2020-06-13 [更新] PNAS誌採択・刊行につき、書誌情報を追加: Proc Natl Acad Sci U S A. 2020-06-09. Online 2020-05-20. (crisp_bio記事テキストはbioRxiv準拠のまま; アブストラクトのテキストに手が入っているが内容には変更が無く、本文をななめ読みした限りでは研究結果に大きな変更は無いように見える; 但し、PNASでは、Fig. 7 Validation of DCyFIR discoveries in mammalian cells.が追加され、Supplementary figuregにも追加あり)
2020-01-22 初稿

[出典] DCyFIR: a high-throughput CRISPR platform for multiplexed G protein-coupled receptor profiling and ligand discovery. Kapolka NJ, Taghon GJ,  Rowe JB [..]  Isom DG. bioRxiv. 2020-01-17.

 認可薬の30%以上が360種類を超えるGPCRsを標的としている。一方で、800種類を超えるGPCRsの存在が知られているが、その多くがリガンド不明なオーファンでありアンドラッガブルであり“pharmacologically dark”受容体と呼ばれている。

 University of Miamiの研究チームは今回、出芽酵母に内在するフェロモン受容体シグナル伝達経路をプラットフォームとするヒトGPCRリガンド同定法 [*]に、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術 [**]を組み合わせることで、DCyFIR (Dynamic Cyan induction by Functional Integrated Receptors)、を開発した。
  • [*] 出芽酵母に内在するフェロモン受容体シグナル伝達経路を借りて、ヒトGPCRとキメラGα (酵母Gα末端の5残基をヒトGαのそれに置換)の組み合わせが下流のMAPKカスケードを活性化する様子を、蛍光タンパク質 (本研究ではmTurquoise2)で標識したフェロモン応答遺伝子の発現レベルで判定する。
  • [**] CRISPR/Cas9は、酵母DNAを切断し酵母内在のHDR修復を誘導することでGPCRs、キメラGαおよびレポータ遺伝子のノックインに利用すると共に、酵母に内在するGPCR (Ste2)などからの干渉を回避するための酵母遺伝子欠失に利用する。なお、酵母ゲノムにノックインした単一のヒトGPCRとGαキメラの配列は、各酵母株を識別するバーコードを兼ねる。
  • このCRISPR/Cas9ゲノム編集パイプラインにより、30種類のヒトGPCRsを10種類のGαをそれぞれ帯びた酵母株に組み合わせることが可能になり、したがって、1回の実験で300組みのGPCRsとGαをアッセイすることが可能になった。
  • DCyFIRを並列に (DCyFIRscreen)また多重に(DCyFIRplex)利用し、既知のGPCRアゴニストを正確に同定すると共に、既知のアゴニストとGPCRsとの間の新たな相互作用も発見した。例えば、キヌレン酸 が、HCAR3にはオルソステリックなアゴニストとして機能し、ADRA2Bに対しては負のアロステリック調節因子として機能する、また、キヌレン酸に対してHCAR3が元々キヌレン酸をアゴニストとするGPR35のほぼ20倍の親和性を示す、ことを発見した。
  • さらに、DCyFIRによって、320種類のヒト代謝物 (アミノ酸、脂質、糖およびステロイドの代謝物)の中から、“pharmacologically dark”とされてきたGPR4, GPR65, GPR68, およびHCAR3を含むGPCRsに対する新たなアゴニストやアロステリック調節因子を発見した。