[出典]
  • [News & Views] Predicting health and life span with the deep plasma proteome. Emilsson V, Gudnason V, LL Jennings.Nat Med. 2019-12-05.  
  •  [論文1] Undulating changes in human plasma proteome profiles across the lifespan. Lehallier B [..] Wyss-Coray T. Nat Med. 2019-12-05 (bioRxiv. 2019-09-01). 
  • [論文2] Plasma protein patterns as comprehensive indicators of health. Williams SA [..] Ganz P, Wareham NJ. Nat Med. 2019-12-02.
 老化は器官の劣化を伴い慢性疾患のリスク因子である。これまでに、老齢マウスを若齢マウスの間でparabiosis( 並体結合)により血液循環を共有させると老齢マウスの脳を始めとする多くの器官が若返り、また、若齢マウスの血漿を老齢マウスに注入することでも脳の老化が抑制されることが、報告されてきた。それとともに、この現象に関与する因子として、血中を循環するタンパク質が注目を集めてきた。

 今回、Lehallier (Stanford U)らWilliams (SomaLogic)ら、それぞれの国際共同研究グループが、ヒト血漿中の数百のタンパク質と一連の健康アウトカムとの対応関係を、SOMAmers (Slow Off-rate Modified Aptamers) [1-4]に基づいたSomaScan技術によって探った。通常のアプタマーではなくSOMAmer/SomaScan技術を利用することで、単一の血液サンプルから5,000種類のタンパク質を定量可能なことは、先行研究で、実証されていた [5-6]

[論文1] 

 INTERVALコホート (Lancet, 2017)とLonGenityコホート (Am J Cardiol, 2017)に由来する4,331名の健常者 (18-95歳)を対象として、2,925種類の血漿タンパク質のレベルを測定し、年齢とともにレベルが変動する (age-related changes)タンパク質 (以下、A - P)1,379種類を同定した。
 その結果、年齢に応じたA - Pの変動の仕方がタンパク質ごとに異なるが (軌跡が異なるが)、年齢に対して線形に変動するA - P2種類と非線形に変動するA - P群6種類に分類できることを見出した。その上で、プロテオームとしての変動を数値化したところ、変動のピークが、34歳、60歳および78歳の年齢に出現した (News & Views Fig. 1引用下図 a 参照)。
  • 注目すべきことに、1,379種類のタンパク質のうち895種類は男女間で有意に異なっおり、男性と女性の老化過程が異なることを裏付け、また、性が実験パラメーターとして必須であることが改めて証明された。
  • GOとKEGGに基づくパスウエイ解析から、性によって変動するタンパク質の機能については、さらに多くのタンパク質を解析する必要が示唆されたが、A - Pについては、血液に関連するパスウエイに関与するタンパク質が多く見られた。
  • 続いて、血漿プロテオームのデータに基づいて生物学的寿命を推定する線形モデルの開発を試み、性差が見られない373種類のタンパク質を'部品'とする'proteomic clock' (以下、 ProteC)を定義することに成功した。興味深いことに、ProteC推定年齢が実年齢よりも若い集団は、実年齢相応には衰えていない認知機能と身体機能を示した。また、このモデルの部品を9種類にまでにとどめでも推定精度はほとんど変わらなかった。
  • マウスについても1,305種類のタンパク質をSomaScanで測定解析し、172種類のA - Pを同定し、そのうち46種類がヒトのA - Pと相同であり、また、その多くが異時性並体結合実験において老齢・若齢マウスで変動するタンパク質であった。
  • 研究グループはさらに、軌跡A - P間で異なることに注目した。各タンパク質の年齢に依存する軌跡をクラスタ分析し、冒頭にあったように、線形な軌跡2種類と、非線形な軌跡6種類の計8種類のクラスタを識別し、そのうち6種類が、特定のパスウエイに対応することを同定した。例えば、血液の中でマイクロパーティクルに存在するタンパク質群のレベルは年齢とともに一様に減少し、他の血液関連パスウエイのタンパク質群 (例 ヘパリン結合、グリコサミノグリカン結合)のレベルは、年齢とともに2段階で上昇し、軸索ガイダンスとEPH-エフリンシグナル伝達に関与するタンパク質群のレベルは60歳までほぼ一定でその後指数関数的に上昇した。
  • 年齢に対してそのレベルが非線形で変化するタンパク質の軌跡を数値化するために、新たなソフトウエア (differential expression-sliding window analysis , DE-SWAN)を開発し、各年齢で発現レベルが有意に変動するタンパク質数を年齢に対してプロットしたところ3つのピークが現れ、その年齢で血漿プロテオームが大きく変動することを示した。また、それぞれのピークを構成するタンパク質セットは変動した。このそれぞれのピークに貢献するタンパク質が関与するパスウエイおよび疾患についても分析し、パスウエイについては34歳と60歳のピークでは線形モデルと非線型モデルの結果が重なりあい、また、例えば、アルツハイマー病に関連するタンパク質は34歳のピークには貢献せず、60歳/78歳のピークに貢献することを見出した。
  • [関連Webサイト] Aging Plasma Proteome
  • [関連ブログ] NIH Director's Blog: Aging Research: Blood Proteins Show Your Age. Posted on December 17th, 2019 by Dr. Francis Collins. 
  • [厄年] "厄年てーと数えで、男は25、42、61、女は19、33、37といわれているんだな。なにせ、寿命が短けい時からのはなしなんで、男の厄の61を78に当てはめてみるとな、厄はそれぞれ32、54、78になるって寸法よ、血漿プロテオームやらの'変動'と辻褄あうじゃね〜か"、おあとがよろしいようで。
[論文2] Williams

 5種類の互いに独立なコホートからの16,894名について~5,000種類の血漿中タンパク質を分析し、そのデータにもとづいて、将来の循環器疾患、糖尿病、脂肪肝、運動性などの健康関連アウトプットを予測するための教師付き機械学習モデルを開発し、分析した13種類のフェノタイプのうち11種類について予測するに足るタンパク質パネルの構築に成功した。これらのパネルは、13種類から375種類の血漿タンパク質で構成された。

[論文1の参考文献]
  1. Somalogic blog 2016-03-08
  2. Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery. PLoS One. 2010 Dec 7;5(12):e15004
  3. From SOMAmer-Based Biomarker Discovery to Diagnostic and Clinical Applications: A SOMAmer-Based, Streamlined Multiplex Proteomic Assay. Kraemer S [..] Sanders G. PLoS One. 2011;6(10):e26332. Online 2011 Oct 17.
  4. Nucleic Acid Ligands With Protein-like Side Chains: Modified Aptamers and Their Use as Diagnostic and Therapeutic Agents. Mol Ther Nucleic Acids. 2014 Oct; 3(10): e201. Online 2014-10-07
  5. Co-regulatory networks of human serum proteins link genetics to disease. Emilsson V [..]  Gudnason V. Science. 2018 Aug 24;361(6404):769-773. Online 2018 Aug 2.
  6. Genomic atlas of the human plasma proteome. Sun BB [..] Butterworth AS. Nature. 2018 Jun;558(7708):73-79.  Online 2018 Jun 6.