抑制とが相関し、この相関は腫瘍細胞のPD-L1発現如何の影響を受けないことも、同定した。
  • こうして、immune niches発生機構の解明、腫瘍がimmune nichesの生成・持続を回避する機構の解明といった新たな課題が生まれた。
NEWS & VIEWS関連ツイートを以下に引用
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