[出典]
  1. Structure and Mechanism of a Cyclic Trinucleotide-Activated Bacterial Endonuclease Mediating Bacteriophage Immunity. Liu RK [..] Corbett KD. Mol Cell. 2020-01-10PDB IDs: E. coli NucC (6P7O, 6P7Q, 6P7P); Pseudomonas aeruginosa NucC (6Q1H); Vibrio metoecus NucC (6UXG, 6UXF)
  2. HORMA Domain Proteins and a Trip13-like ATPase Regulate Bacterial cGAS-like Enzymes to Mediate Bacteriophage Immunity. Ye Q [..] Cornett KD. Mol Cell. 2020-01-10
 UCSDの研究グループは今回、バクテリアの防衛システム[*]の一つであるCBASS (cyclic oligonucleotide-based anti-phage signaling system)の分子機序を明らかにするとともに、CBASSのエフェクタの一つであるNucCのホモログがタイプIII-CRISPR/Casシステムの多くにも内在していることを同定した。
 [* 2019-11-13 展望: バクテリアは集団として、バクテリオファージに抗する多彩な防衛システムを共有している]

CBASSの機序
  • ファージ侵入を感知したHORMAドメイン・タンパク質がcGAS/DncV様ヌクレオチジルトランスフェラーゼ (CD-NTase)を活性化し、セカンドメッセンジャーの一種として環状のヌクレオチド(cAAA)が生成される。
  • 不活性状態のNucCはホモ三量体として存在しているが、アロステリック・ポケットにcAAAが結合することで、ホモ六量体へと複合し、DNAエンドヌクレアーゼとして非選択的な二本鎖DNA切断活性を発揮し、その結果、宿主のバクテリアはファージの複製が完了する前に細胞死に至る。
タイプIII-CRISPR/Casシステムに見られるNucC
  • タイプIII-CRISPR/Casシステムは、アクセサリータンパク質として、非選択的リボヌクレアーゼ (Csm6とCsx1)とDNAエンドヌクレアーゼ (Can1)を帯びているのが、特徴である。前者によって宿主とファージの転写物を分解し、後者によってウイルスDNAの複製を遅らせる、とされている。
  • UCSDの研究グループは、配列検索からE. coliP. aeruginosaのNucCのホモログ31種類がタイプIII-CRISPR/Casシステムに内在していることを同定した。
  • 500種類を超えるCBASS内在NucCsとの進化系統解析は、タイプIII-CRISPR/Casシステム内在NucCsは、CBASS内在NucCsとは独立に、進化の過程で少なくとも10回以上組み込まれてきたことを、示唆した。
  • タイプIII-CRISPR/Casシステム内在NucCsの中で、Vibrio metoecusのNucCsについて実験検証し、それがcAAAで活性化するDNAエンドヌクレアーゼであり、CBASS内在NucCsと同様な動態を示すことを同定したが、その機能については詳細な解析を待つとした。
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  1. CRISPRメモ_2018/06/24 [第4項] アーケアとバクテリアのタイプⅢ CRISPR-Cas遺伝子カセット隣接領域に保存されているタンパク質の網羅的探索から39種類の新たなcas遺伝子ファミリーを同定
  2. CRISPRメモ_2019/09/28 [第3項] Thermus thermophilusタイプIII-A CRISPRシステムは、cOA生合成を介して、DNAスーパーコイルも分解する