[出典] Near real-time intraoperative brain tumor diagnosis using stimulated Raman histology and deep neural networks. Tollon TC [..] Orringer DA. Nat Med. 2020-01-06
Neurosurgery. 2019 Sep; 66(Supplement. 1): nyz310_634

背景
  • 癌外科手術の安全と効果は術中病理診断に左右される。現在行われている術中迅速病理組織診断は、一部の先端的施設を除いて、手術室から病理診断ラボへ運ばれた検体から、熟練した技師がヘマトキシリン・エオジン染色 (HE染色)をへてスライド切片を調整し、病理医が顕微鏡画像から診断する流れをたどり、診断結果が手術室へフィードバックされるまでに、20~30分を要する。
  • 臨床現場では熟練した病理医の不足と偏在も問題である (2017年の報告によると、米国では年に1,100万件のバイオプシー検体が診断対象とされていた)。
成果
 University of Michigan、University of Miami、Columbia University、New York University、UCSFおよびInvenio Imagingの研究グループは今回、検体からの高精度な仮想的HE染色スライド切片イメージを導出可能とした誘導ラマン組織学 (stimulated Raman histology, SRH) [1]に、深層・畳み込みニューラルネットワーク (CNN)技術を組み合わせることで、ベッドサイドでの準リアルタイム (< 150秒)での術中'ほぼリアルタイム'自動診断を実現した [YouTube引用動画参照 (音声付き)]
  • CNNは、患者415人に由来するSRHイメージ250万例を、悪性神経膠腫、リンパ腫、転移腫瘍、骨髄膜腫など13種類のカテゴリーに分類する学習をさせた。
  • 3つのセンターでの前向き臨床試験278例 (脳腫瘍切除手術とてんかん手術)において、CNNによるSRH画像診断の精度は94.6%であり、従来の組織イメージに基づく病理医による診断の精度93.9%に、匹敵した。
  • CNN判定のエラーと病理医の判定エラーのタイプは異なったことから、AI (CNN)と専門家 (病理医)が共同することで、精度100%の実現も夢ではない。
  • CNNは、SRHイメージからのカテゴリー判定に加えて、腫瘍浸潤領域、腫瘍非浸潤領域および診断困難な領域をpキセル単位で識別することも可能にした。
参考論文とビデオ
  1. Rapid intraoperative histology of unprocessed surgical specimens via fibre-laser-based stimulated Raman scattering microscopy. Orringer DA [..] Camelo-Piragua S.Nat Biomed Eng. 2017-02-06
  2. ビデオ:Artificial Intelligence Improves Brain Tumor Diagnosis. YouTube (1m 24s) 2020-01-06.