1. 超音波照射によるソノポレーション https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2147.html を介してナノリポソーム内包RNPを細胞へ送達し、RNPによる遺伝子編集を実現
[出典] Ultrasound-activated particles as CRISPR/Cas9 delivery system for androgenic alopecia therapy. Ryu JY [..] Kim HP, Yoon TJ. Biomaterials 2019-12-28
 亜洲大学校 (Ajou U)の研究グループは今回、プラスミドやウイルスによるデリバリーに替わる手法として、Cas9/sgRNA RNPを内包したナノリポソームにマイクロバブルを組み合わせることで、超音波照射によって細胞膜の透過性が一時的に向上するsonoporationの技術を利用して、ナノリポソームを標的細胞に送達し、RNPによる遺伝子編集を実現した。具体的には男性型脱毛症モデル動物の毛乳頭細胞においてRNPを介して5α-還元酵素の異種であるSRD5A2タンパク質をノックダウンし、発毛を促すことに成功した。

2. [特許公開] 超音波照射により生体分子を真核/原核生物の細胞またはエンベロープウイルスへ導入する
[出典] US20190381507A1. Device and method for intracellular delivery of biomolecular cargo via acoustic wave exposure.
  • 公開日 2019-12-19;発明者 Weiss PS, Jonas SJ, Wilkinson D, Stieg AZ, Belling J.
  • 権利者: The Regents of the University of California
  • 注:サンプルに超音波を照射し一時的に細胞膜に穴を開け生体分子を細胞へ導入可能とするマイクロ流体デバイスを開発;Cas9 mRNA、gRNA、Cas9タンパク質、RNPなどの送達にも利用可能
3. AlleleProfile R: ゲノム編集によって生じた配列の変異を同定しプロファイルするバッチ処理プログラム
[出典] AlleleProfileR: A versatile tool to identify and profile sequence variants in edited genomes. Bruyneel AAN, Colas AR, Karakikes I, Mercola M. PLoS One. 2019-12-26
 Stanford School of Medicineを主とする研究チームは、NHEJ/HDRまたはBase Editorを介した遺伝子編集の結果を解析する既存のツール (Cas-Analyzer; CRISPR-GA; CRISPResso; AGEseq; CrispRVariants; EditR; BE-Analyzer)が対応していない大規模な欠失の結果生じるキメラリード (リードが参照ゲノム上で欠失領域の上流と下流にアラインする現象;スプリット・リードとも言う)に対応可能な解析プログラムを、R言語とC++により開発し、AlleleProfileRはGitHubおよびDocker Hubから提供した。

4. CRISPRシステムとレトロン・システム併用により、大腸菌における多重な置換変異の誘導、そのトラッキングおよび機能スクリーニングを実現
[出典] Multiplex generation, tracking, and functional screening of substitution mutants using a CRISPR/retron system. Lim H, Jun S [..] Lee H, Bang D. bioRxiv. 2020-01-20
 プール型gRNAライブラリーによるノックアウトスクリーニングやCRISPRi/aスクリーニングが近年、急速に広がっている。プール型gRNAライブラリーによる置換変異のスクリーニングの広がりは、HDRのテンプレートとなるドナーDNAの供給がボトルネックとなって遅れていたところ、2018年にレトロンにもとづくドナーssDNAsの大量生産を組み込んだハイスループットなCas9遺伝子編集システムCRISPEYが開発され酵母で実証された [Cell, 2018; crisp_bio記事]。
 延世大学校と慶熙大学校の研究グループは今回、sgRNA発現領域にレトロン・コーディング領域を組み合わせたプラスミドを設計しCRISPRシステムとレトロン・システムを組合せることで、大腸菌に1回の実験で数千の変異を導入し低分子への応答や適応度の変化に関するフェノタイプスクリーニングを実現した。なお、さまざまな変異体のレベルは、プラスミドのレトロン・コーディング領域に配置したmsdと相関することから、共通するプライマーでmsdを増幅することで判定可能である。

[関連crisp_bio記事とレトロン論文]
  1. CRISPRメモ_2018/09/24 [第1項] CRISPEY:超並列精密ゲノム編集による機能ゲノミクス
  2. CRISPR関連文献メモ_2016/01/30 [第2項] [論文] CRMAGE: CRISPRによる多重自動化ゲノム工学法 (MAGE)の最適化
  3. Retrons and their applications in genome engineering. Simon AJ, Ellington AD, Finkelstein IJ. Nucleic Acids Res. 2019-12-02
5. CRISPR-Cas9による草食動物クモダニの標的への変異誘導
[出典] Targeted mutagenesis using CRISPR-Cas9 in the chelicerate herbivore Tetranychus urticae. Dermauw W [..] Van Leeuwen T. bioRxiv. 2019-12-27
 節足動物門鋏角亜門のCRISPR-Cas9による遺伝子編集や形質転換はこれまで報告されてこなかった。Ghent UniversityとInstitute of Molecular Biology and Biotechnology (Crete)の研究グループは今回、フィトエン不飽和化酵素遺伝子を標的とするsgRNAsとCas9を処女雌の卵巣にインジェクションし、2種類の変異体を樹立した。

6. [プロトコル] 中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV)・モデルマウスの作出
[出典] Genetically Engineering a Susceptible Mouse Model for MERS-CoV-Induced Acute Respiratory Distress Syndrome. Leist SR, Cockrell AS. In: Vijay R. (eds) MERS Coronavirus. MIMB 2918012-28.
 MERS-CoVはマウス、ハムスターおよびフェレットの気道では増殖しないことから、その小動物モデルが実現されていなかったが、ヒトのジペプチジルペプチダーゼ (hDPP4)がMERS-CoV感染に関与する受容体であることが同定されたことを手がかりに、University of North Carolina-Chapel Hillの研究グループはCRISPR/Cas9によりマウスDPP4 (mDPP4)の2種類のアミノ酸 (A188とT330)を変異させることで、MERS-CoVモデルマウス (288–330+/+モデルマウス)を作出した。